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2015年2月 9日 (月)

週刊新潮の実名報道「少年法違反」 愛知県弁護士会声明

名古屋市のアパートで女性(77)が殺害された事件で、「週刊新潮」(5日発売)が殺人容疑で逮捕された大学1年の女子学生(19)の実名と顔写真を掲載したことについて、愛知県弁護士会は「少年本人とわかる報道を禁じた少年法61条に明らかに違反する。厳重に抗議する」との声明を2月6日付で出した。声明は「少年の社会との関係を断ち切り、更生を妨げかねない。メディアによる私的制裁だ」と指摘している。同様の声明は日本弁護士連合会も5日に出している。
週刊新潮編集部は「事件の残虐性と重大性に鑑み、19歳という加害者の年齢なども総合的に勘案したうえ、顔写真と実名を報道しました」としている。(朝日新聞:2月9日)


実名報道について考える。


少年法に守られて良いのかという議論は昔からある。犯罪加害者の人権が過度に守られるように配慮されるのは間違っているという主張である。この事情は理解する。一方で、少年の更生を妨げる要素を排除しようとするのことに合理性はあると思う。その意味で弁護士会の主張ももっともなことだと思う。少年法 第六十一条を確認する。

■ 少年法 第六十一条
家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

今回の容疑者が、まだ警察での取り調べをしている最中であって、家庭裁判所に送られていないから非該当だという幼い主張は無視して良い。公訴されない可能性もある中で、実名報道を支持する理由もない。そもそも、この少年が心神喪失なり心神耗弱なりである可能性は高くかるだろうから、その実態を確認できない段階で判断するというのは間違っている。と、答を示してしまった。実名報道はおかしな事案だと考える。
この少年の高校時代の非行が適切に処理されていないことが重大な犯罪に至ったという考え方なら支持して良い。しかし、これとて高校名などを明らかにしないでも出来る話である。容疑者の氏名、大学、出身高校を明らかにして得られる利益というのは何なのだろうか。容疑者の実態を明らかにすることにより犯罪の再発対策を考える資料になるであろうことはあるだろう。一方で、少年の更生に妨げになるというのもあると思う。
もう少し踏み込んで考えてみよう。本人の氏名や写真を公表することに、社会的にどんな価値があるのだろうか。少年法で守られる必要はないと主張する意見を読むと、社会的な制裁を加えることが必要と思っているように感じる。本人が明らかになれば、少年の親や兄弟も特定されることになる。広く考えれば親戚も含まれるだろう。この人たちにも社会的な制裁を加えることになる。つまり主張の考え方は、犯罪を犯した者は市中引き回しにして公表し、その近親者にも連帯して責任を負わせるということになる。江戸時代の様な主張であるが、江戸時代でも市中引き回しは単独で構成されるものではなく、死罪に付加される刑である。週刊新潮は、現代における市中引き回しの刑を担うつもりがあるか、あるいは提案をしているという理解で良いのだろうか。
容疑者の少年の親については保護者としての責任があると主張しても良かろうが、兄弟について同じく裁かれねばならないというのには少々無理がある。妹がいるとする報道があるようだが、この妹が姉の氏名が公表されたことで不利益が生じたとして、新潮社を訴えるということで勝訴する可能性はどのくらいあるのだろうか。

週刊新潮が実名報道した背景にあるのは、2000年2月29日の大阪高等裁判所において、損害賠償を認めた一審判決をくつがえし、記事の掲載は少年の権利を侵害したことにはならないと判断したことによっていると考えられる。この裁判は、「ルポルタージュ『幼稚園児』虐殺犯人の起臥」として、新潮45に少年の実名・顔写真入りで少年の日常生活や非行歴等を詳しく書いた記事が、少年法61条に違反していることを根拠に少年のプライバシー権、氏名肖像権、名誉権等の人格権ないし実名で報道されない権利が侵害されたとしたものである。判決で裁判所は、少年法61条を守るかどうかは社会の自主性に任されている、つまり裁判所は関知しない、という解釈を示した。少年法61条が掲載について配慮しなければならないという表現ではなく、掲載してはならないという表現を採用しているのだから、法律に拘束されずに判決を下さすという大胆な行動に見える。裁判所はこの手の話に関わりたくないから、雑誌社がこの程度の社会的に制裁を加えることは許されるということなのだろうか。ついでに、この判決に関係した裁判官の大阪高裁以降の経歴を示す。

■ 大阪高等裁判所民事第9部の判決に関係した裁判官
  裁判長裁判官
   根本眞
     大阪高裁 (部統括) 1999.4.8 - 2003.3.30
     東京高裁 (部統括) 2003.3.31 - 2005.12.22
     依願退官 2005.12.23

  裁判官
   鎌田義勝
     大阪高裁 1998.7.31 - 2004.6.29
     依願退官 2004.6.30

  裁判官
   島田清次郎
     大阪高裁  1999.4.1 - 2000.5.14
     神戸地裁  2000.5.15 - 2001.3.11
     神戸地裁姫路支部 (支部長)、神戸家裁姫路支部 (支部長) 2001.3.12 - 2004.5.20
     松江地裁 (所長)、松江家裁 (所長) 2004.5.21 - 2005.8.21
     大阪高裁 (部統括) 2005.8.22 - 2009.3.31
     任期終了退官 2009.4.1


退官後については確認しきれなかったが、鎌田義勝は2013年春に瑞宝中綬章を受賞している。中央大学の出身であるそうだ。大阪弁護士会登録で鎌田法律事務所を開いている人物も同一かもしれない。他の二名は不明である。

話しが逸れてしまった。裁判で被害者を保護することが重要である場合において、情報が伏せられる場合がある。被害者特定事項という。これは、被疑者の氏名から被害者が特定される二次被害を防ぐのを理由として、被害者の実名や犯行時期だけでなく、被疑者の実名を秘匿して裁判が開かれることである。多くは性犯罪に関係するものであることが多いようだ。
個人情報を公表するのは、次の犯罪の予防目的でなければそれ程の価値は見出せそうにない。被害者関係者の恨みをはらすというのは心情的に理解できても、これが法律の規定として正しいとするには首を傾げるよりない。

公表する時期でも内容でもないものを、話題作りによって雑誌を売ろうという商業主義は批判されてよい。ネットでは公知の事実になっているからというのは、公表の合理性にはならない。ネットを見ない層が雑誌の顧客であるというなら現在は商売になるだろう。しかし、遠くない将来商売に繋がらなくなる。それだけ週刊誌の経営は苦しいということか。週刊新潮の訴訟費用は結構大きくなっていると思うが、収支はあうのだろうか。そっちの方が公表する価値がありそうである。価値はないと否定されても、関心のある人は多いだろう。


国会は通らないだろうが、市中引き回しの刑は結構受け入れられるかもしれない。嫌な世の中だ。

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