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2015年3月25日 (水)

EPA看護師の合格率低下 14年度7.3%に、厚労省

厚生労働省は3月25日、2014年度の看護師国家試験で、経済連携協定(EPA)で来日した外国人候補者の合格率が7.3%だったと発表した。前年度より3.3ポイント下がり、低迷ぶりが目立つ。日本人を含めた全体の合格率(90.0%)との開きが大きい。外国人候補者にとっては、日本語の専門用語などが障害になっているとみられる。
外国人候補者ではこれまでのインドネシア人やフィリピン人のほかに、14年度から受け入れを始めたベトナム人が初めて受験した。計357人の受験者中、合格したのは26人で、ベトナム人も1人含まれる。日本人を含む全体では、受験者6万947人のうち5万4871人が合格し、合格率は0.4ポイント上昇した。
看護師の国家試験では、日本語を母語としない外国人向けに、試験時間の延長や問題文の漢字に振り仮名をつける特例措置を設けている。今年度合格率が下がったことに対して、厚労省は「結果を分析し、新たな外国人支援策が必要であれば検討したい」としている。(日本経済新聞:3月25日)


看護師国家試験について考える。


外国人の受験者の合格率の議論より前に、日本人の合格者の状況を確認しよう看護師国家試験の受験者数と合格者数、合格率の推移を下に示す。

■ 看護師国家試験合格率推移
   実施回     実施年      受験者数   合格者数  合格率(%)
  第103回    2014年2月     58,891    52,900    89.8
  第102回    2013年2月     56,530    50,224    88.8
  第101回    2012年2月     53,702    48,400    90.1
  第100回    2011年2月     5,4138    49,688    91,8
  第 99回    2010年2月     52,883    47,340    89,5
  第 98回    2009年2月     50,906    45,784    89.9
  第 97回    2008年2月     51,313    46,342    90.3
  第 96回    2007年2月     50,766    46,000    90.6
  第 95回    2006年2月     48,914    43,211    88.3
  第 94回    2005年2月     48,299    44,137    91.4
  第 93回    2004年2月     49,204    44,874    91.2
  第 92回    2003年2月     53,680    49,714    92.6
  第 91回    2002年2月     53,187    44,820    84.3
  第 90回    2001年2月     48,332    40,625    84.1
  第 89回    2000年2月     48,568    46,817    96.4
  第 88回    1999年2月     55,404    53,821    97.1
  第 87回    1998年2月     53,052    44,364    83.6
  第 86回    1997年2月     49,774    43,317    87.0
  第 85回    1996年2月     45,600    40,927    89.8
  第 84回    1995年2月     42,532    40,822    96.0
  第 83回    1994年2月     40,445    40,004    98.9

最新の結果は反映していない。例年、4-5万人が受験して九割が合格するという試験のようである。26/357 という外国人受験者の合格率は悪いと言って良いだろう。不合格になる理由が、医療関係の知識不足であるのなら致し方ないというか、当然の結果であるとして良いのだろう。しかし、語学の問題、特に専門用語を日本語で理解し得るかが問題であるのなら、別の配慮が必要になる。専門用語は英語でも良いような気もする。日本語の習得が日本で患者に接する際に重要であるという考えは賛成するにしても、それを強調するならEPAで外国人看護師を受け入れようとすること自体が否定される。もう少し分析して、必要な対策を施さねばならないだろう。ということで、試験合格にどの程度のレベルが要求されているのかを確認する。看護師国家試験の合格最低点をまとめた結果が下である。

■ 看護師国家試験の合格最低点
   実施回     実施年       必修問題    一般問題状況設定問題
  第103回    2014年2月     40/50      167/250 (66.8%)
  第102回    2013年2月     40/50      160/250 (64.1%)
  第101回    2012年2月     40/50      157/247 (63.5%)
  第100回    2011年2月     40/50      163/250 (65.2%)
  第 99回    2010年2月     40/50      151/250 (60.4%)
  第 98回    2009年2月     24/30      174/250 (64.4%)
  第 97回    2008年2月     24/30      180/270 (66.6%)
  第 96回    2007年2月     24/30      194/269 (72.4%)
  第 95回    2006年2月     23/29      176/269 (65.4%)
  第 94回    2005年2月     24/30      165/269 (61.3%)
  第 93回    2004年2月     24/30      162/270 (60.0%)
  第 92回    2003年2月      ―        162/270 (60.0%)
  第 91回    2002年2月      ―        137/261 (52.5%)

必修問題と、一般問題状況設定問題に分かれている。必修問題とは看護師として特に重要な基本事項を問う問題で、試験はマークシート方式で、四つの中から正解を選ぶというのが代表的な問題のようだ。こちらは八割以上正解しないと不合格になるという基準が守られている。一般問題状況設定問題は、合格基準が年により変動していて、60~70% の正解率が求められるようだ。午前と午後に試験があるが、いぜれも最初の25問が必修問題に設定されている。最初というのは、試験を受けた訳では無いので、イメージに過ぎない。
過去問題を解いてみた。常識的な問題だと思うが、正しく勉強しておかないと間違えることはあるだろう。専門用語の一部に英語表記が併記されていたが、これはもう少し拡大しても良さそうに思えた。医療行為に関して、看護師は医師の指示によって仕事をすることになるから、専門用語が英語であってもそれほどの問題はないだろう。患者に接する部分は日本語である必要も出てくるのだろうが、カタカナの言葉も使われてるのだから、これが日本人の患者に最適かというのには疑問がある。少なくとも、インフォームド・コンセントは、informed consent の併記で良かろうと思った。

看護師の海外からの受け入れを検討するのは、看護師が不足しているのかと思って、看護師の就業状況を確認した。少し古いが、厚生労働省の調べを下に示す。

■ 看護職員就業場所別就業者数 (2013年:厚生労働省医政局看護課調べ)
     就業場所          人数       割合
  病院               927,289       62%
  診療所              309,954       21%
  助産所               2,004        0%
  訪問看護ステーション      30,903        2%
  介護施設等           143,009       10%
  学校等              28,044        2%
  その他              10,805        1%
  保健所               8,393        0%
  市町村              35,171        2%
  合計              1,495,572
       ※ 看護職員とは保健師、助産師、看護師、准看護師の総称

色々な資格が合計されている。保健師、助産師、看護師は国家試験による国家資格である。准看護師だけは、知事資格である准看護師の免許を取得するための知事試験である。准看護師は都道府県による差があるとの記述が見られるが、正確なところは分からない。この試験は、2003年に厚生労働省より准看護試験基準が告示され、各地区ごとにブロック化されている。2015年2月の国家試験の合格率を下に示す。

■ 2015年2月実施の各試験の受験者数、合格者数、合格率
    資格      受験者数       合格者数     合格率
  保健師     16,622      16,517     99.4%
  助産師      2,037        2,034     99.9%
  看護師     60,947      54,871     90.0%

合格率が高いのは例年と異なっているのでここでは触れない。保健師は看護師の1/4程度ではあるものの結構な人数である。そんな事情が分かったことから、上記の就業状況で示される150万人の内、看護師・准看護師の合計が100万人と考えよう。試験合格者が毎年4万人いるとすると、25年分で埋まってしまう。つまり、20歳で資格取得してすべてが継続して就業しているとすると、45歳まででカバーされるということである。もちろん、出産や育児で就業が継続出来ない事情があることも多いだろう。もし、このことが主たる要因であるのなら、看護師が不足しているというより、看護師の労働環境の方に問題があるような気もしてくる。もしかしてら、以前は国家試験の受験者が少なかった可能性もあると思って、厚生労働省の資料から確認してみた。結果を下に示す。医師数も同じ資料にあったので示す。

■ 就業している看護師・准看護師数推移 (厚生労働省)Nurse
■ 医師数推移 (厚生労働省)Doct_2
1980年代前半で、看護師と准看護師の合計が60万人で、医師が15万人である。それが最近では、看護師と准看護師の合計が120万人で、医師は30万人近くになっている。医学部の新設や定員増の効果がこの頃から出ているようだ。医学部の定員は1万人と思って良いから、それ以前の定員から増加した分が累積されていることになる。まだ、この期間の医師が引退する時期でもないからもう暫く増加は続くことになる。
看護師の方は、准看護師制度の見直しの影響が出ている。神奈川県のように准看護師養成学校の廃止をしたといったものである。そもそも准看護師制度は、戦後の看護師不足の対策として始まった制度である。制度が始まった1951年当時の女性の高校進学率は1/3を超える程度である。(准看護師は中学卒業で受験可能) 現在の高校進学率は九割を超えて久しく、看護師の養成学校も、短大・専門学校から四大へのシフトが進んでいる。
廃止を訴える団体の一つに、日本看護協会がある。保健師・助産師・看護師・准看護師の看護職能団体である。2013年の会員数は約68万人で、看護職の組織率は約5割と言われる。廃止の理由としては、医療の質の向上としている。廃止に反対している団体に、日本医師会がある。こちらは准看護師制度の創設の関係者でもあるのだから当然である。
日本看護協会の本音は、看護関係者の地位向上であろう。地位と収入は連動する。専門看護師、認定看護師といった上昇方向の資格は好ましいが、中卒で受けて知事認定では困るということだろう。一方の日本医師会は、国家資格に一級二級のあるものがあるのだから、看護師もこれに準じた考えで良いとしている。二級でも国家資格だが、准看護師は国家資格でもない。安い労働力として、准看護師を使っていると言われたくないなら、国家資格への移行を提案するのが日本医師会の役割だろう。
准看護師の職場は、病院から老人施設などに移っているようだ。制度の変更には既得権者をどう守るかという視点が必要になる。准看護師からすれば、日本看護協会は冷たいと感じるだろう。日本医師会も発展的な提案がなければ、医師側の都合と思われるだけだ。どっちもどっちだが、介護関係の資格である介護福祉士を取得しようとしても、看護師の経験は活かされない。仕事が違うからといえばそれまでだが、複雑怪奇な資格が乱立して世の中が良くなるという流れになるとは思えない。


役所の権益拡大に関連しているようでは世の中には役に立たない。

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