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2016年2月15日 (月)

戸倉シチズンHD社長:スイス企業買収に意欲

戸倉敏夫シチズンホールディングス社長は2月15日の中期経営計画説明会で、「高価格帯では世界的に強いスイスのブランド買収を目指したい」と述べ、2018年度までの中期計画の期間中に、スイス企業の買収に意欲を示した。合併・買収(M&A)の予算として300億~400億円を見込む。高級腕時計のラインアップの強化や生産体制の見直しなどにより、グループ全体での営業利益を305億円(15年度予想)から、18年度には400億円に引き上げる計画だ。(時事通信:2月15日)


シチズンの時計事業について考える。


シチズンの時計事業で扱っているブランドを確認した。2016年2月の中期経営計画説明会に記載されているものを記す。

■ シチズンの時計ブランド
     クラス       ブランド名
  Luxury       ARNOLD & SON
             ANGELUS
  High         Campanola
             The Citizen
             Bulova Accu Swiss
  Mid         Citizen
             Bulova
             Wittnauer
  Fashion & Low  Paul Smith WATCH
             CARAVELLE NEW YORK
             Wicaa
             Independent
             Q&Q


いろいとあるように見えるが、Bulova と同じグループのものが、Bulova Accu Swiss、Bulova、Wittnauer、CARAVELLE NEW YORK とある。Fashion & Low の欄にあるものは、他のファッションブランドとの提携や、廉価版としてのブランドであるので、記事の内容とは関係は薄い。Bulovaに関連したブランドがシチズンの傘下にあるのかと言えば、2008年に買収しているからである。これでMid以下のブランドの説明が付く。
Luxury と High について確認しよう。シチズンは2012年3月にスイス企業の Prothor Holding SA を54億円で買収している。この会社の売上高は、2,842百万円 (2011年1月~2011年12月:為替前提:¥90/CHF) である。この持ち株会社には、腕時計部品生産である Prototec SA 、高級腕時計ブランドである Arnold & Son SA 、そして La Joux-Perret SA を保有している。Arnold & Son は上にある。La Joux-Perret は、クロノグラフ・ムーブメントのカスタマイズを得意とし、ベースムーブメントの改造から固有のムーブメント開発と、ムーブメントに関する技術力を有している。実際、La Joux-Perret のムーブメントが Campanola に搭載されている。Campanola は2000年からの新しいシリーズであるが、ザ・シチズンが1995年に会社創立65周年を機に発売されている。セイコーのクレドールとグランドセイコーの関係に似たものであるが、セイコーに比べると認知度が低い感は否めないところである。
Campanola のLa Joux-Perret ムーブメントであるが、Cal.Y531と称される。これは、La Joux-Perret が Sellita のSW300をベースにパワーリザーブを付け、カレンダーをダブルディスク化し12時に配置したCal.3513をさらにシチズン用にカスタムしたものということになるようだ。時計は50万円を超える価格設定なので、シチズンで売るには高い設定になっている。
Sellita という会社が出てきた。1950年創業のスイスのムーブメント供給会社である。スウォッチグループに属している有名なETA社は、2002年に未完成品 (エボーシュ) のグループ外への供給を停止すると発表した。独占禁止法の関係もあり2010年まで供給は継続することとなり、それ以降も独立系の会社には供給されることとなった。しかし、リシュモングループ、LVMHには停止された。所謂2010年問題である。ETA社から安定供給される高性能で耐久性の高い汎用ムーブメントは、大量生産され価格も安いと都合の良い部品であった。Sellita は、ETA社から部品供給を受けて組み立てるアセンブラーであったが、2002年にETA社から部品価格を上げられたことで裁判を起こし勝訴している。そして、上記の事情により、2005年に代替ムーブメントの開発に成功し、ETA社の特許の切れ他製品について相当品を供給することに至った。機械式の時計の特許は、特殊なものでなければ1970年代までのものだから、期限が切れている。汎用品においてはそれが顕著であったということだろう。見た目に差がないETAとSellitaが存在することになる。

すっかり話が逸れた。シチズンがスイスブランドを手に入れようとしても、スイスの時計会社の多くは、スウォッチ、リシュモン、LVMH の三つのグループに属する。グループに属するブランドを手に入れても、高値で買うことになるか、ブランド価値が低いものを手に入れることになるから難しい。独立系となると、パッテク・フィリップが1,000億円くらい、オーデマ・ピゲが500億円くらい (ロレックスは一桁大きい)、オリスが50億円クラスというところだろうか。シチズンの予算からすれば、オーデマ・ピゲのM&Aは難しい。しかし、オリスなら簡単かと言えばそうでもない。企業買収に関する考え方は、この世から消滅して欲しい会社にどれだけ金を出せるかというのが基本になる。あんな会社が欲しいというのでは、きりがない。
シチズンのブランドの中で、Arnold & Son がある。2015年のバーゼル・フェアに出品されていたものを見ると、予価として2,266万円、1,901万円、560万円といった値段が表示されているものがあった。Luxury というのはこういう価格を当然とする市場なのだろう。
バブル期のことだと記憶する。古いが活動を停止している時計会社の製品を探し、有名なオークションに出品して高額で落札する。その後、このブランドの新製品を発表する。この会社がマニュファクチュール (ムーブメントから自社で一貫製造する) であれば完璧である。1970年代にスイスの時計会社は壊滅状態になったし、そもそも時計会社というのは家族経営よりは大きいにしても、その程度の規模のものであったから、ブランドを遺族から買い取ることが可能だったという事情もあったろう。毎年少量出荷して、数年したら高価で回収するという作業を繰り返せば、十年もすれば高品質な高級ブランドのイメージが完成する。
シチズンが高価格で売買される市場に参入したいという気持ちは理解する。しかし、市民ブランドを作っている会社が、少量の高価格品で泡銭を集めようというのは理解し難い。時計は高性能なものの方が安くなるという不思議な傾向がある。機械式の時計より優れた精度のクオーツの方が安く、電波時計やGPS機能というのは、大きな付加価値を生み出せないでいる。シチズンが開発したクオーツ式のグランドコンプリケーションムーブメントを搭載する時計の価格は、12万円程度で販売されている。電波時計でもGPS機能も付いていないが、複雑な機能を組み入れている製品である。それがこの程度の価格に過ぎない。機能の追加の流れならスマートウォッチがあるだろう。いろいろな仕事を詰め込むと、電池の持ちが悪くなる。スマートウォッチなら数日程度、上のグランドコンプリケーションも二年程度である。手巻きで二日程度のものが高く売れるのだからという理屈は、機能の合理性を追求するのと矛盾する。なかなか難しいものである。

1,000万円の時計を作る技能と、1万円で作る技能で、後者が前者に劣るということもないように感じる。シチズンは、2007年の中期経営計画で選択と集中を行うとして、カメラ用CMOSモジュール事業と小型液晶パネル事業、フロッピー・ディスク装置事業からの撤退を発表した。同時に2009年度に営業利益率10%を目標とするとしている。2010年3月期はともかく、その後も10%には程遠い結果になっている。経営者の無い物ねだりを吐露されても、株主は何と言ってよいのか困惑することだろう。


社員にシチズンの不足するものはと問うたら、優秀な経営者と言われそうだ。

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