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2015年7月 9日 (木)

大崎事件で3次再審請求 弁護団、早期審理求める

鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで懲役10年が確定、服役した原口アヤ子さん(88)が7月8日、冤罪を訴え、鹿児島地裁に3回目の再審請求をした。
原口さんは捜査段階から一貫して無実を主張したが、共犯とされた元夫ら親族3人の自白などが決め手となって有罪となった。今回は新証拠として、3人の自白の信用性を支える根拠となった別の親族の供述が「体験に基づかない可能性が高い」と指摘した心理学鑑定を提出した。原口さんの弁護団は再審請求後、地裁で裁判官と面談し、高齢の原口さんに配慮して早期に審理を始めるよう求めた。裁判官は、提出された新証拠に関する証人尋問を早ければ11月中にする意向を示したという。(共同:7月9日)


再審請求について考える。


大崎事件というのを知らない。鹿児島県曽於郡大崎町井俣という場所での事件だそうだ。地番を地図検索したら飛地があってどこだか分からなかった。この程度で分かることもないのだが、大隅半島の東部に位置する。大崎町の中に志布志市の飛地があったりと、地域の境界に対する合理性というのは、何なのかと考える材料にはなりそうだが、そもそもそんことは考えないで決めるか、気にしないかのどっちかしかないものだろうから、学問として考える対象にはなり得ないのかもしれない。農業が中心の比較的平坦な土地で構成される町である。
事件について確認する。1975年10月15日午後2時頃農業を営む42歳男性が、自宅牛小屋の堆肥の中から腐乱死体で発見された。男性は三日前の夜泥酔して自宅から約1キロ離れた用水路の中に自転車とともに倒れているところを、通りがかった村人に引き上げられて家まで軽トラックで送り届けられた後、所在不明となり、捜索願が出されていた。
警察は当初から近親者の犯行と見て捜査を開始し、10月18日、同一敷地内に住む長兄(当時52歳)と次兄(当時50歳)を逮捕した。容疑は殺人・死体遺棄である。10月27日に甥(次兄の息子:当時25歳)を死体遺棄容疑で、10月30日に長兄の妻(被害者の義理の姉)を殺人・死体遺棄容疑で逮捕した。事件の背景には、被害者が酒乱であったこと、被害者に保険金が掛けられていたことがあるとされた。
その後、四人は起訴され、鹿児島地裁は1980年3月31日に、長兄の妻を主犯として被害者を西洋タオルで絞め殺して牛小屋堆肥置き場に死体を遺棄した殺人、死体遺棄罪で懲役10年、長兄に懲役8年、次兄に懲役7年、甥に懲役1年 (死体遺棄罪) の判決を下した。長兄の妻のみ即日控訴するも、同年10月14日、福岡高裁宮崎支部が棄却し、さらに即日控訴するも、1981年1月30日、最高裁が棄却して、懲役10年が確定している。
地裁判決後の長兄の妻以外について確認する。三名は控訴せずに服役している。しかし、甥については、服役後に無実を訴え1997年9月19日に、鹿児島地裁に冤罪を訴えて再審開始を求めた。2001年5月死亡により母親が再審を継承するも、母親は2002年4月1日に死亡している。長兄服役後1993年病死、次兄服役後1987年自殺している。甥の死亡理由も自殺である。記事で長兄を元夫としているのは、妻が再審をめざして仮出獄を拒否し、1990年7月17日の刑期満了まで服役した後に、1990年7月23日に協議離婚していることによる。

事件から、身内が次々と亡くなってしまう。横溝正史の小説でもここまで死ぬかという話であるが、小説ではなく鹿児島県で起きな現実の事件である。問題を複雑にしているのは、被告人の三名に障害があったことである。長兄には交通事故の後遺症で知的能力が低く、ほかの二人には知的障害があった。障害のある三名の供述により、犯行を否認する長兄の妻が主犯とされた。
長兄の妻というが記事の女性である。

長兄の妻は再審請求をする。再審請求の理由として、事故死の疑いがあること、長兄が服役後、妻に、「警察の取り調べが厳しくて、『アヤ子がやったと言え』と言われたからうそをついてしまった」と告白たことがある。再審請求をしてから7年後の2002年3月、鹿児島地裁は再審開始を決定した。しかし、検察の即時抗告を受けた福岡高裁宮崎支部は2004年、鹿児島地裁の再審開始決定を破棄する。しかも、一回の事実審理もしていないで。棄却理由は、事故死に関しては、推測に過ぎないと判断した。加えて、「判決が確定して動かないものとなった事実関係を事後になって、それ自体としては証拠価値の乏しい新証拠を提出することにより安易に動揺させることになるのであり、確定判決の安定を損ない、ひいては三審制を事実上崩すことに連なるものである」としている。三回も裁判をして決まったことだから、今更ガタガタ言うなということである。ガタガタなどと世俗の垢にまみれた表現は使わないのだが、再審請求という制度を否定する言葉になっている。そして、最高裁も棄却している。
地裁判決において、被害者が郵便局の簡易保険を妻を受取人として掛けていたことを動機としていたが、再三の勧誘にいやいや加入したことが分かり外されている。殺人の凶器とされた西洋タオルは発見されていない。三人の容疑者に対する取り調べが適切に行われたかも疑問を持たれる。知的障害がある容疑者の証言で、他の容疑者を起訴しようとするのだから、慎重な取り調べが求められる。その一方で、警察は犯行の流れを度々修正しているから、矛盾が生じやすい事案になっている。検察が証拠と提出していないもののなかに、犯行動機と矛盾する証言や証拠があっても不思議には思わないが、具体的に示されなければ証拠を提出することはない。警察や検察とはそういう仕事をするところである。

取り調べ時に、警察から長兄の妻は、反省したら仮釈放で早く刑務所を出られるという誘いを受けたと言う。反省して自供したという扱いと考えて良い長兄と次兄が、懲役8年と懲役7年だから、警察の取引に応じてもさしたる効果がないようだ。甥の懲役1年にも執行猶予がついていないし、判決が微妙に軽い印象の一方で、微妙に重い印象も受ける不思議なものになっている。
計画的に殺害したのなら、酒乱の程度により情状酌量ということになるが、酒乱で被害を受けていた事実が示されていないので分からない。これがあればもっと軽くなる気がする。甥について言えば、母親がいるのだから執行猶予で良いと思う。死体遺棄は3年以下の懲役である。父親と協同しての作業であることなどを考慮した判決であったのだろうが、資料が見付からなかったので分からない。なお、甥の母親は、次兄の妻でもある。夫を1987年に、子を2001年に自殺で失っている。悲劇である。

1975年の話である。イニシエの時代の警察が取り調べをした訳でもない。しかし、本当の問題は、裁判所の方ではないかと感じる。先輩判事の判決を翻すのに抵抗を覚えるという心情は理解できないではないが、それが仕事だから放棄するなら弁護士にでも転身すれば良いだけの話である。
事件がどうなのかを明らかにする努力はするものだろう。一連の作業すべてが雑である。雑で良い仕事などどこにもない。雑でない仕事をするのがプロである。


警察も証拠を提示すれば良い。それが権力というものだ。

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