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2015年1月14日 (水)

保育士不足に対応 試験を年2回に倍増

厚生労働省は1月14日、待機児童解消に向けて保育士を増やすための計画を公表した。保育の受け皿の拡大で2017年度末には約6万9千人の保育士が不足すると推計。いま年1回の保育士試験を年2回実施して受験しやすくするなどの対策を盛り込んだ。
厚労省は、17年度までの5年間で40万人分の保育の受け皿を確保する「待機児童解消加速化プラン」を進めている。自治体の保育整備計画などを元にした推計では13年度時点で全国に約37万8千人の保育士が勤務している。17年度末には約39万8千人まで増えるが、保育定員に対しては6万9千人が足りなくなる見通しという。
計画では、保育士試験の回数を年2回に増やして実施する都道府県に、問題作成費など実施費用の一部を補助することにした。16年度からの実施を目指す。また保育士を養成する大学などへの就職支援補助や、資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」に仕事をあっせんする自治体の「保育士・保育所支援センター」への補助も盛り込んだ。ともに15年度から実施する予定で、事業費65億円が新年度予算案に盛り込まれた。(朝日新聞:1月14日)


保育士について考える。


待機児童が多くいるのは保育士が不足しているからで、不足しているのは資格を得るのが大変だからで、資格を取得する機会を増やすのが対策になるという論理である。これは破綻しているような気もするし、それはそれで正しいという考え方もありそうなので、状況の確認からすることにしよう。
厚生労働省2014年4月1日時点での保育所の定員数や待機児童の状況を取りまとめている。

■ 保育所定員・保育所利用児童数・保育所数・待機児童数推移 (保育所数以外は単位 千人)
   年         2014    2013    2012    2011   2010    2009   2008    2007    2006
保育所定員数    2,336   2,289   2,240   2,204   2,158   2,132   2,121   2,105   2,079
保育所利用児童数 2,267   2,220   2,177   2,123   2,080   2,041   2,022   2,015   2,004
保育所数       24,425   24,038  23,711   23,385   23,069  22,925  22,909  22,848   22,699
待機児童数     21,371   22,741  24,825   25,556   26,275  25,384  19,550  17,926   19,794

少子化が政治問題化して、保育所数を増やし、その結果として保育所定員数は増加しているのだから、待機児童数は減少することになる。その通りの結果になっている。それでも待機児童がいるから対策の必要があるというのは理解できるし、そもそも待機児童数の定義がいかなるものかという話もある。入所保留児童が存在していて実態を表していないという考え方もある。一年に生まれる子供の人数を百万人として、これを母数に利用児童数と比較しようと思ったが、複数年になるので分からなくなってしまった。それではと幼稚園の人数を参照してみることにした。推移を下に示す。

■ 幼稚園児数推移 (文部科学省:幼稚園教育の現状より)
     年        2013      2012     2011      2010      2009
  幼稚園児3歳    440,512    442,508    443,750    435,457    415,991
  幼稚園児4歳    554,321    566,985    570,750    559,513    584,228
  幼稚園児5歳    588,777    594,732    581,670    610,942    630,117
    合計       1,583,610  1,604,225   1,596,170   1,605,912   1,630,336

学年分けされていたデータを用いた。2014年のデータは公開されていないので、近年の推移としている。1学年で60万人前後というところである。こちらの方は少子化の影響が表れていそうである。これから想像するに、保育所の利用者は学年当り40万人を超える水準にあると思って良いようである。乳児と5歳児では定員が違うだろうから単純ではない。乳児を預ける環境にある人とそうでない人という事情も出てきそうで、それを言ったらどれも事情にはなるのだが、それを考えないで待機児童数を減少させるという成果には結びつきようがない。

ところで、保育所と幼稚園の違いを確認する。保育所は乳児から小学校就学(0歳~6歳)までの幼児を保育するところで、厚生労働省の管轄である。一方幼稚園は、対象が3歳~就学前で、こちらは文部科学省の管轄となる。保育園は学校ではなく児童福祉施設であり、幼稚園は教育施設となる。当然、必要な資格も異なり、保育所が保育士で、幼稚園が幼稚園教諭となる。
保育士は1999年の児童福祉法改正前まで、保母資格という名称であった。もっとさかのぼると男性の保母資格受験が認められたのは1977年以降である。名称変更は男女雇用機会均等法の流れだが、受験資格の制限については看護師の場合とは事情が異なる。受験資格などは例外規定で運用することで実質的に問題は出ない話に思うが、意識下にある差別を当然のことにしないと言う意味で、もう少し先の将来を考えれば名称を含めて変更することに価値はあるのかも知れない。まあ、それだけで済む話でもないのは当然のことではあるが。
幼稚園教諭の方は、教職課程がある大学や短期大学等で必要単位を修得し、卒業と同時に取得するというのが一般的である。文部科学省が大学を所管しているのだから、これ以外のルートを標準にはしないことは理解できる。保育士の方はというと、指定養成施設として認可されている学校で学ばなくても受験資格を得る方法がある。今回の厚生労働省の発表はこの受験機会を増やして増員しようという動きである。
結婚や出産によって保育士をやめた人 (女性を前提にしているが、差別ではなくマジョリティーを意識していると理解されたい) が職場復帰する方法を考えた方が良いように感じる。保育士に戻らない理由というのも調査されていて、

  ・ 賃金が安い
  ・ 時間外労働が多い
  ・ 保育士不足による労働負担が大きい

ということが理由になっている。加えて独身時代に保育士として勤務していた経験から、

  ・ 保育士としてやっていく自信がない
  ・ 時代が変わっているから、自分のやっていた方法が通用しない
  ・ 融通がきかない勤務先だということが分かった
  ・ 女の職場として辛い目に遇った

という話に展開される。もっとも単純で効果的な対策は、給与を二倍にすることであろう。賃金が高ければ不満は表に出ず我慢する。もちろん、我慢ならない人もいるだろうが、出来る人が一定数確保できれば効果がある。上の経験などすっ飛んでしまうだろう。逆に、給与を半分にしたら、志を高く持って業務に従事している人でも不満が出る。賃金を得る仕事というのは、その人の生活と切り離せないものだから、きれいごとで表面をなぞってみても効果がある対策にはならないものである。
公明党は軽減税率などに力をいれないで、消費税を児童の保育、教育の充実に充てると言えば良い。軽減税率など考えずに、必需品には高い税率を設定した方が良かろうと思う。必需品に対する使用量に差が出ないのなら、水や電気や食糧に余分に金を出すのは贅沢だと考える理屈は成立する。ということは、軽減などせず一律で済ませるのが合理的である。小さな例外対策を全国の店舗の実務に展開するという発想が理解できない。そんなことより、働きやすい環境を整備するから、いっぱい働こうとする方向性の方が全体として利益が大きいだろう。
受験機会を増やしても、なりたい人が少なければ効果が上がらない。受験資格や試験を易しくすることは別のところに害が出る。賃金を著しく上げるのは出来ない話だろうが、人員を増やすとか施設環境の改善とかは出来ない話ではない。むしろ、これを取り組むべき課題とするのが本当のように思う。


職場復帰の道筋を描くのが対策の本道である。

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