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2015年6月29日 (月)

野菜工場で有名な「みらい」が民事再生法申請 販売不振で資金ショート

野菜生産ベンチャーの「みらい」(東京都中央区)が6月29日、東京地裁に民事再生法の適用を申請、経営破綻した。信用調査会社の帝国データバンクによると、負債は約10億9200万円。
2004年9月の設立。創業者で代表取締役の嶋村茂治氏が工場での植物栽培を企業化。いわゆる「野菜工場」の確立と、野菜の生産・販売を進めた。「ガイアの夜明け」などのテレビ番組のほか、新聞、雑誌などで広く取り上げられた。今年3月期は売上高10億円をあげた。しかし昨年建設した2工場の費用がかさんだうえ、野菜生産が不調となり、今月、資金ショート。収支も赤字となった。担当弁護士によると、7月1日に債権者集会を行うほかは具体的な活動は決まっていないが、スポンサー企業探しを進めていく。(SankeiBiz:6月29日)


野菜工場について考える。


天候に左右されずに無農薬で栄養価の高い野菜を栽培できるというのが、野菜工場の売りである。それにも関わらず野菜生産が不調となって資金がショートしたという。野菜工場を事業として経営するのは難しいのだろうが、なんとも不思議な話になっている。この会社について確認していく。
みらいという会社 (ややこしいので、みらい社と以下書く) の代表は嶋村茂治である。1971年生まれで、千葉大学大学院自然科学研究科博士前期過程において蔬菜園芸学を専攻し1999年に修了している。民間企業の研究員を経て2004年9月に株式会社みらいを設立し、代表取締役になっている。大学修了の年数が少し遅い気がするが、33歳で起業するのはそんなものかもしれない。
2014年6月にみらい社と三井不動産は、国内最大級の植物工場「柏の葉 第2グリーンルーム」を本格稼働したことを発表している。「柏の葉スマートシティ」プロジェクトにおける工場の延べ床面積は 1,260m2 (敷地面積 2,986m2) だという。この面積を大きいというのは、住宅開発の不動産屋の感覚である。1反を超える程度の面積では、農地としては大きくない。
少し話が逸れるが、土地の面積を坪で表現するテレビ番組をよく見掛ける。坪というのは、住宅に用いられているが、現在の計量法で認められている長さの単位はメートルなので、平方メートルに準じた単位が求められる。具体的にはアール (100m2)、ヘクタール (10,000m2) となる。坪というのは尺貫法の単位である。尺貫法での表現が慣習として成立している領域まで、メートル表記を押し付ける必要は乏しいと思うが、公的な書類はメートル表記でなければならない。さて、農地の話である。農地においては面積が住宅と異なり広いことから、30坪を1畝、その10畝と1反、10反と1町と呼ぶ。1町と1haが近く(0.99174 ha) から、売買に関わる話でなければ、言葉を置き換えるだけで済んだ。何が言いたいかというと、国際標準の単位でもなく、過去に慣習として用いられてもいない坪表記を、農地などに用いて放送する無神経さを許し難いと感じるということである。背の高い芸能人に、六尺豊かな大男 (約182cm以上の意味) と称しても伝わるまい。国際標準という文明、あるいは、この国で用いられてきた伝統的な文化に対する敬意も感じられない。分からないのなら、学校で学んだ単位を用いれば良い。坪を教える学校は限られている。
話を戻す。工場内で効率良く栽培するのが目的だから、むやみに面積を拡大する必要はない。栽培するのはレタス、グリーンリーフ、ロメインレタス、フリルレタスを含む15種類以上の野菜であり、1日につき約1万株生産・出荷する計画であることを発表していた。この時の年間売上高は3億円とされていた。1株単位での出荷で、価格は小売で200円、出荷価格で100円程度を想定していた。このプロジェクトに三井不動産は、三井ホームが建築した木造建物と土地に約6億円を投資している。三井不動産が所有する建物をみらい社が借用するという形式であるという。2015年3月期のみらい社の売上高は約10億円であるそうだ。事情に不透明な印象が残る。

倒れた事業であるので問題があるのだが、事業を発表した約1年前の資料から特徴を引用する。

■ 柏の葉スマートシティ植物工場「柏の葉 第2グリーンルーム」の主な特徴
  • 外気を遮断した環境で農薬を使わずに野菜を栽培し、1年中安定的に提供することが可能。
  • 多段の栽培ベッドを使用することで、狭い空間で効率よく野菜を生産・収穫。
  • 独自の栽培ソフトにより苦みが少なく栄養価の高い野菜を生産。
  • 新型のスタンディング型のパッケージ採用による、清潔感の向上と鮮度保持期間の長期化。
  • 気密性、断熱性が高く、大空間を実現した木造工法により、安全性と生産性を向上。


野菜工場によって時期を問わず安定的に供給可能であることが売りで、効率の話は従来露地物の2~5倍高いとされた価格を下げることが可能という説明に過ぎない。露地物の最も安い時期に出荷すれば、従来比で2倍程度生産性を改善しても価格は同等に過ぎない。つまり、顧客を見ないで、同業者との競争に価値を見出しているのがここから見えてくる。多段にしたことで、面積当たりの収量が増加可能というのもこの列の話である。
野菜に限らないが、良い物なら高く売れるというのは間違いである。特殊な品質の物を求める顧客があって、それに対応する会社がないような場合においてのみ、価格は上がる可能性がある。他に価格が上がるのは、市場に商品が不足した場合である。不足したことが理由であったときの価格上昇は3倍までと思えば良い。需給バランスで価格が決定されるという教科書の話は、商売を継続するという事情を無視している。明日も明後日も商売を続けるなら、通常価格の3倍が限度である。10倍で売ると言うのは、表に出さずに仕入れる予約販売か、明日のことなど気にしない商売人にしか成立しない。つまり、野菜工場は現状3倍のリミットに近い価格になるから、それが許容されるのは、露地物がまったくない時期となる。それ以外の時期は、特に求められた顧客への販売を実現しなければならない。
季節とは無関係に出荷可能であることが売りの一つだから、季節限定の商売は成立しない。季節ごとに野菜の種類を変更すれば良いが、例示された野菜はレタスの仲間ばかりである。レタスが選ばれるのは、葉物野菜の中で、傷んだ葉の処理などの手間が少ないからだろう。小松菜やほうれん草では人手が掛る。結球するキャベツや白菜なら重量が稼げるが、結球するとなると多段での栽培に制限が加わるだろう。そもそも結球する条件を満たすのが難しい。
レタスの結球しない物が野菜工場に最適で、これが採算に合えば次は結球するレタスというのが手番になる。レタスが好まれる理由は、農薬を使わなくて済むからである。キャベツや白菜だとそうはいかない。つまり、無農薬というのは、無農薬であることを目的にしているのではなく、経済的に農薬を使用したくないという方が本音である。もしかすると、農薬が必要なような植物の栽培は、全滅の危険性が高く不適という判断が現時点であるかもしれない。
予約販売のような方式にしか活路は見出せそうにない。つまり、高級レストランへの納入を季節を問わず実施することである。こういうルートでの販売は、他では置き換え不能であることが前提条件になる。農薬を使わないを喜ぶのは、そんな思想の個人と趣味性の高い仕事をしている人達である。市場から野菜を買っていて完全無農薬というのは不可能で、完全無農薬を契約農家から購入すればメニューに制限が加わる。そもそも、完全無農薬を喜ぶ顧客が、野菜工場産を歓迎するとはとても思えない。農薬が安全な範囲で用いられている前提が保たれれば、農薬使用の可否より優先すべきは、上手いか不味いかに尽きる。この点に触れられてない計画であった。

支援者は現れない可能性が高いだろう。支援者ではなく、新たな運営者という方が実際的な筈だ。代表取締役の嶋村茂治は、高校時代に『新ビジネス革命』(大川隆法著・1988年刊)を読み、その中で「畑ではなく、工場で野菜をつくる時代になる」という未来社会の予言を読んで、「決めた! これをかなえよう」と決意したという。他人の信仰 (信念かもしれない) にとやかく言うつもりはないが、20年掛けて積み上げてきたものがあまりに乏しい。だから、たった一年で崩壊してしまっている。
2013年4月には、宮城県多賀城市のみやぎ復興パークに、日本GEと協同して行った同種の事業の成果 (2012年4月~2013年3月) を発表している。無関係だが、この時は本社は八王子市だった。千葉大学大学院園芸学研究科丸尾達准教授の名前も出てくる。こっちのその後は分からない。


大きな会社に出資させるのがお上手のようなので、他の方面で活躍されそうではある。

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