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2016年6月20日 (月)

裁判員声かけ、元組員らを逮捕 福岡県警、威迫容疑

福岡地裁小倉支部で5月にあった指定暴力団工藤会系組幹部の裁判員裁判をめぐり、裁判員に「よろしく」などと声をかけて威迫したとして、福岡県警は6月17日、無職楠本利美(40)=福岡県行橋市=と会社員中村公一(41)=同=の両容疑者を裁判員法違反(威迫・請託)の疑いで逮捕し、発表した。2009年に裁判員制度が始まって以来、同法違反容疑での逮捕は全国初。
北九州地区暴力団犯罪捜査課によると、2人は5月10日午後4時ごろ、北九州市小倉北区の地裁小倉支部近くで、初公判を終えて支部から出てきた裁判員2人に「あんたら裁判員やろ」「顔覚えとるけんね」「よろしくね」などと声をかけ、威迫するなどした疑いがある。裁判員法は、裁判員への威迫行為(脅迫)や請託(依頼)を禁じている。同課は2人の認否を明らかにしていない。この裁判では、工藤会系組幹部(40)が昨年1月に北九州市内で知人男性を日本刀で刺したとして、殺人未遂罪に問われた。関係者によると、両容疑者は組幹部の知人で、楠本容疑者は工藤会系の元組員。組幹部を「兄貴」と呼んで慕っていたという。県警は、2人が裁判員に圧力をかけて裁判に有利な影響を与えようとしたとみており、工藤会の組織的な関与がなかったか調べる。被告側弁護人(当時)によると、組幹部は「全く知らない」と声かけへの関与を否定している。(朝日新聞:6月18日)


裁判員裁判について考える。


裁判員裁判の問題点は幾つかあるが、最も大きな問題が、高い秘密保持義務を要求した為に経験を語る場所がないということである。もう一つの大きな問題が、裁判員の安全の確保である。どちらも当初から問題にされていたのに、何も手を加えないまま放置されて今日に至っている。
裁判官の安全確保の問題について、判事の安全に特別な官舎を供するというのがある。裁判員に選任された人の安全確保に資金を投入するというのも現実的でない。短期間で結審しようというのも、裁判員の生活への影響を最小限にするのと同時に、裁判員を殊更危険にさらすことのないようにする配慮でもあろう。
記事の事案に関する法律の規定を確認する。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律によると、裁判員等に対する請託罪 (106条)、裁判員等に対する威迫罪 (107条) ともに、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金となっている。この程度の罰則かとも思うが、接触度合いが大きければ他の法律による規定に触れるだろうから、刑法に関わる法律の整合性がこの位を求めると理解するよりない。
参考の為に記すと、裁判員等による秘密漏示罪が108条にある。こちらは、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっている。裁判員を脅すより懲役は短いが、罰金は高くなっている。裁判所が想定しているのは、社会的に関心の高い裁判について、審議の結果を公表して経済的な利益を得ようとする行為なのだろう。そんなものはないと思うが、裁判に興味を持つのはそんなものという想定は正しいのだろう。この規定の理由に関する説明として、(1) 自由な意見交換の場の確保、(2) 事件関係者のプライバシーの保護、(3) 裁判員自身の保護、(4) 裁判の公正や信頼の確保ということになっている。一見最もな説であるが、これの厳密解を求まるのなら、一般国民が裁判員になることが成立しない気がする。国民に過大な負担を義務として求めるのは酷である。
問題があるとする指摘は多くある。負担の大きさも問題であるが、裁判員裁判のありかたを見直そうとすると、過去の経験が公表されないことで動きようがないということもある。最初から完成された最良の制度が出来ているとは立案者も考えていないから、将来の修正を検討課題にしているのにも関わらず、実務的な問題点の検討は不可というシステムでは変わりようがない。裁判員に負担を掛けない制度設計を検討して、情報管理に関してだけは過大な負担を当然の如く強いるという矛盾した制度になっている。

裁判員を危険にさらさないには、記事のような行為について迅速に動かなければならない。裁判員は交代されるだろうし、裁判も最初からとは行かずとも、ある程度戻す必要も出てくる。この結果として、証人に負担を求まることになる。根本的な話としては、法律という制度への挑戦と言える。これを被告人の責任に結び付けるには、別の手続きが必要であり、恐らく直接的に関係する場合はないだろうと想像される。今後も類似した事案は発生するだろうから、速やかに処理する体制を構築していくより他にない。

最後に裁判員裁判の問題に触れる。裁判員裁判の判決が、それ以前の同様の判決例に比べ重いことから、二審で量刑が変わるということが起きている。二審の判事は何を考えたのかと想像するよりないが、裁判員裁判のいう法律の変更があった事実について、忠実であることを放棄したと言える。一般国民の裁判員が従来より重い判決を下す傾向は予想されたことで、プロの裁判官がこの位の量刑が妥当だとするアドバイスを幾ら入れようとも、生涯のうちに一回しか担当することのない仕事に相場もない。もちろん、これは裁かれる側においても同様であるが、類似したとか、相場とか、そういう専門家の隠語や符丁の類で決められない制度が新たに出来たと考えるよりない。それの良し悪しを判断するのは立法府の仕事であり、司法の現場で議論するのは馴染まない。(建設的な議論を促すのは歓迎されるべきだろうが) 量刑が著しく重い、軽いという事案があったとしたら、二審の判決は地裁に差し戻すことであろう。裁判官は、地裁判事より高裁判事が上と言うヒエラルキーがあるとしても、裁判員には該当しないし、司法は国民のもとにあるとすれば、最上級の地位は裁判員である。担当する地裁の裁判官の技量の問題もあるかもしれないが、高裁が気軽に別の判決を下すという姿は法律に違反する行為と言える。ということは、裁判官というのは、法律と良心に従って判決を下すとしているが、過去の判決ライブラリによる量刑基準と、上司と先輩判事の顔色に従って判決するというのが今日の司法のありようということである。

裁判の長期化を防ぐ目的で、様々な工夫をしているようだ。それならいっそのこと、人工知能で判決すれば良い。争う部分が限定されていれば可能だろう。これに被告人と検察に不満がなければ、裁判員は確認だけで済む。そうもいかないのだろうが、人工知能なら反社会勢力に怯むこともないし、そもそも誰を脅せばよいのか分からないということで優れる。怪しげな判事より、情に流される裁判員より、過去の判決相場に合わせた厳密解を出すことが期待できる装置を好む被告人もあるだろう。


そんな被告人に更生が期待できるかというのは、まったくもって別の話である。

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