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2015年7月28日 (火)

慰安婦問題で「適切な反論を」 自民特命委が提言

自民党の「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(委員長・中曽根弘文元外相)は7月28日、従軍慰安婦問題などに関する提言をまとめ、中曽根氏が首相官邸で安倍晋三首相に手渡した。日本の主張に反する海外での報道などに「日本の立場や取り組みを丁寧に説明し、適切な反論を行うなど効果的に発信する」よう求めた。首相は「しっかり受け止める」と述べた。
提言は慰安婦問題については「根本的に女性の人権と尊厳を著しく傷つけたという点に議論の余地はない」と強調。一方で「性奴隷」といった表現などが「著しく日本の名誉を毀損し、国益を損なうものとして看過できない」と指摘した。1993年8月に河野洋平官房長官が従軍慰安婦に関する談話を発表した際の記者会見で、強制連行の「事実があった」とした発言などを重大な問題だとの認識を示した。提言は28日の党総務会で了承した。首相との面会には稲田朋美政調会長も同席した。(日本経済新聞:7月28日)


自民党の慰安婦問題について考える。


委員長の中曽根弘文の父親は、内閣総理大臣でもあった大勲位の中曽根康弘である。中曽根康弘は、1941年に東京帝国大学法学部政治学科卒業後、内務省に入省する。海軍短期現役制度で戦時中に海軍主計将校  (終戦時は海軍主計少佐) に転じる。短期現役士官というのは、大日本帝国海軍が旧制大学卒業者等を対象に特例で現役期間を2年間に限って採用した士官のことである。中曽根の場合には1943年に期限満了となるが、終戦近くの状況では、服役期間の延長を命じることが可能であり、太平洋戦争期には2年が経過してもそのまま軍務に留まることが多かったという。
中曽根が慰安所設立の事実を書いたのは『終りなき海軍』(松浦敬紀・編/文化放送開発センター/1978) である。この本は戦中海軍に所属し、戦後各界で活躍した成功者たちが思い出話を語った本である。その中で、海軍主計士官だった中曽根も「二十三歳で三千人の総指揮官」というタイトルで文章を寄稿している。インドネシアの設営部隊の主計長だった当時の中曽根が、荒ぶる部下たちを引き連れながら、いかに人心掌握し戦場を乗り切ったかという話だが書かれている。その中に下記の様な文がある。

「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して、慰安所をつくってやったこともある。かれらは、ちょうど、たらいのなかにひしめくイモであった。卑屈なところもあるし、ずるい面もあった。そして、私自身、そのイモの一つとして、ゴシゴシともまれてきたのである」


政治家が、特に功成り名を遂げた者が、過去の事を書けば、自慢話になると決まっている。逆に自慢話以外の何を書くというのかということでもある。ところが時間が経過してこれが別の問題を引き起こすことになる。2007年3月23日、中曽根が日本外国特派員協会で会見をした際に、アメリカの新聞社の特派員からこの内容に関する質問を受けた。ここで中曽根は、「旧海軍時代に慰安所をつくった記憶はない」、「事実と違う。海軍の工員の休憩と娯楽の施設をつくってほしいということだったので作ってやった」、「具体的なことは知らない」と完全否定している。休憩と娯楽の施設では自慢話にならないのだが、不具合があれば自慢話の方を訂正するよりない。
書籍に誤りがあったというならそれだけの話ではあるのだが、この本の編者である松浦敬紀はその2004年頃、雑誌「フライデー」の取材に対して、「中曽根さん本人が原稿を2本かいてきて、どちらかを採用してくれと送ってきた」、「本にする段階で本人もゲラのチェックをしている」、と明言している。こうなると編者の名誉も関わってくるから、中曽根は今日の芸人の様に、盛ってしまいました、と説明しなければならない。大勲位に求めるのは恐縮ではあるが、編者が不適切な仕事をしたというのでは可哀想過ぎる。
ところが、国家機関である防衛省のシンクタンク・防衛研究所の戦史研究センターから、「海軍航空基地第2設営班資料」というのが見つかった。第2設営班とは、中曽根が当時、主計長を務めていた海軍設営班矢部班のことである。この資料は同部隊の工営長だった宮地米三がそれを記録し、寄贈。同センターが歴史的価値のある資料として保存していたものである。細かな話は省略するが、本の内容が正しいという資料となっている。

この話は色々なブログで扱われていて、コメントについても様々なものがある。戦争中はもっと酷いことをしたとか、他の国も同じ様なものだとか、日本だけが責められるのはおかしいとかいう話が多い。この手の話は無視して良い。日本軍が強制連行を行い従軍慰安婦にしたかが焦点である。別の話は別の所ですれば良い。
中曽根が慰安所をつくったこと、当然そこには慰安婦が送り込まれたから、この事実に関係していること、そして、「土人女を集め」、「苦心」したのだから、その事情を説明すれば良い。都合の良いことは主張し、悪いことは忘れるというのでは大勲位の名が泣く。

自民党は事実関係以上に日本を傷付ける表現があることを問題にしているが、自分たちに都合の良い部分のみ拾うようでは、国際的な日本の地位が上がることなどない。事実関係を有利不利を問わず明らかにする姿勢こそが、日本の地位を上げるものだと確信する。

ついでに書く。日本とインドネシアの間での戦後補償は、『日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定』として 1958年1月20日に賠償協定が調印されている。日本がインドネシアに803億880万円(2億2308万米ドル)を支払うというものである。インドネシアの経済的な困窮状態というのも影響しているのだろうが、独立のお祝いというつもりで賠償をということになっている。インドネシアのプライドの高さも感じるし、両国の未来志向も感じ取れる。


自民党は本気で取り組むのかな。

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