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2016年12月 8日 (木)

京都産業大で獣医学部構想 新薬の動物実験の専門家育成

京都産業大学で獣医学部を新設する構想が浮上している。動物病院ではなく、ヒト向けの新薬開発やiPS細胞研究で家畜を扱う先端分野の獣医師を育成する。現在、獣医学部の新設は文部科学省により抑制されているが、国家戦略特区の枠組みを使って規制緩和できるように、京都府は内閣府などに要望した。実現すれば、京産大は京都府綾部市に研究所を設立し、府の畜産センターとの連携を図る方針だ。
新薬開発のための実験はこれまでマウスが中心だった。これに対し、遺伝情報がマウスよりもヒトに近いブタを使った実験の実施を目指す。創薬のスピードアップが期待できるという。京産大は企業と連携しながら、先端分野で家畜を扱うことのできる人材の育成を目指す。府の畜産センターがある綾部市位田町近辺での施設建設を想定している。ブタなどの動物実験をする施設や専門の獣医師になるためのトレーニング施設のほか、薬の安全性、効果を調べてデータを取り出すといった教育ができるようにする。京産大は鳥インフルエンザの研究センターも持っており、感染症防疫を担う獣医師を育成し、アジア地域の交換留学などを通じ、共同研究も計画している。一方、京都府は北部地域の過疎化に対応するために、規制緩和をてこに綾部市を畜産や製薬、生命科学分野の振興につなげる考えだ。
獣医師はこれまで44%が小動物の診療で、製薬、大学、研究に従事するのは8%程度にとどまっていた。ただ、今では製薬会社の約8割が獣医師を採用するなど、業界内でもこうした人材のニーズが高まっている。関西では小野薬品工業が新規がん治療薬「オプジーボ」を開発するなど新薬の開発機運が高まっている。よりヒトに近い動物で実験を行うことで、製薬の安全性試験、臓器移植の拒絶反応の抑制といった分野の研究を加速させることに期待がかかっている。(日本経済新聞:12月8日)


獣医学部について考える。


獣医師になるには、大学の指定された獣医学のコースを卒業する必要がある。年数は6年で、国内の16大学に設置されている。下に大学名と定数、学部学科、国家試験の最近6年の新卒者合格率を示す。

■ 獣医学部大学の学生定数
       大学名        定数       学部学科名        国家試験合格率
国立 北海道大学        40名   獣医学部共同獣医学課程     93.1%
    帯広畜産大学       40名   畜産学部共同獣医学課程     88.9%
    岩手大学          30名   農学部共同獣医学科        90.3%
    東京農工大学       35名   農学部共同獣医学科        91.7%
    東京大学          30名   農学部獣医学課程          89.0%
    岐阜大学          30名   応用生物科学部共同獣医学科  90.1%
    鳥取大学          35名   農学部共同獣医学科        94.2%
    山口大学          30名   共同獣医学部獣医学科       90.7%
    宮崎大学          30名   農学部獣医学科           91.8%
    鹿児島大学        30名   共同獣医学部獣医学科       91.4%
公立 大阪府立大学       40名   生命環境科学域獣医学類     88.8%
私立 酪農学園大学      120名   獣医学群獣医学類         89.7%
    北里大学         120名   獣医学部獣医学科         87.5%
    日本獣医生命科学大学 80名   獣医学部獣医学科         92.1%
    日本大学         120名   生物資源科学部獣医学科     89.3%
    麻布大学         120名   獣医学部獣医学科          84.5%


定数は国公立大学で30名、私立で120名というのが代表的な数字である。医学部の定数が100人程度になっていることからすると、少ないような気がする。小型動物と経済獣とを一緒にあつかうとなると、多くの学生を抱えるのは大変だという事情だろうか。
獣医師国家試験の合格率は国公立大学で90%前後、私立大学でも80%後半が多いから、差は小さい。獣医師の国家試験の合格率は、新卒者で89.2%、既卒者で40.7%である。つまり、九割は新卒で合格するが、一割は再度受験しても半分落ちるということである。二回受けても合格できない学生を卒業させるなと言いたいところだが、大きなお世話ではある。
入学予備校の偏差値比較では、国立大学は東京大学 (理2になる) を除いては似たようなレベルである。私立大学は少し下がるがそれほど差がある訳でもない。受験で問題になるのは、センター試験でフルに受験する大学と、受験科目が英数理に限定される私立大学との違いとなる。国立大学と、公立、私立大学の学費を比較してみる。結果を下に示す。

■ 獣医学科学費比較
   大学名          初年度学費   2年次以学費    6年間学費
  ≪ 国立 ≫         817,800      535,800      3,496,800
  ≪ 公立 ≫        1,002,800      720,800      4,606,800
  日本大学          2,450,000     2,190,000     13,400,000
  麻布大学          2,477,740     2,167,000     13,312,740
  日本獣医生命科学大学 2,631,000     2,220,000     13,731,000
  北里大学          2,440,000     2,040,000     12,640,000
  酪農学園大学       1,444,000     2,289,000     12,889,000

国立大学は同じ学費であった。公立は大阪府立大学である。国立だと6年間で350万円、公立だと460万円であるのに対し、私立は1,300万円前後掛る。国立だとコースによる学費の違いが少ないから、学費の高い医療系ではこれだけで進む意味を見出せる。しかし、医学部で安い順天堂大学で2,100万円、高い川崎医科大学4,700万円となるのに比べれば獣医師になるのは安い。学費とその後の職業で得られる収入だけでコースを選ぶこともないだろうが、選択する際に判断の材料にはなるかもしれない。それでも、医学部と獣医学部を天秤に掛けることはないように思う。


本題に戻す。獣医学部の卒業生の進路について確認していく。大学受験パスナビのサイトから各大学の卒業者の進路をまとめた。 東京大学と山口大学では卒業者数を大学ホームページで確認したが、進路については公表された情報はなかった。公務員、教員の欄に数字のない大学は、進路の詳細情報がなかったまとめた。結果を下に示す。

■ 獣医学科卒業後の進路
   大学名          卒業者  進学者 就職者数 公務員  教員
  北海道大学          41     7      26
  帯広畜産大学         39     4      30     5     0
  岩手大学           29     3      25     7     0
  東京農工大学        36     3      33    10     0
  東京大学           31
  岐阜大学           33     0      32     9     0
  鳥取大学           30     1      29     7     0
  山口大学           30                
  宮崎大学           31     3      23     9     0
  鹿児島大学          30     1      28        
  大阪府立大学        39     4      32        
  酪農学園大学        148    7     107     26     2
  北里大学           135    6     103     0     0
  日本獣医生命科学大学  97    13      74     8     0
  日本大学          129     5     108    19     0
  麻布大学          142     8     109    16     0

国立大学においても進学者が8%と少ない。東京大学で進学者が多いことが予想されるが、それでも全体で一割程度である。私立大学の進学者が7%であるから、大きな差はないと言える。獣医学科出身者のブログによると、獣医学科の進路としては、小動物診療に就職するのが38%くらいとされる。これは街の動物病院でペットの診療をする仕事である。24%が公務員で家畜伝染病の防疫など、行政に携わる獣医師である。12%が産業動物診療を行う仕事で、畜産動物の診察を行う。残りの14%が大学教授や医薬品メーカでの仕事を行う。合計が100%にならないのは、獣医師国家試験に合格しない者があるからということだろう。記事では小動物の診療が44%と大きくなっている。動物病院で産業動物のみのところもあるが、犬や猫も扱うところもあるから、この境界は難しいところだろう。農業関係の機関への就職なら、産業動物であるのは間違いはない。こっちは、公的機関の場合もでるから、公務員である可能性もある。資格が一つで区別するのに無理がある。研究に従事するのは8%ということだが、研究者を目指すのなら、大学院への進学を考えるだろうからこちらは矛盾しない。

製薬会社は獣医師を必要とする事情は理解するが、現状の獣医学科の進路に製薬会社は例外的な存在に留まる。おそらく、大学進学時に獣医学科を選ぶ人は、ペットなどの小型動物の診療を希望しているからだろう。そうだとすれば、獣医学科を増やしても効果は限定的である。高い必要性があるのなら、国立大学の定数を30から50に引き上げればよいのだが、共同獣医学課程を設置している状況からすれば難しい問題になる。共同獣医学課程は、複数の大学がそれぞれの施設や教員といった教育資源を相互に提供し合い、より魅力的な教育環境の拡充や教育・研究レベルの向上を目指す取り組みである。つまり、単独の大学で教育・研究を維持するのが困難な事情があるということだ。教員も不足しているだろうし、設備も足らないということだ。製薬会社が獣医師を欲しいと思うのなら、それに見合う資金を大学に投ずれば良いということで多くは解決できる。獣医学科の状況の理解もしないで、ない物ねだりしているようにしか見えない。


大学のコース新設とは、気の長い話である。

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コメント

単に兵庫県と京都府の畜産エリアの中間点にある京都府綾部市に獣医学部を作ると、言うことでしょ。大阪府大にわずかな定員がいるだけだから、教員に獣医師が多く、鳥インフルエンザ研究センターもあり、獣医学部を昔から作りたかった京都産業に白羽の矢が当たったということでは、ips研とも、京都産業は関係近いし、京都産業は保守系の実業大学だから、京都府も安心して、推薦しているんだろう。まあ、今治市が優先度高いかも知れないが、山口大学、鳥取大学にあるから、人口ボリュームや畜産エリアを考えたら、特例で認められるのがどちになるか、二エリア認められるか、興味はあるけれどね。

今治の岡山理科に決定。京産は釣りでしょう。

6年だよ。一期を出せるのかな?ならばということで地元獣医師会も安心して賛成した?
というか、そうなったらそうなったで困るのは国だから、政治判断では撥ねられた?
いっぽう、今治のほうは間違いなく商売敵となるから反対された?が、国としては持続性が見込めるほうに
軍配を上げた?…僕の勘では、私大中堅以下{母体の寿命:理系主体>文系主体}

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