カメラ各社、熊本地震で曇る業績 部品調達の遅れ響く
カメラ各社の業績に、熊本地震の影響が広がっている。ニコンは8月4日、部品調達先の被災でデジタルカメラの生産が滞り、2017年3月期の営業利益で70億円のマイナス影響が出るとの見通しを示した。部品の供給はすでに再開し、各社は生産を増やすなどの対応をとっているが、影響は年内まで残りそうだ。
ニコンはソニー子会社の工場が被災し、画像センサーの調達に影響が出た。現在は利益率の高い一眼レフの生産を優先しており、コンパクト型を中心に「年末商戦も影響が残る」(岡昌志副社長)とみる。今後は経費削減を進めることで、全体の営業利益は460億円、純利益は300億円のまま据え置いた。ソニー自体もデジカメの生産に影響が出た。デジカメを中心とした部門の営業利益が通期で260億円減る見通し。最大手のキヤノンもコンパクト型の部品の調達が滞ったが、影響額は明らかにしていない。主力の一眼レフは部品の調達ルートが異なり、影響は出ていないという。オリンパスは、今秋に予定していたミラーレスカメラの発売が数カ月遅れ、通期の営業利益が40億円減る見通しだ。円高の影響を含めて通期の業績予想を見直し、5月時点で650億円としていた純利益を570億円に引き下げた。カシオ計算機もソニーの被災の影響を受けた。影響額は公表していないが、夏以降に生産を増やし、「年間の販売台数の計画は変えない」(広報)という。(朝日新聞:8月4日)
デジタルカメラの生産状況について考える。
PCにしても、カメラにしても、スマートフォンに浸食された感が強い。時計も市場を奪われているのかもしれないと思ったら、そんな傾向もあると時計会社が認めている。忌まわしい存在である。そのスマートフォンの普及が急速に広まったのは2011年からである。以降、携帯電話がスマートフォンに置き換わり、付随するカメラ機能の向上により、コンパクトタイプのデジタルカメラは市場を奪われ続けた。カメラ会社は、コンパクトタイプを性能向上に舵を切り、若干の価格のアップと引き換えに良好な画質が得られるという製品を増やしている。それには、一眼レフやミラーレスのタイプが思ったほど伸びないという事情も影響しているのだろう。カメラ映像機器工業会発表の統計をもとに、月度の生産数でまとめたのが下である。
月の生産数は、200万台を下回るようになった。市場規模の拡大を今後期待するのは難しいだろう。スマートフォンのカメラで、昼間の近景なら問題ないし、遠景でもメモ代わりと割り切れば不満もないだろう。夜間の撮影でもデータ処理で補う方法も出てきているし、何とかなると思うユーザが多いということなのだろう。デジタルカメラを持ってまで、という欲求のある人は買うのだろうが、そう思わなければこと足りるという判断も出てくるものである。
最近の実際の生産数の推移を下に示す。
■ 月度タイプ別生産数推移 (単位:千台)
月 合計 コンパクト 一眼レフ ノンレフレックス
2016年6月 1,595 749 634 212
2016年5月 1,581 862 560 158
2016年4月 2,163 1,272 703 188
2016年3月 2,091 1,099 741 251
2016年2月 1,734 979 552 203
2016年1月 1,968 1,196 544 229
2015年12月 2,034 1,171 684 179
2015年11月 3,186 1,921 918 347
2015年10月 3,637 2,392 855 390
2015年9月 3,139 2,035 860 244
2015年8月 2,997 1,916 779 301
2015年7月 3,356 2,009 1,010 337
2015年6月 3,144 1,883 913 348
2015年5月 3,080 1,962 866 253
2015年4月 3,222 2,053 888 281
2015年3月 2,575 1,663 689 222
2015年2月 2,319 1,487 669 163
2015年1月 2,527 1,665 674 187
2014年12月 3,150 2,212 730 209
2014年11月 4,353 3,048 979 326
2014年10月 4,446 3,081 1,014 352
2014年9月 3,747 2,640 794 312
2014年8月 3,828 2,719 827 282
2014年7月 3,442 2,336 836 271
2014年6月 3,406 2,267 866 272
2014年5月 3,562 2,340 973 250
2014年4月 3,826 2,599 981 245
2014年3月 3,158 2,121 775 263
2014年2月 2,899 1,964 755 180
2014年1月 2,951 1,954 791 206
熊本地震が2016年4月で、生産に影響が出るのは5月からと思って良いだろう。5,6月の数量は例年に比べ減っている。これがソニーからの部品供給が不足している影響なのだろう。コンパクトタイプで影響が大きいが、利益が期待できる一眼レフやミラーレスに部品を振り分ける判断が影響しているのだろう。スマートフォン向けのイメージセンサーはというと、こちらのソニーの主力工場は長崎工場なので、影響は軽微である。ということは、コンパクトカメラはよりスマートフォンに置き換わるということになる。
カメラの代替わりが早いのが、所有する喜びを削いでいると思う。
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