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2016年1月12日 (火)

パートは月収25万? 首相答弁に野党「ずれた感覚」

1月12日の衆院予算委員会で、実質賃金をめぐる安倍晋三首相の答弁について、民主党の西村智奈美氏が「感覚がずれている人に雇用政策は取れない」と批判。首相とやり合う一幕があった。
首相答弁は8日の衆院予算委での答弁で、実質賃金が下がっているとの指摘に対し、「景気回復の過程でパートが増える。1人当たりが低く出ることになる」と説明。その後、例え話として「妻は働いていなかったが景気がよくなって働くことになり、私が50万で妻が25万なら75万円。2人で働くと平均は下がる」と述べた。12日の西村氏の批判に対し、首相は「パートというのはその前の説明で、妻がパートで25万とは言っていない」と反論したが、西村氏は「総理は明確にパートと答えている。そこは逃げないで頂きたい。手取り25万なら、時給は1900円だ。そういう仕事がどこにあるのか」と指摘した。(朝日新聞:1月12日)


賃金について考える。


発言があった8日に少しだけ話題になったが、すこしだけに留まっていた。もっと大きく扱われても良さそうな気もしたが、結果として翌営業日の12日に話題になったということである。発言内容を振り返る。安倍の発言で問題になっている部分を引く。

「ご指摘の実質賃金の減少についてでありますが、景気が回復し、そして雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります。私と妻、妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働き始めたら、(月収で)私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから、2で割って平均は下がるわけです」

25万円がパートタイム労働者を指していないという反論を安倍は試みている。言語としてはそういう解釈も可能だろうが、パートタイムで働いている人が増えた話を前段でして、後段では新規に働きだしたフルタイムの妻の月収の話をするというのでは論理が破綻する。知的な会話に難がある体質であり、当日は心神耗弱だったという説明なら、発言についての責任は問えないのだろうが、その職に留まることは出来なかろう。答弁の冒頭部分は役人の作文であるが、後半は安倍が加えたということが想像される。50万円と25万円の足し算は不得手にはしていないようだが、2で割ることは得意ではないようだ。
話題になっていない安倍家の夫が50万円の月収であるという部分から扱う。賞与がないとして、月収の12倍は600万円である。国税庁が発表している民間給与実態統計調査の推移を確認する。年収と解釈して良い。結果を下に示す。

■ 民間給与実態統計調査 (国税庁)
   年    全国
  2000  461万円
  2005  437万円
  2010  412万円
  2011  409万円
  2012  408万円
  2013  414万円
  2014  415万円

賞与なしで600万円というのは、平均値よりかなり高い。平均が全体を代表するかということはあるとしても、例示するには最適ではない。上の数字を参照するなら、年収400万円くらいをイメージして、月収30万円、賞与が年間2月で年収420万円と仮定したら良かろう。妻がパートタイム労働を始めるという前提条件が、妻の年齢が五十代というのもあるだろうが、何となくしっくりこないものである。三十代で子供を保育園に預けるくらいが妥当なところと思える。筋が良くない前提になっている。

少し別の確認をする。東洋経済新報社調べの2015年大卒初任給の平均は、20万7,450円 (上場企業2,861社の平均) となっている。別の調査で、労政時報によると、東証第1部上場企業218社の速報集計として、大学卒20万8722円、大学院卒修士22万5094円、短大卒17万6392円、高校卒16万3689円となっている。一定以上の規模の会社に就職すれば、大卒初任給として約21万円であるということである。
最低賃金についても確認しよう。地域により異なるので、東京都の例で時間給として推移をまとめたのが下である。
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昨年11月24日に、「一億総活躍社会の実現」に向けた政府の緊急対策案として、最低賃金は、1000円を目指す目標も明記するというのが報道されている。民主党時代に1000円にするとしたら自民党が反対したとして、民主党が反発していた。民主党の反発は無意味である。安倍政権のやり方は、民主党の掲げていた政策を取り込んでいくことで支持率を維持するという手法を採用している。政策を盗むのが目的ではなく、政策に関する議論を回避するのが目的だろう。そんなことをしていても仕方ないように思うが、長期政権を目指して野党の体力を奪うには最適な方法なのだろう。

以上のことから、安倍が知っていなければならない賃金に関わる数字は以下の三つである。民間企業の平均年収は400万円、大卒初任給は21万円、最低賃金は時給900円である。
時給1000円で、1日7時間労働で月20日勤務で月収14万円、年収168万円となる。税金や保険の負担を考えると不利になるから調整するというのが、パートタイム労働者の実態だろう。103万円、130万円の壁というのは、総活躍というのに馴染まないのだが、そこの修正を行うとなると、税制や社会保険制度の変更と手が掛る。簡単に言えば、とっても難しい。
安倍が愚かなのは、50万と20万円としたことで、足し算も割り算も苦手のご様子だから、30万円と10万円とすれば良かった。平均30万円が (30万円+10万円)÷2 = 20万円で平均が下がったという例である。これなら上記の三つの数字から外れない。役人は算数に難があると配慮して、数字の例示を避けたのかもしれないが、役人が考えるより基礎的な学力に欠けるというのが実情だろう。次からは色々な数字を書かねばならなくなるのは、お気の毒な限りである。
役人としては標準モデルを設定すれば良いのだが、役人が勝手に設定すると政治家が怒る。秘密情報として、夫38歳、妻36歳、子供二人(8歳、5歳)、夫年収500万円、妻パートタイム年収80万円といった具合にである。他にも必要なことがあるから、定年後夫婦バージョンや、子供に手が掛らなくなった50歳バージョンも用意すればいいだろう。役人にはお手の物だろうが、政治家の顔色を窺うのが大変なのかもしれない。


雇用政策に不適な理由を、感覚のずれではなく、基礎学力の不足に求めた方が正しそうだ。

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