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2017年5月31日 (水)

「総理は言えないから私が」と首相補佐官が…前次官証言

安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画について、前川喜平・前文部科学事務次官が朝日新聞の取材に対し、昨年9~10月に和泉洋人・首相補佐官と首相官邸で複数回面会し、「総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」などと言われたと証言した。「獣医学部新設を早く認めるよう求める趣n旨だった」と語った。
昨年9~10月は国家戦略特区での獣医学部新設について、内閣府と文科省の担当者間で協議が続いており、農林水産省などから新設に必要とされる獣医師の需給見通しが示されないとして、文科省が慎重姿勢をとっていた時期にあたる。前川氏の説明や同氏の手元の記録などによると、昨年9月上旬から10月中旬に首相官邸の補佐官室に複数回呼ばれ、いずれも和泉氏と2人きりで面会した。前川氏は昨年9月上旬の面会について、「和泉氏から、獣医学部の新設を認める規制改革を早く進めるように、という趣旨のことを言われた。『加計学園』という具体名は出なかったと記憶しているが、加計学園の件であると受けとめた」と証言。そのうえで「このときに和泉氏から『総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う』と言われたことをはっきり覚えている」と語った。(朝日新聞:5月30日)


獣医学部について考える。


岡山理科大学に獣医学部が新設されることが、政治家とその友人に関わる怪しげな話として話題になっている。獣医師が一部分野で不足することを理由にして、四国という獣医大学がないということと重ね合わせての例外指定、つまり特区という妙な名の制度で認めたという話である。規制緩和を重視する考えを採れば、獣医師会なる既得権益の集団の利益より、社会が受けるであろう利益を重視すれば良い。過当競争が生じて、結果、社会の不利益が生じる場合も無くはないだろうが、それがどうしたと言う話でもある。獣医師という国家資格を有することと、獣医師が国家から守られる存在だということとには、随分と距離があると感じる。少なくともこの国の体制のもとで、後者の様な状況は発生し得ないと確信する。
有資格者の就職先が、犬や猫を扱う動物病院に集中している状況を問題視するなら、獣医師の資格を犬猫と、経済獣と、医療実験用に分ければ良い。それが無理なら、製薬会社が欲しいだけ供給するから数字を出せと厚生労働省が指令を下せば直ちに集計されることだろう。実際のところ、獣医師がどれだけ増えても構わない。この領域の過当競争が、ペットの命を蔑ろにする環境を招くと言うのなら、現在のペットブリーダーから販売店の在り方について真剣に調査するのが良い。どの役所も、暗黒の領域に踏み込む気はないし、自身の所属する省庁の扱う内容でないと逃げ出すだろう。言訳が、既得権の保護に向かい過ぎている。獣医師の質が低下するというのも杞憂である。獣医師の低下は、国家試験で検証すべき事柄だし、定期更新の義務付けでも対応可能である。これをしないのもまた、既得権者の圧力に屈しているということである。
言い訳に難くせをつけてもきりがない。獣医学部を開設予定の岡山理科大学の経営状況について確認してみる。結果を下に示す。

■ 岡山理科大学資金収支推移 (単位:百万円)
年     学納金  補助金  その他 帰属収入合計  人件費  教育研究経 管理  その他  消費支出合計
2015    8,953    716   1,031    10,700      5,266    2,521    590      1    8,378
2014    8,922    784    955    10,662      5,218    2,576    692    141    8,628
2013    8,773    923    754    10,450      5,275    2,722    533    315    8,844
2012    8,426   1,258    636    10,320      5,244    2,650    541    126    8,561
2011    8,065   1,181    555     9,801      6,463    2,722    604    138    9,927
2010    7,739   1,232    370     9,341      4,941    2,802    559    142    8,444
2009    7,275   1,222    515     9,012      5,173    2,725    524    146    8,568
2008    7,351   1,026    512     8,889      5,204    2,809    598    159    8,770


この学校法人は、他にも大学を有するが、岡山理科大学で公表しているから、倉敷芸術科学大学、千葉科学大学は無関係である。100億円程度を集めて、90億円くらいを使っている大学である。今回のように今治市という既存の大学と異なる立地に校舎建設となれば、計画的に余剰金を蓄えておく必要もあるのだろう。
ところで、獣医学科のある大学の経営がどうなっているかを確認してみる。国内には5つの私立大学に獣医学科がある。この中で、日本大学と北里大学は同じ大学の中に医学部を有しているので覗いて、他の3つの大学について収入の推移で比較してみた。岡山理科大と並べて下に結果を示す。

■ 日本獣医生命科学大学、酪農学園大学収入推移 (単位:百万円)
年     日本獣医大    酪農学園大     麻布大     岡山理科大
2014     4,674       5,486        12,005       10,662
2013     5,884       7,436        15,492       10,450

2012     5,174       6,458        15,968       10,320
2011     4,461       7,678        17,663
        9,801

麻布大学の方が収入が大きい。岡山理科大学の規模による可能性もあると思い、学部限定で在籍者数を確認したのが下である。

■ 岡山理科大学の学部別在学者数
   学部名        在学者数
  理学部          2,235
  工学部          2,157
  総合情報学部      658
  生物地球学部      559
  教育学部         269
  経営学部         144
  --------------------------
  学部計          6,022


理科大学というのだから、理系の単科大学かと思ったら、教育学部もあった。教育学部には小学校教育コースもあり、これだと一般の教育学部と同じである。大学名で内容を決めるのが愚かだということである。教育学部は2016年から、経営学部は2017年から開始である。この二学部で人数が少ないのは、始めたばかりということに尽きる。本来なら600人規模になるところである。
なお、学部に限定したのは、理系学部であっても、私立、地方と重なれば大学院への進学者数が激減するからである。そもそも大学院を置く理由がないと感じるくらいなのだが、その話は別の問題になるのでここまでにする。獣医学科のある三大学との在学者数の比較を下に示す。

■ 獣医学部のある大学の学部在学者数
大学名            学部在学者数    内獣医学科数
岡山理科大学         6,022           -

酪農学園大学         3,545           836
日本獣医生命科学大     1,724           569

麻布大学            2,592           894

岡山理科大学は獣医学部の定員を160名で計画しているから、6年揃った暁には960人ということになる。実のところ160名というのは大きくて、100名強というのが現実的な水準であると思われる。獣医学部が出来て六年後に岡山理科大学がこの学部構成で続いているとすれば、在学生数は8,000人規模ということになる。地方の大学の規模としては大きいが、絶対値として大きい大学ということはない。
獣医学科があることで、大学の運営に大きな負担が生じることが分かる。獣医学科は医師に比べれば収入は圧倒的に低いから、大きな資金と投入して獣医師になるというのも、経済的な合理性は見出し難い。その分、学費が安いという見方も成立するのだろうが、こんな経済原理だけで決めてしまうのは、新自由主義の悪い傾向で、積み残したリスクはみるみる拡大して、将来の社会的損失を生み出す恐れがある。リスクの最小化というのは、多様性以外に選択肢はなく、多様性は非効率とほぼ同義である。学問をするのは、多様性の進行に等しいと思って良く、そこから生み出されるものは、経済的非効率であるが、安定した社会である。安定したが短期的に見れば確実に破綻するから、この論理を潰すのは容易であるが、人間の文明と文化の進歩を百年単位のスケールで見れば、経済合理性だけで選ぶ勇気はなかなか持てないものである。知らないのは最強だから、勇気があったりするものではあるのだが。
ということで、比較の三大学の獣医学科とその他の学科の初年度納入金額を比較する。数字は大学受験パスナビによった。結果を下に示す。

■ 獣医学科のある私立大学の初年度納入金額 (単位:円)
    大学名            獣医学科       他
   岡山理科大学           ―        1,530,000
   酪農学園大学         1,444,000     1,344,000
   日本獣医生命科学大学   2,631,000     1,725,000
   麻布大学            2,577,740     1,824,660


岡山理科大学は愛媛大学と包括的連携・協力協定を締結している。国公立大学の獣医学科は、共同獣医学部 (科) や大学協定を締結している。これは何を示しているかといえば、国内の獣医学科の教育環境が充実していないということで、予算がないから苦肉の策として協力してやっていくことを決めているということである。共同獣医学科の例として、2012年に岩手大学・東京農工大学があり、大学協定として2013年の宮崎大学・東京大学がある。この距離をどう埋めるのかという実務的な問題もあるが、そもそも近くにある大学が例外的な状況にあるから、このような状況になる。
獣医学科で公衆衛生関係の講義をする場合には、医学部が同じ大学にあれば協力可能になるのだが、上記三大学では日本獣医生命科学大が日本医大と同じ学校法人であることを除けば期待できない。岡山理科大学はそれを期待するし、愛媛大学では動物が介在する伝染病の研究に成果を期待しているのだろう。愛媛大学は随分と楽観的である。

岡山理科大学は初年度250万円クラスで獣医学科を考えているのだろう。250万円というのは、200万円でも300万円でもないという程度の話である。他の大学の獣医学科の状況を考えるに、簡単に運びようがない。何かスポンサーが付く理由でも見出しているのだろうか。
過去のブログで書いた京都産業大に獣医学科をつくる話の方が価値を見出し易いと感じるが、大阪に獣医学科があることを理由にされれば仕方ない。本筋は、国公立大学の定員拡大と同時に予算付けをするのが本筋だと思う。理由は、私立大学の進路が、ペット関係によっているのに対し、国公立大学は役所や研究者に進む割合が高いからである。特区の要素を新設大学で満たそうと思うと、本当は難しい。国立大学獣医学科に付属施設を併設するのが筋が良いと思うが、国立大学の定員を増やすというのは、今日的な選択ではないのだろう。


下々の者が動いたことを、上の者がなかったと説明するのは、コントである。

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