学問・資格

2017年2月 8日 (水)

関西学院大の入試、「地理」で出題ミス 全員を正解に

関西学院大学(兵庫県西宮市)は2月8日、1日に実施した一般入試の地理(150点満点)の1問(3点)で出題ミスがあったと発表した。受験した163人全員を正解とし、合格発表は9日に予定通り行う。
大学によると、ミスがあった地理は文学、法学、商学、人間福祉の各学部の一般入試の選択科目。問題はアフリカなど五大陸に関する説明として、誤りを含むものを四つの選択肢から選ぶ内容で、正答が二つあった。(朝日新聞:2月8日)


大学入試について考える。


出題ミスというのは昔からあるものではある。関西学院大学の当該入試を確認すると以下のようになっている。

■ 関西学院大学の全学日程試験科目
   ・ 3教科 (550点満点)
     【国語】    国語総合・現代文B・古典B(漢文を除く) (200)
     【外国語】   コミュ英I・コミュ英II・コミュ英III・英語表現I・英語表現II (200)
     【選択科目:地歴・数学から1】 (150)
             《地歴》   世B・日B・地理Bから選択
             《数学》   数I・数A・数II・数B(数列・ベクトル)


確認した理由は、163人と該当者が少ないと感じたからである。150点の中から3点が不具合によりすべて正解ということである。学力が近い受験者での競争であるから、合否ラインは550点に対して10点程度の差で大きく変わるだろうと想像される。そう考えると、3点というのは無視できない数字である。そこで、当該学科の受験者数と合格者数を前年度の実績で確認したのが下である。

■ 関西学院大学の全学日程試験受験者合格者数 (2016年)
   学部     募集人数  受験者数 合格者数
  文学部      171     1,542     504
  法学部      145     1,386     495
  商学部      125     1,407     496
  人間福祉学部  40      559      176
  -----------------------------------------
   合計       481     4,894    1,671


4,894人が受験して、1,671人が合格している。前年と同様とすれば、地理選択者は受験者の一割程度と見積もられる。地理より、日本史や世界史が人気なのか、数学を積極的に選ぶ理由があるのか、過去問を確認しようとしたが、レベルが分からないから判断のしようがないことに気付き止めにした。文学部で数学を選択するとは思えないが、私立大学の社会の選択科目は、世界史、日本史が選択科目になっていて地理は選べる大学が少ないという事情もあるようだ。大学合格を目指し入試対策の勉強をするのだから、効率を重視するのは当然である。ここら辺りが理由と想像する。
この大学は合格最低点も発表しているので、抜粋する。

■ 関西学院大学の全学日程試験受験者合格最低点と受験者数 (2016年)
   学部              学科                    最低点   受験者数 合格者数
  文学部      文化歴史学科〈哲学倫理学専修〉          329.0      76       32
  文学部      文化歴史学科〈美学芸術学専修〉          364.0      95       37
  文学部      文化歴史学科〈地理学地域文化学専修〉     370.4      45       14
  文学部      文化歴史学科〈日本史学専修〉           400.1      98       26
  文学部      文化歴史学科〈アジア史学専修〉          365.0      50       19
  文学部      文化歴史学科〈西洋史学専修〉           401.6      108       26
  文学部      総合心理科学科                    368.0      234       88
  文学部      文学言語学科〈日本文学日本語学専修〉     386.8      194       77
  文学部      文学言語学科〈英米文学英語学専修〉       387.0      381      112
  文学部      文学言語学科〈フランス文学フランス語学専修〉 357.0      175       68
  文学部      文学言語学科〈ドイツ文学ドイツ語学専修〉    366.4       68       24
  法学部      法律学科                         365.9     1113      389
  法学部      政治学科                         373.0      337     122
  商学部       (学科組織なし)                    373.5     1414      492
  人間福祉学部  社会福祉学科                      350.0      316      93
  人間福祉学部  社会起業学科                      353.7       87      25
  人間福祉学部  人間科学科                       350.0      156      58


人気のあるなしがあって、329点から401.6点と開きがある。競争倍率との関連についても疑ったが、100人未満と1000人超を比較するのは難しい。受験者数が100人に満たない専攻は、統計的な判断に馴染まないところがありそうだ。
全体として550点の七割である385点取れば合格ラインに近いと言える。八割は440点であるから、これなら問題なく合格するということになる。合格点の高い入試では、小さな失点が合否を決めることになるから、3点といっても小さな問題ではない。どちらかというと、3点を得るか失うかより、この問題に答が見出せないと悩んだ受験者が最も不幸なのかもしれない。


難しいかろうと思うが、適切な出題に努力願いたいものである。

2016年12月 8日 (木)

京都産業大で獣医学部構想 新薬の動物実験の専門家育成

京都産業大学で獣医学部を新設する構想が浮上している。動物病院ではなく、ヒト向けの新薬開発やiPS細胞研究で家畜を扱う先端分野の獣医師を育成する。現在、獣医学部の新設は文部科学省により抑制されているが、国家戦略特区の枠組みを使って規制緩和できるように、京都府は内閣府などに要望した。実現すれば、京産大は京都府綾部市に研究所を設立し、府の畜産センターとの連携を図る方針だ。
新薬開発のための実験はこれまでマウスが中心だった。これに対し、遺伝情報がマウスよりもヒトに近いブタを使った実験の実施を目指す。創薬のスピードアップが期待できるという。京産大は企業と連携しながら、先端分野で家畜を扱うことのできる人材の育成を目指す。府の畜産センターがある綾部市位田町近辺での施設建設を想定している。ブタなどの動物実験をする施設や専門の獣医師になるためのトレーニング施設のほか、薬の安全性、効果を調べてデータを取り出すといった教育ができるようにする。京産大は鳥インフルエンザの研究センターも持っており、感染症防疫を担う獣医師を育成し、アジア地域の交換留学などを通じ、共同研究も計画している。一方、京都府は北部地域の過疎化に対応するために、規制緩和をてこに綾部市を畜産や製薬、生命科学分野の振興につなげる考えだ。
獣医師はこれまで44%が小動物の診療で、製薬、大学、研究に従事するのは8%程度にとどまっていた。ただ、今では製薬会社の約8割が獣医師を採用するなど、業界内でもこうした人材のニーズが高まっている。関西では小野薬品工業が新規がん治療薬「オプジーボ」を開発するなど新薬の開発機運が高まっている。よりヒトに近い動物で実験を行うことで、製薬の安全性試験、臓器移植の拒絶反応の抑制といった分野の研究を加速させることに期待がかかっている。(日本経済新聞:12月8日)


獣医学部について考える。


獣医師になるには、大学の指定された獣医学のコースを卒業する必要がある。年数は6年で、国内の16大学に設置されている。下に大学名と定数、学部学科、国家試験の最近6年の新卒者合格率を示す。

■ 獣医学部大学の学生定数
       大学名        定数       学部学科名        国家試験合格率
国立 北海道大学        40名   獣医学部共同獣医学課程     93.1%
    帯広畜産大学       40名   畜産学部共同獣医学課程     88.9%
    岩手大学          30名   農学部共同獣医学科        90.3%
    東京農工大学       35名   農学部共同獣医学科        91.7%
    東京大学          30名   農学部獣医学課程          89.0%
    岐阜大学          30名   応用生物科学部共同獣医学科  90.1%
    鳥取大学          35名   農学部共同獣医学科        94.2%
    山口大学          30名   共同獣医学部獣医学科       90.7%
    宮崎大学          30名   農学部獣医学科           91.8%
    鹿児島大学        30名   共同獣医学部獣医学科       91.4%
公立 大阪府立大学       40名   生命環境科学域獣医学類     88.8%
私立 酪農学園大学      120名   獣医学群獣医学類         89.7%
    北里大学         120名   獣医学部獣医学科         87.5%
    日本獣医生命科学大学 80名   獣医学部獣医学科         92.1%
    日本大学         120名   生物資源科学部獣医学科     89.3%
    麻布大学         120名   獣医学部獣医学科          84.5%


定数は国公立大学で30名、私立で120名というのが代表的な数字である。医学部の定数が100人程度になっていることからすると、少ないような気がする。小型動物と経済獣とを一緒にあつかうとなると、多くの学生を抱えるのは大変だという事情だろうか。
獣医師国家試験の合格率は国公立大学で90%前後、私立大学でも80%後半が多いから、差は小さい。獣医師の国家試験の合格率は、新卒者で89.2%、既卒者で40.7%である。つまり、九割は新卒で合格するが、一割は再度受験しても半分落ちるということである。二回受けても合格できない学生を卒業させるなと言いたいところだが、大きなお世話ではある。
入学予備校の偏差値比較では、国立大学は東京大学 (理2になる) を除いては似たようなレベルである。私立大学は少し下がるがそれほど差がある訳でもない。受験で問題になるのは、センター試験でフルに受験する大学と、受験科目が英数理に限定される私立大学との違いとなる。国立大学と、公立、私立大学の学費を比較してみる。結果を下に示す。

■ 獣医学科学費比較
   大学名          初年度学費   2年次以学費    6年間学費
  ≪ 国立 ≫         817,800      535,800      3,496,800
  ≪ 公立 ≫        1,002,800      720,800      4,606,800
  日本大学          2,450,000     2,190,000     13,400,000
  麻布大学          2,477,740     2,167,000     13,312,740
  日本獣医生命科学大学 2,631,000     2,220,000     13,731,000
  北里大学          2,440,000     2,040,000     12,640,000
  酪農学園大学       1,444,000     2,289,000     12,889,000

国立大学は同じ学費であった。公立は大阪府立大学である。国立だと6年間で350万円、公立だと460万円であるのに対し、私立は1,300万円前後掛る。国立だとコースによる学費の違いが少ないから、学費の高い医療系ではこれだけで進む意味を見出せる。しかし、医学部で安い順天堂大学で2,100万円、高い川崎医科大学4,700万円となるのに比べれば獣医師になるのは安い。学費とその後の職業で得られる収入だけでコースを選ぶこともないだろうが、選択する際に判断の材料にはなるかもしれない。それでも、医学部と獣医学部を天秤に掛けることはないように思う。


本題に戻す。獣医学部の卒業生の進路について確認していく。大学受験パスナビのサイトから各大学の卒業者の進路をまとめた。 東京大学と山口大学では卒業者数を大学ホームページで確認したが、進路については公表された情報はなかった。公務員、教員の欄に数字のない大学は、進路の詳細情報がなかったまとめた。結果を下に示す。

■ 獣医学科卒業後の進路
   大学名          卒業者  進学者 就職者数 公務員  教員
  北海道大学          41     7      26
  帯広畜産大学         39     4      30     5     0
  岩手大学           29     3      25     7     0
  東京農工大学        36     3      33    10     0
  東京大学           31
  岐阜大学           33     0      32     9     0
  鳥取大学           30     1      29     7     0
  山口大学           30                
  宮崎大学           31     3      23     9     0
  鹿児島大学          30     1      28        
  大阪府立大学        39     4      32        
  酪農学園大学        148    7     107     26     2
  北里大学           135    6     103     0     0
  日本獣医生命科学大学  97    13      74     8     0
  日本大学          129     5     108    19     0
  麻布大学          142     8     109    16     0

国立大学においても進学者が8%と少ない。東京大学で進学者が多いことが予想されるが、それでも全体で一割程度である。私立大学の進学者が7%であるから、大きな差はないと言える。獣医学科出身者のブログによると、獣医学科の進路としては、小動物診療に就職するのが38%くらいとされる。これは街の動物病院でペットの診療をする仕事である。24%が公務員で家畜伝染病の防疫など、行政に携わる獣医師である。12%が産業動物診療を行う仕事で、畜産動物の診察を行う。残りの14%が大学教授や医薬品メーカでの仕事を行う。合計が100%にならないのは、獣医師国家試験に合格しない者があるからということだろう。記事では小動物の診療が44%と大きくなっている。動物病院で産業動物のみのところもあるが、犬や猫も扱うところもあるから、この境界は難しいところだろう。農業関係の機関への就職なら、産業動物であるのは間違いはない。こっちは、公的機関の場合もでるから、公務員である可能性もある。資格が一つで区別するのに無理がある。研究に従事するのは8%ということだが、研究者を目指すのなら、大学院への進学を考えるだろうからこちらは矛盾しない。

製薬会社は獣医師を必要とする事情は理解するが、現状の獣医学科の進路に製薬会社は例外的な存在に留まる。おそらく、大学進学時に獣医学科を選ぶ人は、ペットなどの小型動物の診療を希望しているからだろう。そうだとすれば、獣医学科を増やしても効果は限定的である。高い必要性があるのなら、国立大学の定数を30から50に引き上げればよいのだが、共同獣医学課程を設置している状況からすれば難しい問題になる。共同獣医学課程は、複数の大学がそれぞれの施設や教員といった教育資源を相互に提供し合い、より魅力的な教育環境の拡充や教育・研究レベルの向上を目指す取り組みである。つまり、単独の大学で教育・研究を維持するのが困難な事情があるということだ。教員も不足しているだろうし、設備も足らないということだ。製薬会社が獣医師を欲しいと思うのなら、それに見合う資金を大学に投ずれば良いということで多くは解決できる。獣医学科の状況の理解もしないで、ない物ねだりしているようにしか見えない。


大学のコース新設とは、気の長い話である。

2016年9月27日 (火)

法科大学院7校、17年度補助金基礎額ゼロ 文科省評価

文部科学省は9月26日、2017年度に法科大学院に交付する補助金の基準の一つとなる評価結果を公表した。司法試験の合格率などが指標で、補助対象の国立・私立大計41校のうち9校を最高評価とする一方、7校は補助金の「基礎額」がゼロになる最低ランクとした。前年の最高と最低はそれぞれ13校、4校だった。
同日開かれた中央教育審議会の法科大学院特別委員会に示した。最低評価は国立の金沢大と、私立の北海学園大、青山学院大、明治大、桐蔭横浜大、南山大、近畿大。文科省は法科大学院に教員の人件費を補助している。一部校で司法試験合格率が低迷したことなどから、15年度に補助金の傾斜配分を始めた。合格率や入学試験の競争倍率などを点数化し、5段階に分類。基礎額となる補助割合を上から90%、80%、70%、60%、0%とし、各校が提案する教育プログラムなどに応じて一定額を加算する。最終的な補助額は12月に決まる見通し。また、特別委員会は受験時の1次試験として志願者全員に課す「適性試験」について、18年度から各校が任意で利用する方法に変えるべきだとの提言をまとめた。法科大学院47校への調査(5~6月)で、43校が任意化に賛成。「志願者確保の妨げ」「個別入試で受験者の適性は判定可能」などの意見が寄せられた。(日本経済新聞:9月26日)


法科大学院について考える。


過去に何度か扱った通りで、法科大学院の制度に否定的な考えを持っている。大学はそもそも学問をする場所で、職業資格を得る為のものではないと考えているからである。もちろん、資格試験が単独で構成するのが難しいから、大学と連携する必要があるのは理解する。例えば医学部と医師国家試験の関係がこれに当たる。歯科医師でも看護師でも薬剤師でも獣医師でもこの形式に当てはまる。法律家を育成する為の職業訓練学校だとするなら、それを受け入れないではない。それならばと国家試験の合格率をまとめてみた。下に示す。

■ 国家試験の合格率
   医師     94.3% (91.5%)
   薬剤師    76.9% (86.2%)
   歯科医師  72.9% (63.6%)
   獣医師    78.8% (88.0%)
   看護師    89.4%
    司法試験  23.0% (61.5%)


括弧内に示したのが新卒者の合格率で、前が全体である。司法試験の括弧内のみ、司法試験予備試験での受験者の合格率である。予備試験は法科大学院を経由しない受験方法で、2011年から実施されている。予備試験の合格率開始から順に、1.79、3.05、3.80、3.44、3.81% となっている。旧司法試験のイメージである。この試験経由で司法試験に合格した者の職業を見ると、法科大学院生、大学生、無職、会社員、公務員となっている。経済的理由で法科大学院に進学できない人の救済というのは、既に価値を失っている。
話を戻す。合格率が八割を超え、再度試験を受けることで合格する者もあることからすれば、医療系の国家試験について、厚生労働省が学校教育を信じて、その上で能力を確認するという姿になっている。一方で、司法試験は大学教育を受けないルートで合格する者が多くいることからして、大学教育は受験予備校の位置付けになっている。つまり、文科省は受験予備校に補助金を出しているということである。この予備校の成績上位者は予備試験に合格し、これに合格すれば六割を超える。予備試験経由の合格者数が235人で、2015年の予備試験の合格者が394人である。予備試験は五年間有効であるから、直前の合格者のみとは限らないのだが、この状況で法科大学院に進学を進める理由をどこに求めれば良いのだろうか。司法試験に似た資格として、司法書士と行政書士、税理士、公認会計士いうのがある。これらの受験者数と合格数を下に示す。

■ 国家試験合格率
           受験者数  合格者数   合格率
  司法書士    17,920     707     3.9%
  行政書士    44,366    5,814     13.1%
  税理士      41,031    6,909     16.8%
  公認会計士   10,180    1,051     10.3%


こちらの試験も医療系の合格率とは大きな差がある。しかし、こちらは受験資格がないか、比較的緩い。受験資格が緩くて、合格すれば相応の待遇が期待できる公認会計士の方が良いと判断する者もあるだろうが、これも合格は難しい。制度改正前の司法試験と似たような状況だが、所管する金融庁は合格に何年掛っても気にしていないということだろう。その意味では法務省の方が情があるということか。

大学は卒業が可能だと思われる人を入学させれば良いと考えている。そして、卒業要件を満たさないと考える者を卒業させてはならない。これが大学という学歴の価値を維持する最低限の役目である。日本の大学は、入学するのは大変だが、卒業するのは易しいと言われる。この状況で卒業した大学や学部で学力を判断するのは、即ち高校卒業時の学力を持って判断することに等しい。学問をすることは正しい。現在のこの国の考え方に立てば、学問することは自由を得ることである。経済的な成功と結び付けるのが世の中では好まれるようだが、それなら必要な学部はごく少数で、他は教養学部という名称で良い。それで教養学部ですべてに価値のある研究が可能かと言えばそうもいくまい。
法科大学院は愚かな試みであった。これで幸せになる者が生まれなかった。大学で教鞭を取る人の椅子が増えたと考えるのなら、受験予備校の有能な講師の席と等しいのだから、少しの競争原理の差異に留まる。せいぜい文科省の監督する部署が増えたということだけだ。法科大学院を出たら、他の試験の受験に有利に働くというのが好ましい話で、制度を活かすには良いのだろう。しかし、司法試験の不合格者の落穂拾い扱いになる資格は、二軍扱いのようになり酷い話である。補助金を切るなら、募集を停止すれば良い。それだけの話である。その先にあるのは、予備試験ルートの合格者の増加だけだろう。制度自身が自己否定するという。凄い思想で作ったものである。


ありもしない夢を語るのは、詐欺師の手口である。

2016年7月 7日 (木)

無認可校から違法編入学 5年間で63人 北海道の通信制高

通信制のクラーク記念国際高校(本校・北海道深川市)が2011~15年度、学校としての認可を受けていない東京都の民間教育施設から、生徒63人を違法に編入学させていたことがわかった。同校はこの施設での学習履歴を単位として認定していた。北海道は7月7日にも、不足単位の取得などの措置を同校に指導する。
文部科学省によると、高校に編入学できるのは学校教育法で認可された学校で学んだ生徒が対象。海外の高校からも日本の高校に編入学できる例がある。クラーク記念国際高校によると、編入学した63人は有限会社が運営する教育施設の四谷インターナショナルスクール(東京都新宿区)で学んだ生徒。同スクールは法的には学校ではないが、クラークの生徒向けの学習支援施設(サポート校)になっていた。クラークは編入学を希望した63人について、同スクールでの学習履歴を単位として認定し、編入学を認めていた。このうち、5月時点の在校生は5人という。北海道学事課は情報提供を受け、4月から調査。同スクールは編入学の事実関係を認め、「クラークの生徒と同等の能力があると判断した」と説明したという。同課は在校生の不足単位を取得させる措置をクラークに求める予定で、7日にも改善と再発防止を文書で指導する。卒業生について、卒業資格を取り消すなどの措置は求めない方針。クラークの河野英俊・学籍管理課長は「編入学が認められるインターナショナルスクールと誤認していた」と話す。すでに、編入学した3年生に2年生の内容を学ばせるなどの対応を取っているという。クラークは1992年に開設され、全国に約1万1千人の生徒がいる。(朝日新聞:7月7日)


高校教育について考える。


通信制の高等学校で不正が多く報告される。高校卒業資格を持たない人が抱く学歴に対する憧れを商売に利用しているのだろう。クラーク記念国際高校は、高校野球でも注目される有力校である。通信制全日型教育というのは、プロ野球予備校に最適な形態である。食物栄養コース、保育・福祉コース、ペット生命科学コースなどというコースがある。社会に出て役に立つ教育という意味不明の主張に合致するコースが存在する。オンリーワンコースと名前からして難関なコースもある。ここは、毎日の登校に不安を抱える生徒に対応し、ゆっくりマイペースで学習を進められるコースだそうだ。いろいろな工夫がある。総合進学コースへとステップアップが可能とあるから、オンリーワンコースは社会からはみ出していると学校側は認識しているようだ。この手のデリケートな問題を扱っている学校にしては、随分とざっくりした対応をしているものである。スポーツコースというのがある。これが例の予備校 (別に誰も例のなどとは言っていない) ということのようだ。
サポート校からの編入を認めるのは良しとしても、クラークの生徒と同等の能力があると判断したというのは、随分というか、あんまりな話だろう。近年は有名校への進学を目指す生徒を受け入れているが、学校が対象として考えているのは、不登校などの問題を抱える生徒だろう。同等の能力ということは、即ち、社会の認識としては高校として認められないレベルと同等であるということに読める。同等の能力が合理的理由になる学校は、歴史と伝統に裏打ちされた学校に限られる。
北海道学事課の対応は、在校生については不足単位の取得を求めるとしている一方で、既卒性については訂正を求めないということだ。上級学校に進学している例もあるだろうから、社会的な混乱を避けるという立場にたっての判断だろう。一見もっともらしい対応に見えるが、高校卒業のルールを破壊する、つまり、学歴制度を崩壊させる仕事になると認識しなければならない。既卒者の卒業取り消しは求めないにしても、問題のあった卒業生に対して、単位不足の通知をするくらいの仕事はしても良い。

高校でも大学でも、学歴において学校名を用いた差別をしてはならないというのがご時勢というものである。学校名による区別を付けたくても、卒業から十年以上経過すると学校の状況が変化することもある。この手の環境変化でもっとも困るは、クラーク記念国際高校のような学校である。自らに厳しく当たることと、自身に設定したコースを社会の落ちこぼれ扱いの認識は、直ちに改めねばならない。個性を認めて、社会秩序が求める程度には当然のことと厳しく当たる。それで価値が生まれるものだろう。


高校卒業者を名乗るのに、高等学校卒業程度認定試験の合格が必要になる。

2016年5月30日 (月)

専門職業大学創設を答申 文科省、3年後の開学目指す

調理師やプログラマーなどの専門技術を持つ人材の育成を強化しようと、中央教育審議会は5月30日、職業教育に特化した新しい種類の大学をつくるよう馳浩文部科学相に答申した。専門技能と教養の両方を育み、現場で中核を担う人材を養成する。文科省は2019年度の開学を目指す。大学の種類が増えるのは1964年の短期大学の制度化以来、55年ぶりになる。
答申は、変化に対応して現場レベルの革新を引っ張る人材の育成が課題となると指摘。幅広い教養を学ぶ大学や、技能に特化している専門学校とは別の高等教育機関が必要とした。新大学の名称は「専門職業大学」などと例示。教員のうち4割以上を、当該分野の実務経験が5年以上ある「実務家教員」にする。卒業単位の3~4割以上を実習科目にし、企業での実習(4年制なら600時間以上)も義務づける。教養科目については、例えば古典よりも語学を重視するなど、職業につながりやすい内容を想定。2~3年制なら「短期大学士」、4年制なら「学士」の学位を卒業時に与える。社会人が学びやすいよう、短時間の授業を積み重ねて卒業できるような工夫も求めた。
鉄道沿線など、通いやすいところに開学してもらおうと、面積や運動場などの条件は大学より緩めることを検討するよう提案。大学の学部を新大学に転換することもできるようにする。文科省は、専門学校や大学や短大の一部が新大学を開設すると想定。来年の通常国会で学校教育法の改正案を提出し、成立後に設置基準を改定したい考えだ。(朝日新聞:5月30日)


教育について考える。


愚かな教育改革であることは先に書いた通りである。天下り先の確保か、影響力を強めるささやかな努力ということか、いずれも伝統的な役人の典型的な仕事である。役人に染みついた、このしみったれた根性を変えることこそが教育制度改革であると感じる。そんなことを考える者は、決して役人になどならないし、なれないと決まっているから、これから先も同じ様な状況が続くことだろう。

人材育成は結構なことだし、内容は正しいと感じるものである。根本的な問題はそこではない。ここで掲げるテーマは、大学改革でも類似した表現で書かれているだろう。それなら新たな教育制度を加えるより、既存の制度を正すことの方が良いと考える。中央教育審議会という全体に影響する会議での結論である。18歳の人口が減り、大学の定員が増え続けていて、既に私立大学の半数が定員割れしているという状況で、大学に類似した教育機関を設けることの危険性をどう考えるのだろうか。
鉄道沿線など、通いやすいところというのは、首都圏に暮らす者の論理である。定員割れして潰れそうな大学は地方に多い。2014年の記事であるが、私立大学の定員割れは、宮城県を除く東北地方で充足率が82%と低く、四国も90%である。入学定員で分けると、入学定員800人未満で100%を下回り、以上で上回るという結果になっている。この先にあるのは、地方の小規模私立大学は閉鎖される。閉鎖されるというより、学校法人が倒産することになる。それなら、大都市部にある大規模大学は大丈夫かというと、そうもいかないだろう。
子どもが減るのは決まったことだから、海外からの学生を受け入れるとか、社会人を受け入れるとかを掲げるのが決まり事である。海外からの留学生は、途上国からとなると学費や生活費の高さが重大な問題になる。学費が日本に暮らす者でも高いと感じるのだから、それ以上の効果が期待出来なければ選ばないだろう。社会人の受け入れについては、より厳しい選択基準になるだろう。少数の向学心のある社会人を受け入れるのなら、それほど多くの大学は入らない。大学の数は多い方が通学の利便性に適うとしても、定数はそれほど必要とはならない。しかし、あまりに少人数が妥当かという議論はあってよいだろう。

もう四半世紀前のはなしだろうか。国立大学の授業料の改定において、過去に良く用いられた言葉に受益者負担というものがある。国立大学と私立大学で同じ様な利益を学生が受けるのなら、同じくらいの負担を求めて良いという考え方である。この論理を出せばいずれもっと恐ろしいことが生じるという想像力はなかったようだ。負担とリターンがバランスしないのなら、採用しないという経済原理が生じる。この国の大学に進学するのが当然だという状況は既に無くなっていて、本当の優秀な学生は海外の大学を目指す図式が表れている。米国に代表される海外の有名大学は授業料が高いのだが、国内の大学もそこそこ高いし、リターンに乏しいとなれば選択しない。優秀な学生と、地方のほどほど以下の学生は対象から外れたことを意味する。しかし、専門職業大学のターゲットはほどほど以下の学生である。

失敗が約束された専門職業大学であるが、成功する可能性がなくはない。確実な方法は、授業料を国立大学の半分以下にすることである。30万円としよう。これなら経済的な理由で進学をあきらめるという層が支持するだろう。本来100万円払うべきものが30万円になれば、この差額をどう埋めるという話になる。それは企業から支援を受ければ良い。2014年の自民党への企業団体献金の総額は、35.9億円であったという。70万円をこれで充てれば5,000人の学生が救われる。この人数は国立大学医学部の定員くらいと思えば良い。

給付型の奨学金の充実を叫ぶ者がある。愚かである。制度はシンプルでないと破綻すると決まっている。経済的に恵まれない家庭に育って、優秀な学生というので複雑すぎる。前者を救済する制度と、後者を救済する制度とは別建てにしなければならない。塾や予備校で学習しなければ試験で優秀な成績を取るのが難しい環境である。経済的に恵まれなければ、学習する環境にも恵まれず、それを考慮するという話になると複雑怪奇になる。そもそも差別的な臭いを感じないでもない。
優秀な人材は授業料の安い大学に通えば良い。競争が厳しくても、それは当然である。経済的な事情のあるものはそれを目的に救えば良い。一定水準を超えれば、抽選であっても良いだろう。皆に等しくの実現の難しさは様々な分野で経験済みである。その一方で、優秀な者を育成しようとしているのだから、機会の平等さえも放棄する覚悟さえあれば、何でもできる。捨て去られるレベルの話ではない。トーナメントを勝ち進む話である。競争は当然だし、その結果を受け入れることの重要性を若い時に経験するのは悪くない。


学問することは正しい。しかし、筋の悪い制度に乗っかろうとするとロクなことが無い。

2016年4月26日 (火)

教員、実務家4割以上に 「専門職業大学」で文科省案

文部科学省は4月26日、2019年度の導入を目指す、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関について、専任教員のおおむね4割以上を実務家教員とする案を示した。卒業に必要な単位の3~4割を実習や演習とすることや、年間150時間以上の企業内実習も義務付けるとした。
制度設計を議論する中央教育審議会の特別部会で示した。案は、新たな高等教育機関の名称を「専門職業大学」などとし、「理論に裏付けられた技術を強みに、現場の改善や革新をけん引できる人材」を養成すると位置づけた。IT分野で新たなアイデアを構想するプログラマーや、農産物を生産しつつ付加価値を高める取り組みも手掛ける人材などを例示した。社会人ら多様な入学者を想定し、大学相当の4年制と短大相当の2.3年制を制度化。専任教員は、企業などで5年以上の実務経験を持つ教員をおおむね4割以上とするよう求める。特別部会は今夏にもより詳細な制度設計をまとめる方針。(日本経済新聞:4月26日)


専門職業大学について考える。


専門職業大学というのを初めて聞いたが、要するに専門学校に教育のばらつきが大きく学位を与えられないから、教育助成金を出すと同時にいろいろと利権を役所が得ようという構想のようだ。と、言ったら過ぎるという批判を受けるのだろうか。
実践的な職業教育というのが泣かせる。道理として、すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなるものである。一方、一生役に立つものは、一生役に立たないと感じるものでもある。役所は後者を重く見て、職業教育と称しているらしい。企業の側は、専門学校の教育の充実は希望しても、学位を与える必要などひとかけらも感じていないことだろう。日本の企業での学歴の扱いなど、それ程几帳面にしていないのではないか。

過去にも書いたが、二十歳くらいの子供に必要なことは、自分自身がものを知らないこと、価値が無いのではないのかと強く感じることと、そんな自分でも価値のある小さな仕事が出来ると信じることの二つである。実務的とか、実践的とかとは無関係に学問に接する経験を持つことが大切である。学問をするというのは、自由になるということである。世の中の役に立つというのは、手っ取り早く収入を増やすことを実現するかもしれない。しかし、豊かな奴隷を作ることに国が力を入れて何とするのか。豊かな自由人をつくれとは言えないが、せめて志は持っていて貰いたいものだし、ほどほどの豊かさの自由人を作るのがこの国の将来を見据えた結論であろう。


安直な結論が豊かな可能性を持つ筈もない。

2016年3月11日 (金)

ウィッツ青山高、生徒102人除籍処分へ 就学実態なし

就学支援金を不正受給した疑いが持たれている三重県伊賀市のウィッツ青山学園高校が通信制生徒102人を除籍処分とすることが3月11日までに同市への取材で分かった。就学実態がなかったことが理由。新年度の生徒募集を停止することと併せて市に報告があった。
伊賀市によると、除籍処分となるのは同校の学習支援施設「四谷LETSキャンパス」(東京)に所属する102人。課題の提出やテストの受験を怠り留年状態になっていたり、既に連絡が取れなくなったりしている生徒が多いとしている。学校を運営する株式会社「ウィッツ」の親会社は四谷キャンパスに所属する男女5人が不正受給に関与したと発表している。同キャンパスは昨年末に廃止された。新年度の生徒募集は実施しないため、今春から通信制課程への入学が決まっていた35人には学校が入学金を返還し、他校への入学を勧める。(共同通信:3月11日)


通信制高校について考える。


該当の学園は、学校法人ではなく株式会社である。学校の設置者については、教育基本法及び学校教育法の規定により原則として、国、地方公共団体、学校法人に限られている。当該条項を下に示す。

教育基本法(昭和22年法律第25号) 第六条 (学校教育)
法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

学校教育法(昭和22年法律第26号) 第二条
学校は、国、地方公共団体及び私立学校法第三条に規定する学校法人(以下学校法人と称する。)のみが、これを設置することができる。


教育基本法の文面を読むとなかなかアンティークな調べが香しい。第六条の二項にはこうある。

法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

なかなかの志の高さである。全体の奉仕者であるのだから、政治家ごときの謂れ無き命令に従わないというのも出てきそうだが、国会議員なんぞというのは、全国民を代表しているのだから謂れ無き命令など存在しないと反論するかもしれない。志の高さを総論で謳えば美しいが、各論で実施するとなると困難が生じるのはテーマを選ばない。
話を戻す。学校教育に一定の水準を求めるとなると、国の機関が様々な取り決めをしなければならないし、それが適正に実施されるかを確認する必要も生じる。また、一定の継続性も当然求められる。法律にある学校が公の性質というのは、営利事業として馴染まない事柄であることを示しているから、営利集団である株式会社とは相いれないと考えるのには合理性がある。それでも世の中の考え方の幅が広がってくると、枠に納まりきらないものも出てくる。枠外というのは、学校教育法の一条校以外の学校を意識するものとなる。株式会社立学校は、カリキュラムを自由に組めたり、校舎や運動場等の施設についての条件が緩いという利点である。その一方で、私学助成金が受けられず、学校法人で認められている寄付の税制上の優遇措置がないという財政上の不利な点がある。結果として、そのほとんどが通信制の高等学校になっている。
高校の進学率が高くなり、90%を超えたのは1974年になる。当時中学を卒業していたのは1960年頃の生まれであるから50歳以下では90%以上の対象者になる。中退者がどのくらいいたかも確認する必要があろうと、文部科学省の資料から抜粋したのが下である。

■ 高等学校中途退学者数及び中途退学率の推移 (文部科学省)
    年         1985   1990    1995   2000   2005   2010   2012
中途退学者数 (人)  114,834  123,529  98,179 109,146  76,693  55,415  51,781
中途退学率 (%)     2.2      2.2     2.1     2.6     2.1     1.6     1.5


近年減少しているが、割合は2%水準というところである。中退者数が減っているのは、少子化の影響である。上の表で逆算すると、1985年の学生数は521万人、2010年は336万人となる。高校の数もクラス数も減らす訳である。各年齢に10%強の高校卒業資格を有しない人がいるということからすれば、一定の市場はあると考えるのが株式会社の経営者の立場であろう。
高校を卒業する最も簡単な方法は、中学卒業時に高校に入学して、休まず通学することである。高校を選ばなければ、学力のレベルに少々難があったとしても卒業まではなんとかなるということである。そこそこの学力が中学時代にあれば、高等学校卒業程度認定試験で合格することは可能だろうが、この試験に合格しても学歴には書き加えられない。その次の行に大学なりを書き加える為の試験でしかない。中学卒業で、認定試験に合格して短大に進めば2年で済むとか、中卒だが企業の経営者になっていることで、実務経験を評価してもらって大学院に進むとか、短期間に済ます方法もあるのだろう。しかし、あからさまな学歴ロンダリングでは、そういうやつだと思われてしまって費用対効果に劣ることになると考えるのかもしれない。勉強しないで楽して卒業資格を得ようとする行為が、世間から尊敬されるものでないのは明らかだから、それを考えた時点で結果は決まっているとも思える。

入学手続きさえすれば、時間の経過で卒業可能であり、他には数回学校に来て貰うだけで済むというのが、裏で行われていた話であるという。これなら、高卒資格を得たい人に負担は小さいし、学校側も手が掛らない。しかし、あからさまにそうした行動を取るのを認めると、高校卒業という表記では評価不能で、高校名を確認する必要が生じてしまう。学歴という制度に対する挑戦である。挑戦するのは結構だが、通信制で普通に勉強しようとする学生の利益を奪うことになるとすれば、賠償請求されても仕方ないような話になる。
学校教育は、国などが行うのが本筋だとは思うが、過去に特に地方においては篤志家によって補われてきたという歴史がある。篤志家に期待したままというのは怠慢であるが、篤志家を株式会社に置き換えるのはこの上なく乱暴である。株式会社の参入が予定される前に、通信制の学校のあり方を検討する必要があったということだろう。参考の為に記すと、通信制高等学校の在籍者数は平成22年で189,418人(文部科学省 学校基本調査) である。怪しい株式会社立通信制高校が全体を代表しているというのは、乱暴な論理であるということは認識しておかねばならないだろう。


詐欺事件として扱われる事案のようだ。

2015年12月21日 (月)

薬学部について

薬学部について考える。


先日、皇族絡みで城西国際大学を確認して、薬学部が気になったので、薬学部について確認することにする。薬剤師になるには、薬学部を卒業するよりない。2006年に入学した者からは6年生に変更されている。今年実施された国家試験の国公私大学別の受験者数と合格者数、合格率を下に示す。

■ 第100回(2015年) 薬剤師国家試験受験者数合格者数
    大学    受験者数  合格者数  合格率
   国立 計      694     521    75.07%
   公立 計      309     233    75.40%
   私立 計    13,312    8,290     62.27%
   --------------------------------------
   総計      14,316    9,044     63.17%

医学部は国公立大学と私立大学が同じくらいの人数であるが、薬学部は圧倒的に私立大学が多い。他の医療系国家試験の結果は、最新のもので、医師国家試験の91.2% (8,258/9,057) 、歯科医師国家試験の63.8% (2,003/3,138) 、 看護師国家試験89.8% (52,900/58,891) となっている。医療系の大学は、職業訓練学校の要素が強くあるから、試験に合格しないと困るという事情はある。
そこで、関東の私立大学の合格率と、当該学部の収容定員と在籍数の比較を行った。なお、東京理科大薬学部在籍学生数は、薬剤師試験の受験資格にならない生命創薬科学科 (4年制) を含めた数字になっていたので不明である。卒業生数と入学者数などから推定すると収容定数に近い人数であると考えて良さそうだ。結果を下に示す。

■ 関東の私立大学薬学部の薬剤師国家試験合格者数の収容定員・在籍学生数
    大学名      受験  合格  合格率   収容定員 在籍学生数
  明治薬科大学    363   311  85.67%     1,800   1,952
  慶應義塾大学    182   142  78.02%      930    941
  星薬科大学      323   230  71.21%     1,560   1,686
  昭和大学       283   193  68.20%     1,200   1,196
  北里大学       327   252  77.06%     1,500   1,536
  東京薬科大学    531   396  74.58%     2,520   2,685
  昭和薬科大学    259   194  74.90%     1,440   1,498
  武蔵野大学      154   113  73.38%      870    901
  国際医療福祉大学 169    92  54.44%     1,080   1,069
  高崎健康福祉大学 129    80  62.02%      540    569
  城西大学       426   225  52.82%     1,500   1,733
  日本薬科大学    312   118  37.82%     1,560   1,134
  日本大学       279   179  64.16%     1,440   1,569
  東京理科大学    127    95  74.80%      540    ―
  東邦大学       299   249  83.28%     1,320   1,448
  城西国際大学    148    68  45.95%      850    593
  千葉科学大学    150    60  40.00%      730    660
  帝京平成大学    351   116  33.05%     1,450   1,436
  帝京大学       440   270  61.36%     1,920   1,934
  横浜薬科大学    303   136  44.88%     2,040   2,230

薬学部の入学定員は、90~400人であるが、代表的には240人と考えて良い。実験関係の設備等を考慮すればこれくらいが限度ということだろう。医学部では100人になっていて、こちらはどこも同じ水準である。
薬学部の推定される卒業生数より、受験者数が25%多いのは、合格率が63%と低いので再度受験する者が多いという理解で良いだろう。1/3が不合格になれば、再受験者を含めればこの程度では済まないが、受験しない人もいるだろうし、諦める人もあるだろう。国公立大学で75%レベルであるのだから、50%以下というのは問題があるように感じる。収容定員と在籍学生数との差は、城西国際大学と日本薬科大学が低いが他は同じ水準にあると考えれば、留年はあっても大量の退学者がある訳ではないと想像される。留年は置くとしても、薬学部を卒業しても薬剤師になれないのが過半数いる大学は、薬学部として適正なのかという話にはならないのだろうか。

薬学部が薬剤師の養成大学ではなく、創薬などの医療関係に関わる学術に関係するとすれば国家試験の合格率に一喜一憂する必要もない。しかし、薬剤師受験資格が六年制に変更されたことと合致しない。薬学部を四年制から六年制にした結果、人気が下がったことがある。六年である理由が分からないのだが、四年で済むのが六年になれば人気は下がるだろう。その昔、薬剤師は女性のコースのイメージがあったようだ。看護師が看護婦と呼ばれた時代である。六年になったのと前後して薬学部が増えた。また、この新設大学の合格率が低い傾向にある。薬剤師を増やすという政策が決定されて、その流れに従って法律を見直したようだが、薬屋での実務に綻びが生じて登録販売者なる仕事を増やした。既得権を守りつつ、改革をしようとすれば破綻するのは必定である。こんなに混乱すると、薬剤師は薬学部で勉強している必要があるかという疑問も出てくる。法律家を要請する目的で出来た専門職大学院もそうだが、職業養成コースを設定して失敗した場合の救済策がないといろいろと厳しい。再挑戦をするには六年は長いだろう。社会にチャレンジを貴ぶ雰囲気が形成されていない中で、決してチャレンジしない輩が制度をつくるからこんなことになるとくさしたくなる。せめて、可能性の乏しい大学に、可能性があるように錯覚して入学するのは、正しい情報開示の名の元に、正していかなければならないだろう。


何かが間違っていると分かっても、何が正解かは分からない。まあ、筋が悪いことくらい容易に理解するのだが。

2015年10月15日 (木)

「大学のあり方議論する場を」 日本学術会議が声明

文部科学省が国立大に対し教員養成系学部や人文社会科学系学部の廃止や組織改編を求めた通知に関連し、日本学術会議は10月15日、「大学改革には幅広い議論による合意形成が必要だ」として、大学・学術界、産業界、一般の人が自由に意見交換できるフォーラムの設置を求める声明を発表した。
記者会見で会長の大西隆・豊橋技術科学大学長は「通知を巡る議論で浮かび上がった大学の課題について、国民的な議論を起こして方向性を探る必要がある」と話した。文科省は通知について「『文系廃止』との受け止めは誤解」と釈明しているが、大西氏は「考えは理解したが、通知から趣旨を読み取ることは困難」と指摘した。(日本経済新聞:10月15日)


大学教育について考える。


大学の学部別の進学者数を確認することから始める。文部科学省の学校基本調査のデータから、大学の学部別の入学者数をまとめた結果を下に示す。

■ 大学の関係学科別入学者数 (文部科学省 学校基本調査 2015年度速報値)
    学部         人数    割合      国立       公立        私立
  人文科学       87,005   14%     6,540   6%    4,808  16%    75,657  16%
  社会科学       201,185   33%    14,755  15%    8,264  27%   178,166  37%
  理学          18,397    3%     6,888   7%      598   2%    10,911  2%
  工学          91,367   15%    29,103  29%    3,914  13%     58,350  12%
  農学          17,696    3%     6,495   6%    1,039   3%     10,162  2%
  保健    計     68,604   11%    10,630  11%    6,295  20%     51,679  11%
       医学      8,726    1%     4,520   4%      842   3%      3,364  1%
       歯学      2,429    0%      495   0%      94   0%     1,840   0%
       薬学     13,085    2%     1,017   1%      358   1%    11,710  2%
       その他    44,364    7%     4,598   5%     5,001  16%    34,765  7%
  家政          18,226    3%      320   0%      741  2%     17,165  4%
  教育          47,604    8%    15,694  16%     646   2%     31,264  6%
  芸術          17,659    3%      721   1%    1,470   5%     15,468  3%
  その他         49,766    8%     9,485   9%    3,165  10%    37,116  8%
  -----------------------------------------------------------------------------
   計          617,509   ―    100,631  ―    30,940  ―   485,938  ―

国立大学は、理科系学部の定員が多いのが私立と異なる傾向である。それでも、記事にある教育学部は、私立の6%に対し18%と大きくなっている。国立大学の多くが、師範学校の流れを汲む、つまり教員養成学校だったのだから当然とも言える。人文社会科学系学部の定員が多いのは、設備が相対的に小さいことが理由だろう。
さて、教育学部の話である。現在では卒業に教員免許の所得を求めない教育学部が存在する。いわゆるゼロ免課程である。ゼロ免課程が1987年に始まったという。ゼロ免課程というのは、大学の教育学部において、教育職員免許状の取得を卒業要件とせず、任意としている課程の通称である。教育学部では教員養成を目的にしているので、免許を取る必然性があった。しかし、教員採用数の減少により、教職に就くことが難しい状況が発生している中で、従来からの運営を継続する意義が乏しくなった。学校以外の職に就く学生が多いなら、教員免許の必要性も無いと言う判断である。看板は教育学部のままであるが、内容としては教養学部のようなものになっているということである。看板を書き換えれば済むと言う話ではあるが、馴染みのない学部名を使われるのも困るので、それならそれで、教育学部であっても良いと思う。
最近の大学への期待というか、大学の価値を判断する基準は、産業に貢献するか否かであり、それも時間軸として短い期間で、と付いてくる。大学を卒業して民間企業に就職する学生が多いから、これを標準としてみる。大学で哲学の勉強をしていても、マルクス経済学を勉強しても、エクセルやパワーポイントの使い方に長けている方が役に立つと言わるだろう。ただ一つ確かなことは、早く役に立つことは、使えなくなるのも早いということである。役に立つ学生を教育する名目で、実践的な教育を施すというのは、実は近い将来役に立たなくなる気位が高い人を世に輩出することではない。最も駄目な大学は、気位だけが高い学生を放置して卒業させる大学である。大学のレベルの問題ではない。レベルの違いは採用する際に企業が容易に判断できる。気位の高さは採用に当たっては隠すこともあるだろう。
理学部も役に立たない学部だろうが、スーパーカミオカンデでノーベル賞を喜ぶのと矛盾するだろう。そういうのは旧帝大で良いというのも、梶田隆章が埼玉大学だと言えば、問題は複雑になる。世の中の役に立つという基準でみれば、スーパーカミオカンデで得られる結果が日常生活に影響することはないと言ってよいから、役に立たない金の掛る研究と断定して良い。

職業教育を行うのがお好みのようだ。学部選択が進路に直結する代表に医学部がある。ほとんどは臨床医に関係するのだが、基礎医療研究に進む者もいる。少数の例外と見る考えもあるが、何せここに進むのはたかだか4,520人である。医師不足というのなら、基礎医療に進むのは理学部生物 (農学部でも良い) に回せということになる。そうもいくまい。歯学部でも、薬学部でも同じようなものだし、看護系の学部 (上では保健その他) でもそうだろう。専門家になる為に進学するコースがあることを否定しない。しかし、それを拡大したいのなら、法学部会計士科や法学部弁護士科を創設するのだろうか。試験制度との整合性が取れずに、どちらの大学院も上手くいっていない。いっそのこと、公務員学部警察科でもつくるのか。ノンキャリア教育だから、警察大学の予備校の役割を果たせるだろう。

教員の採用人員が減ったから、ゼロ免課程を設けたりしたりと努力はしている。内部からすれば最適な提案をした気になっていなくても、外部からは改善の余地があると、表札変え、次いで、人員削減と責められることになる。教育のあり方について、世の中の役に直ぐに立つという超短期の現世利益を期待している者には何を言っても無駄な気がする。そこまで学問を否定するなら、大学は旧帝大と官立大学の歴史を負うものに限定し、他は職業訓練校にしたら良かろうと思う。


大学より、ECCや大原学園の方が上等という思想である。

2015年6月12日 (金)

会計大学院、定員割れ続々 「就職難」の印象なお

公認会計士など会計の専門家育成を目的に2005年から始まった「会計専門職大学院」の苦戦が鮮明だ。入学希望者が減っており、15年度は生徒を募る13校中9校が定員割れとなる見通し。早稲田も開設以来初めて定員を割り込む。金融危機後の監査法人の採用縮小で、会計士に就職難のイメージが強く、会計士自体への人気が落ちている。ただ足元では国際会計基準(IFRS)の導入や、M&A(合併・買収)の増加などで会計士の需要は増えており、人気低迷が続けば企業活動にも支障が出かねない。
会計大学院は05年に制度が始まった。修了すると会計士試験の一部科目が免除になる特典がある。現在、全国に16校あり、そのうち今春から立命館など3校が募集を停止した。学校側によると募集する13校でも、秋入学枠も勘案した上で募集人員を確保できる可能性があるのは4校にとどまる。残り9校は定員割れとなる見通しだ。05年の開設以来、募集人員を確保してきた早稲田も今年度は初めて定員割れとなるのが避けられない。07年度には100人超の入学者がいた関西学院も苦戦が続く。今年度から定員数を100人から70人に減らしたうえで、説明会などで学生の呼び込みを進めたが入学者は40人程度にとどまる見込みだ。(日本経済新聞:6月12日)


会計専門職大学院について考える。


専門職大学院はいろいろ種類がある。あまり興味もないので詳しく調べことはないが、ニュースになることもあるから、いろいろある程度の知識は持っている。会計専門職大学院というのは、公認会計士の養成という目的と、リカレント教育を提供する為という目的もあるようだ。この大学院を修了すると公認会計士になれる訳でもなく、法科大学院のように司法試験の受験資格が与えられるというものでもない。進学者の多くは、公認会計士を目指すという図式である。
司法試験受験には、法科大学院を経由する方法の他に、予備試験に合格して受験資格を充足する方法がある。大学院に進んだことでの試験の有利不利を考えると、うま味が少ないと判断する人が多そうな制度になっている。また、大学院を修了しても、司法試験に合格しなかった場合には、価値を見出せないというのでは、費用と人生設計のリスクばかり抱え込む方法と考えられても仕方ない。おまけに、法曹界でも法科大学院での教育が足りないという意見まで出てしまえば、誰が制度設計をしたのかと不満も出てこよう。
会計大学院を修了すると、公認会計士試験で短答式試験の一部が免除となる。公認会計士は受験資格が求められない資格である。つまり、資格取得を目的にするなら、これだけがメリットということになる。更に、実際に資格を得るには、公認会計士試験に合格した者が業務補助等の期間を2年以上行い、かつ実務補習の修了が要件とされている。業務補助というのは、監査法人に勤めるということにほぼ等しいから、監査法人の採用が少ない昨今の環境では、試験に合格した後もいばらの道が続くことになる。
記事の定員と入学予定者数を下に示す。

■ 主な会計大学院の入学者状況 (単位:人)
   大学          定員   今春の入学者数
  早稲田大        100        74
  青山学院大       80        40
  明治大         * 80        30
  関西学院大      * 70        40
  関西大          70        36
  中央大         * 80        13
  兵庫県立大       40        24
  東北大         * 40        21
  北海道大         20        13
  千葉商科大       * 70        67
  LEC会計大学院    * 60        36
  熊本学園大        30        40
  大原大学院大      30        31
  ------------------------------------
  * : 秋入学制度がある大学
  立命館大学、甲南大学、法政大学は、今春から募集を停止


微妙な規模であるが、社会人を受け入れることを考えるなら、50人以上というのは多いだろう。受験予備校と考えれば、100人以上にして他を充実して貰った方が良いという割り切りもあるかもしれない。そういえば、LEC会計大学院や大原大学院大は、資格受験対策の専門学校を母体にしている。受験対策には最適かもしれないが、それに特化してしまえば、リカレント教育を提供するなどというセリフは吐けないことになる。そもそも、そんなことは考えていないのかもしれないが。

社会に出て役に立つ大学教育などと、分かったような話を良く見掛ける。数年で得られる役に立つ知識というのは、それと同じ速さで役に立たなくなるものである。教育というのは、基礎的な知識と教養を確実に体得する為に、単純に思える作業を繰り返し行うことである。すぐに役に立つという媚薬に惹かれる姿が見苦しい。
何かというと、産学連携によるとか、国際化に対応した人材の育成とか、麗しい言葉が飛び交う。その結果、短期的に成果が上がったような気分にさせてくれる学部に資金が流れるようだ。この評価基準だって、前者は企業が関心を示したか程度の話だし、後者はカリキュラム構成程度の話で結果はついていない。
大学進学時に、数学が苦手だからと経営学部に進んだ学生が、企業の実務で役に立つと考えるのだろうか。総合的に成績は良好であったが、文学部哲学科に進んだ学生には、能力がないと決められるだろうか。分からないことを分かったように語る者は、後ろ暗いことを抱えているというのが昔からの決まり事である。

専門職大学院などという制度は、年齢と経験の幅の広い者をひとところに集めて、刺激し合うことで新たな価値を見出そうという試みに過ぎない。体裁の良いインセンティブをくっつけても、学費を払うという負担と天秤に掛ければ弾かれるものである。


公認会計士の制度のあり方を考える方が先だと思う。

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