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2015年10月 2日 (金)

強姦罪の刑引き上げ、法相が諮問へ 非親告罪化も議論

性犯罪の厳罰化をめぐり、上川陽子法相は10月2日、強姦罪の法定刑の引き上げや、被害者の告訴がなくても罪に問えるようにするための刑法の改正について、9日に予定される法制審議会(法相の諮問機関)にはかる考えを明らかにした。閣議後の会見で「近年の性犯罪の実情を鑑みて、実態に即した対処をするために行うもので、大変重要な問題だ」と述べた。
有識者会議の「性犯罪の罰則に関する検討会」が8月に報告書をまとめ、法務省が法改正が必要かどうかを検討していた。強姦罪の法定刑の引き上げなど、検討会で賛成が多数だったテーマについて、法改正が必要と判断した。今後、法制審が議論に入り、法相に答申すれば、法務省が刑法の改正法案をまとめる見込みだ。(朝日新聞:10月2日)


厳罰化の流れについて考える。


強姦致傷の法定刑が、強盗致傷より軽いのはおかしいという話である。強盗致傷の法定刑が6年以上の懲役または無期懲役であるのに対し、強姦致傷が5年以上の懲役または無期懲役となっている。
裁判員裁判で争われた強姦致傷罪を含む事件の判決をまとめた。データは、まさかりの部屋 (http://www.geocities.jp/masakari5910/index.htm) のデータに依った。不定期刑が2件、保護観察付執行猶予が2件、執行猶予が5件ある。前の二つに当てはまるのは少年犯罪となる。結果を下に示す。

■ 強姦致傷の裁判官裁判の判決 (2009年11月13日~2015年10月2日)
     3年以下の懲役       1
     5年以下の懲役      23
     7年以下の懲役      45
     9年以下の懲役      30
    11年以下の懲役      19
    13年以下の懲役      14
    15年以下の懲役      14
    それ以上の有期懲役   38
    無期懲役           4

全部で198件の判決がある。執行猶予は懲役2年が1件、懲役3年が4件である。実刑で懲役3年となった事例は1件で、懲役3年6月が1件、懲役4年となった事例は6件で、懲役4年6月が4件、懲役5年が12件である。法定刑の下限が懲役5年であるから、実刑の軽い方から確認する。まず懲役3年の判決は、徳島地裁の2012年11月22日判決である。判決ダイジェストからの引用を示す。

裁判員制度により、経営する徳島市内の美容室で、女性客に乱暴しようと店の鍵を閉め、店内の休憩所に連れ込んで暴行や脅迫をするなどしたとして、強姦致傷罪に問われた阿波市の美容師 (39) に対する判決宣告があり、被告人は起訴事実を否認したが、佐藤晋一郎裁判長は、被害者の女性を店内の休憩所に無理やり連れ込んだ点などを挙げ、強姦致傷罪は成立するとした上で、性的欲求のまま行為に及び、自己中心的で非常識であるが、被害者が被告人に期待を抱かせる経緯もうかがえるとして、懲役3年 (求刑懲役6年) を言い渡した。

複数による犯行で、その中の成人が懲役3年になった事例 (上の集計では執行猶予付きに含めている)  として、奈良地裁の2009年11月30日判決である。判決ダイジェストからの引用を示す。

女性を乱暴目的で軽ワゴン車に無理やり連れ込んだとして、集団強姦致傷などの罪に問われた奈良県葛城市の無職のA (23) ら4人に対する判決があり、Aを除く3被告の弁護人は、量刑は主導的か従属的かで決めるべきであると主張したが、石川恭司裁判長は、犯行は被害者の人格を無視し卑劣かつ悪質であるが、強姦行為が未遂で、女性と示談が成立したとした上で、犯行の発案から準備、実行まで中心的役割を担い、3被告に比べ犯情は重いとして、Aに懲役3年 (求刑懲役6年) の実刑、Aの指示に従って行動したとして、ほかの3被告に懲役3年、保護観察付き執行猶予5年 (いずれも求刑懲役6年) を言い渡した。

という事件と判決である。
徳島地裁では、被害者が被告人に期待を抱かせたことが、奈良地裁では、示談が成立しているということが、情状酌量をもたらしたようだ。中でも示談の成立というのは最大の効果があると思われる。これにより、刑の下限5年を半分に減刑できるから、懲役2年6月まで下げた判決が可能になる。減刑される要素はいろいろあるのだろうが、強姦致傷に問われている事案は、刑が一つに留まっているのは例外的で、他の刑でも起訴されている。併合罪は、重い方の刑罰の1.5倍と規定されるから、強姦致傷が重い方とすれば、懲役7年6月以上30年以下、無期懲役ということになる。有期懲役の上限は20年になるが、1.5倍の影響で30年まで伸びる。
強盗致傷より軽いのはおかしい、のおかしいの部分は法律に記された文言が、バランスが悪いと主張しているに過ぎず、判決の実態として軽くておかしいと主張している訳では無いことが確認できる。仮に法律が改正されたにしても、判決が厳しくなる度合は限られていると予想されるものである。
それでも、重い側に流れるのではあるのだろうと想像するが、裁判員裁判になって、強姦のような重い犯罪に対して、厳罰化の方向に流れていることが過去に話題になった。法律実務家と称する専門家たちは、過去の判決とのバランスを欠くと考えるようだが、裁判員裁判という制度によって、法律が変わったのだから、その前後で量刑に変化が出るのは当然である。高等裁判所で量刑が不適切だと判決を修正するなら、裁判員裁判などという制度は用いなければ良い。法律が素人が裁判に裁判に関わることを求めているのだから、法律に違反した手続きであるのでなければ、少なくとも量刑に関しては、素人の判断が専門家に優先されるべきである。裁判官の良心という名で語られる同業者への配慮が、法律より優先されるのなら、裁判官を辞めるのが良い。裁判官の肩を持つなら、これらの議論が立法で十分行われなかったということは指摘されて良かろう。
法律が変わっても判決に影響しないようでは困るが、重くすればそれで済むと思っている人が多いようでは、それも困った話である。量刑の軽いものだから、軽い側に流れると決まった話ではない。上記の判決の有期懲役刑の平均は 11年1月となっている。重い刑だと考えて良いだろう。重い犯罪で裁かれたのだから当然とも言えるが、量刑が軽いというのには違和感がある。
比較された強盗致傷の判決例を確認する。少し楽をして2013年以降の判決をまとめた結果を下に示す。参照は同じである。

■ 強盗致傷罪の裁判員裁判判決 (2013年1月~2015年9月)
  総数              61
  実刑              52
  保護観察付執行猶予    5
  執行猶予            1
  不定期刑            3

  実刑 平均       7年5月
      最大      16年
      最少       3年

     3年以下の懲役       2
     5年以下の懲役      11
     7年以下の懲役      17
     9年以下の懲役      11
    11年以下の懲役       6
    13年以下の懲役       2
    15年以下の懲役       2
    それ以上の有期懲役    1


強盗致傷の方が軽いという結果は見えてこない。文字だけ追って思い込んではいけないという話である。強姦や強姦致死傷罪の法定刑は、強盗や強盗致死傷罪よりも軽く、被害者支援団体などから「強盗より軽く扱われている」というのは、心情的な部分に限られている。経済犯である強盗と、精神的な傷を負わせる強姦では、情緒的な面が強調されて当然ではある。それでも、報道する者は、実情の確認くらいするものだろうと思う。役所の発表を垂れ流す御用報道では、自身の価値を否定することになる。

さて、情緒的な話を離れて実務的な影響の出そうな親告罪について考える。親告罪の代表的なものには、(1) 強姦や強制わいせつ、(2) 侮辱罪・名誉毀損罪・器物損壊罪、(3) 親族相盗がある。今回の対象は(1) である。強姦罪が親告罪である理由は、被害者の意向を尊重している為と考えられている。被害者の人権に配慮する必要は感じるから正しいのだろうが、親告罪であるが故に表に出ない犯罪が多いという指摘にも同じように同意してしまう。なお、強姦罪は親告罪だが、集団強姦罪・集団準強姦、強姦致死罪、強姦致傷罪は非親告罪である。捜査当局に被害者の人権に配慮する姿勢が守られるのであれば、非親告罪で良いのだろうが、それを捜査当局に求めるのは酷すぎるだろう。次の被害者の発生の懸念や、犯罪者は放置されるべきでないという考えに同意することと、自分自身の精神的な被害の大きさとを天秤に掛けて、告訴しないとする判断を下したのが被害者である。親告罪でなくすことの価値をどこに見出せば良いのか合理的な説明がなされていない。
性犯罪は精神疾患の一種と考えるのなら、犯罪者の行動に関する将来的な制限が加えられても仕方ないと思う。具体的には性犯罪者GPS監視になるが、精神疾患であっても治療されずに放置している状況があれば完成しない。この国の法制度の大きな問題点は、犯罪を裁くことには熱心であるが、犯罪者を矯正することにはそれほどではなく、前科者への差別という別の問題が生じ、再犯を繰り返すという負の循環を作ってしまっていることである。犯罪者の人権ばかり保護しようとすると言われるが、被害者の人権よりさらに軽く扱われているのが前科者である。再犯促進をしても社会秩序の安定は達成されない。すべての犯罪者を排除可能なら、それはそれで怖い社会ではあるように思う。

被害者と被害者家族の思いは、犯人を死刑か無期懲役にというところだろう。法律の求める秩序がそれが許されないのなら、執行猶予付きの死刑を希望することだろう。中村主水がいなくても、私がやるというものだろう。達成したときの裁きは、有期懲役だろうか。敵討ちに失敗し、返り討ちに合ったのなら、執行猶予が取り消される可能性がある。血で血を洗う社会秩序ということだ。


忠臣蔵のような世界観がこの国では支配的なのだろう。テロでしかないのだが。

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