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2017年2月 2日 (木)

JASRAC、音楽教室から使用料徴収 反発も

日本音楽著作権協会(JASRAC)は2月2日、楽器を習う音楽教室から著作権の使用料を徴収すると明らかにした。楽器の練習や指導のために楽曲を演奏しており、音楽著作権管理における「演奏権」にあたると判断したという。使用料は受講料収入の2.5%とし、文化庁への届け出を経て2018年1月から徴収を始める考えだ。
JASRACはヤマハなどの音楽教室が全国に約1万1000カ所あると推計しており、まず大手が経営する教室から徴収を始める意向だ。これまでもダンス教室やカラオケ教室から使用料を徴収してきた。同様に音楽教室も徴収先に取り込む狙いだが、教室側は強く反発する見込みだ。「大学や専門学校は当面、徴収しない方針」(大橋健三常務理事)という。(日本経済新聞:2月2日)


著作権について考える。


日本音楽著作権協会の主張は、法律で認められている権利の行使ということになる。過去に、ジャズ喫茶やピアノバーを閉店させた実績がある団体だ。これも、適正な権利の行使によっている。CDの売上が減少し、放送局の売上も減って、それに連動して放送収入も減少するという図式がある。権利者の収入が減ることになれば、新たな創作意欲を削ぐことにつながり、芸術活動の停滞、ないしは衰退していくということになる。権利の範囲において、著作権使用料を求めるというのは、権利管理団体としては当然の行為という説明をするのだろう。日本音楽著作権協会の使用量徴収額の推移をホームページからの引用で確認する。結果を下に示す。

■ 使用料徴収額推移 (単位:百万円)
   年度      使用料徴収額
  2015       111,670
  2014       112,494
  2013       110,845
  2012       111,844
  2011       105,893
  2010       106,564
  2009       109,464
  2008       112,947
  2007       115,670
  2006       111,098


1,000億円規模ということで、伸びは認められない。CDが売れなくて、テレビの音楽番組が減って、BSでの音楽番組があっても、こちらは事業収入が少ないから徴収額が多い筈もなく、コンサートは活発であっても大きな伸びが期待されるものではない。最大の理由は、この国の人口が減る方向に動き出していることではある。何とかしなければならないと感じる気持ちは理解出来る。そこで、徴収額がどんな分野から来ているのかを確認する。これもソースは同じで結果を下に示す。

■ 2015年度の使用料等徴収額
  種目            徴収額(千円)
  演奏等           21,161,112
  放送等           31,512,963
  有線放送等         4,486,953
  映画上映            206,758
  BGM               503,326
  外国入金演奏         505,835
  -------------------------------

  演奏・合計         58,376,950
  -------------------------------
  オーディオディスク    12,815,605
  ビデオグラム        17,224,721
  外国入金録音         124,616
  録音・その他         2,010,370
  -------------------------------
  録音・合計         32,175,313
  -------------------------------
  出版               983,256
  -------------------------------
  貸与              3,248,766
  -------------------------------
  通信カラオケ         7,001,310
  インタラクティブ配信    9,844,330
  -------------------------------
  複合・合計          16,845,640
  -------------------------------
  使用料収入合計     111,629,928
  -------------------------------
  私的録音補償金        38,287
  私的録画補償金         1,825
  -------------------------------
  補償金・合計           40,113
  -------------------------------
  
総合計           111,670,041

放送等というのが、テレビやラジオで流されるもので、もっとも金額が大きく 315億円となっている。これに次ぐのが、演奏等でコンサートなどの音楽イベントが対象になり 211億円である。この後が、ビデオグラムというDVDやBlu-rayで動画を提供した場合に音楽を使用した場合で 172億円、オーディオディスクと総称しているCDやテープなどで音楽を販売する方式で 128億円となっている。外国入金録音という聞き慣れない項目は、外国団体との管理契約によるもので、海外で使用した場合に海外の団体を経由して入金されるという仕組みである。つまり、海外での音楽著作権使用料は1億円程度ということだ。これは今日の状況を考えると少ない気がするが、国により使用料の算出方式が異なるのかもしれない、と理解することにして先に進める。
営利目的で行われるイベントでは、著作権支払い義務が生じる。逆に、無料であれば徴収したくても出来ないが、無料イベントで使われた映像を有料配布すると、その時点で権利侵害が生じるというのが、この国の法律の解釈である。最初の方で書いたジャズ喫茶やピアノバーを閉店させたというのは、営利事業である喫茶店やバーで音楽を使用したから音楽使用料を払いなさいという話で、その金額が店を維持するのが不可能なくらい高くて閉店したという事例である。売上の何パーセントという計算式だから、零細企業である飲食店には負担が重いことだろう。大体、飲食を主な目的にしている事業と、音楽を鑑賞する目的のコンサートとで、算出方式が同等ではおかしいと多くの人は思うはずだ。飲食店なら計算式は同じであっても、支払額は1/100にするとかあってもよさそうに思う。ジャズ喫茶は実態として、音楽を聴く場所になっていると協会は主張するだろう。それなら、1/10でどうだとすれば、ドリンク付きのライブイベントは安くすべきかと訊かれることだろう。まあ、好きにして下さいという話である。売上額が小さいものから、大きな金額を徴収しようとする態度が正しくないと主張しているだけだから、心情的な方向に寄っているという誹りは避けようがないと自覚している。

記事の音楽教室の件は、学校での教育に用いるものには権利は生じない。学校教育が営利でないという建前であるから、必然的にそう解釈されることになる。学校法人はといえば、これも営利事業ではない。株式会社立の学校も同等と考えられている。大学や専門学校についても同様の解釈で成立している。音楽教室は学校法人ではなく、ヤマハのような音楽関係の大きな法人が、フランチャイズ契約をして個人事業主が運営しているというのが代表的な形になる。つまり、営利で音楽を使用しているというのが協会の主張である。事業所が1万あるというから、それぞれの売上高を1,000万円とすると、年間売上が1,000億円になる。受講料収入の2.5%だから、協会の徴収額は25億円となる。1,000億円規模の団体からしたら、新たな収入源が発生することが幸せな話である。

音楽教室で使用する楽譜は、正しく購入しているとされる。学校で使用する教科書や副教材でも有料であれば、楽譜などに権利が発生するのは同じである。これは妥当な判断で、まぎれが生じる問題でもない。
一方で、音楽教室で音楽を演奏するのは、外形的に必然の事実である。営利だから、権利が生じる。音楽を演奏して聴くという行為であるから、単純に売上高に係数を掛ける方式で問題なし、と言う判断である。
音楽教室側は、学校教育に準じたものだと主張するだろう。株式会社立の学校に権利が被せられ、専門学校や大学、私立高校へと拡大するのではないかという論理は、若干の飛躍はあるにせよ、心配される要件にはなる。協会の理事は正しく表明していて、当面、徴収しない方針、ということは、いずれは徴収することを検討するという話である。

音楽著作権協会は、音楽権利を守る団体ではあるが、音楽の普及を促さないことには、徴収額が増えないという事情も抱える団体でもある。その性格を理解すれば、教材への著作権支払いは必要だとしても、音楽教室の事業全体を徴収対象とするのは無理がある。そもそも、徴収されたお金は、手数料を引いて権利者に渡されるべきものなのだが、それが正しく実施されているかを検証する方法もない。放送関係や通信カラオケは、包括契約で処理される。通信カラオケの例では、通信カラオケの管理元にカラオケ装置の設置台数やカラオケ曲の曲目数を報告し、包括使用料を協会に支払う。支払われた金額から協会の手数料を引いて、通信カラオケ事業者から提供されたデータに基き権利者に支払われる (年4回)。
受講料収入の2.5%というのは、音楽教室が協会が管理している楽曲ですべてを使用している前提ということになる。ここで、著作権が切れている楽曲や、協会が管理されていない楽曲を用いた場合、もっと言えばそんな曲ばかり使用していても支払いを求めることになり、不当であるという主張が成立する。協会は98%をカバーしているから、という論理ですべて片付けるのは無理がある。発表会で用いる場合には、それが無料の会でも一定金額を支払う、ぐらいまでが妥協線であるように感じる。


優越的地位の濫用で、JASRACを叩くのが筋が良さそうだ。

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