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2014年12月 4日 (木)

奈良の発砲2警官無罪確定へ 男性死亡の付審判

逃走車両への発砲で男性を死亡させたとして殺人と特別公務員暴行陵虐致死の罪に問われ一、二審で無罪となった奈良県警の警察官2人について、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は12月4日までに検察官役の指定弁護士の上告を棄却する決定をした。無罪が確定する。決定は2日付。
事件は2003年に発生した。奈良地検がいったん不起訴としたが、遺族の付審判請求が奈良地裁に認められ、付審判では初めて裁判員裁判で審理された。遺族は県などに約1億円の損害賠償を求める民事訴訟も起こしたが、最高裁で「発砲は適法」と判断され敗訴が確定している。(共同:12月4日)


少し古い事件の話について考える。


事件について振り返る。奈良県大和郡山市で2003年9月10日に、建設会社の作業員の高壮日(28歳)は午前7時前に工事現場へと向かうが、午前10時半頃に雨天により仕事が中止になり帰宅した。午前11時頃友人の青山悟(26歳)と落ち合い、青山が運転する乗用車で出掛けた。午後1時頃天理市にあるパチンコ店の駐車場で、車上荒らしにより現金3万円とクレジットカードなどを盗み出した。(主従関係は後で記す) 午後4時半頃、橿原市のパチンコ店の駐車場でも同様に駐車していた車を物色し、現金約10万円の窃盗を行う。5時過ぎ、パチンコを終えて駐車場に戻って来た男性が、自分の車が荒らされていることに気付き、110番通報し、走り去った車のナンバーと車種、色などを伝える。大和郡山市内の交差点まで約20キロメートル、およそ1時間半にわたり逃走した。途中、パトカーに挟まれ、いったん停止するも、職務質問の為にパトカーを降りてきた警察官を振り切って逃げるなどしている。
ここまでの流れは警察と容疑者側とで対立はないようだ。この後は警察側の主張に従ってまとめる。
午後6時40分頃、パトカーが逃げる車両を取り囲むに至ったものの、逃走を諦めずに車両を動かしパトカーか一般車両に衝突、接触した。警察官たちはパトカーを降りて逃走車両を取り囲んだ。警棒でボンネットを叩きながら、停止とドアを開けることを求めたが応じなかった。警棒や警杖によりフロントガラスを叩き割ろうとしたが、叶わなかった。車両のフロントガラス以外にはスモークフィルムが貼られていた。止まらないと撃つぞと警告したが、なお逃げようとして急発進したので、発砲撃ての上司である巡査部長の声に、巡査が5発を発砲した。

 一発目: 運転席ドアガラスから撃ち込み、メーターパネルに当たる。
 二発目: 車両右側(運転席側)のセンターピラーに着弾する。
 三発目: フロントガラスから射入し、助手席(高壮日側)のヘッドレストを貫通する。
 四発目: 車両右側の後部座席の窓ガラスを撃ち、運転席のヘッドレストに命中する。
 五発目: リアガラスを撃ち、助手席のヘッドレストに着弾する。

いずれも容疑者に当たっていない。この後に発砲するのが、今回の付審判決定によって被告人となる、萩原基文巡査部長と東芳弘巡査長である。この二人が三発を放っている。これが二人の容疑者の頭部に命中する。

 六発目: (萩原巡査部長) 弾丸は助手席のドアガラスを貫通し、高壮日の左後頭乳突部に命中する。頭蓋骨内で止まった。
 七発目: (東芳弘巡査長) 高壮日の左頸部に当たり、右頸部に達した。
 八発目: (東芳弘巡査長) 青山悟の頭蓋骨と頭皮の間を貫通し、頭蓋骨を陥没骨折させて、右の首筋あたりで止まった。

二人は直ちに救急車で病院に搬送された。高壮日は、頸部骨折・損傷を負い、大和郡山市内の病院で弾丸摘出手術を受る。その後、奈良県立医科大学付属病院の救命救急センターに転送される。高壮日は、事件から25日目の10月5日朝、低酸素脳症により死亡する。
ここまでが事件発生の流れである。
遺族は事件から約二カ月後の11月13日、発砲を命じた巡査部長、発砲した巡査、萩原巡査部長、東巡査長の四人の警察官に対して、「助手席への発砲は違法」として殺人と特別公務員暴行陵虐罪で、奈良地検に告訴する。しかし、地検は2006年1月11日に不起訴処分とした。これを不服として、1月12日に奈良地裁に付審判請求を提出する。また、2月7日に奈良県と警察官四人を相手に、約1億1800万円の国家賠償請求訴訟を奈良地裁に起こしている。民事の結果のみ示す。

2010年01月27日 : 損害賠償請求を奈良地裁が棄却。
2012年03月16日 : 大阪高裁、一審の損害賠償請求棄却を支持し、控訴棄却。
2013年05月29日 : 最高裁第1小法廷は上告を退ける決定をし、請求を棄却。

ついでだから刑事の結果も示す。

2010年04月14日 : 警察官2人について奈良地裁が付審判を決定。
2012年02月28日 : 奈良地裁(裁判員裁判)が無罪判決(求刑:懲役6年)。
2013年02月01日 : 大阪高裁、一審の無罪判決を支持し、控訴棄却。
2014年12月02日 : 最高裁第3小法廷は控訴棄却。

裁判での争点になるのは、警官が発砲時の状況になる。容疑者が自動車を前後に急発進を繰り返すなどして、公務執行を妨害し、かつ、警官と一般市民が危険な状況にあったことが認められれば、刑事も民事も警察側は負けない。警察側に不利な要件は、警察官が発砲することが極めて少ないことである。威嚇ならあるだろうが、容疑者を狙ったとなると、それだけでニュースになるくらいである。
警察官の行為に行き過ぎが指摘される可能性はあるだろうが、刑事罰を加えられるまでには至らないだろう。これで懲戒処分になると、警察官が委縮するという現場の反対意見は出てくるだろう。
警察官が発砲すると昇進に響くというのは近年薄らいだようだが、問題視することが無くなったというほどの意識改革が進んだ訳でもないだろう。そもそも発砲を処罰する内規があったということでもない。海外に目を移して、スコットランドヤードが拳銃を持たないというのは迷信に近く、小火器類を装備する警官もいるし、重く武装した専門部隊もあるようだ。理想のような治安維持というのは難しい。

話を戻す。青山悟は、2003年10月5日に退院し、窃盗と公務執行妨害そして殺人未遂で逮捕され警察の取調べを受け、窃盗と公務執行妨害で懲役6年が言い渡され服役している。高壮日については、窃盗と殺人未遂で書類送検され、被疑者死亡の不起訴処分となっている。青山悟は、車上荒らしについて高壮日は無関係と主張している。当初警察は年齢関係から、主従関係を推定していたようだ。高壮日は見張り役だったと見て良い。
高壮日の母親の金順得は、「もし警官の家族が乗っていても撃つのか」と拳銃使用に疑問を投げ掛けているが、逃走車両に乗っている容疑者がどんな経歴の者かを特定して、拳銃の使用を決めたということでもあるまい。逃走して危険が行動があったので拳銃を使用したという論理を崩さなければならない。ここまで触れていないが、金順得は在日韓国人一世で1940年代に親に連れらて日本に来ている。高壮日は末っ子で、生まれて間もなく父親が亡くなっているという。日本での生活で、差別を受けて大変であったと思われるが、その話と警察官の拳銃使用と結びつけるには違和感を覚える。警察側に、在日韓国人だから射殺したという状況があったのなら、それは差別行動であるとして批難されるべきことだろうが、この事件にそのような背景は確認できない。また、逆に高壮日に前科があったという話もある(事実確認としては不明)が、これも本質ではない。容疑者に危険な行動があり、一般市民への影響が懸念され、警察官にも危険が及ぶ状態で、拳銃を使用したか否かだけで判断されれば良い話である。
警察の説明に不備は感じられ、事実を隠蔽しようとする印象はあるものの、拳銃使用を問題にするものでもないようだ。隠蔽する動機としては、拳銃使用を問題とする考えが警察幹部において未だ主流であることを想像させる。こっちの方が問題で、明確にしなければならないだろうと思うのである。この手の作業には時間が掛るから、過渡期であると言うのかもしれないが、不文律は分かり難いというのが通例である。明文化するというのが知恵だろう。


拳銃使用ではなく、差別の話になっている。どこか違っていると思う。

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