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2014年11月25日 (火)

6歳未満の脳死2例目 家族が承諾、臓器提供へ

日本臓器移植ネットワークは11月23日、順天堂大病院(東京都文京区)に低酸素脳症で入院中の6歳未満の女児が、臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表した。6歳未満の脳死判定は2010年の改正移植法施行後2例目で、家族は臓器の提供を承諾した。心臓は大阪大病院で10歳未満の男児、肺は京都大病院で10歳未満の男児、肝臓は京都大病院で10代女性、腎臓は東邦大医療センター大森病院で50代男性、もう片方の腎臓は東京女子医大病院で40代女性に24日午後、それぞれ移植される。(共同:11月23日)


移植医療について考える。


臓器提供者である女児の両親は移植ネットを通じ「他の子どもの命を救えれば残された私たちにとって大きな慰め」とするコメントを公表している。この手の医療行為では、諸々非公表扱いになっているので、女児の居住地は明らかにしていない。今回が2例目であるが、1例目は2012年6月に、富山大病院(富山市)に入院していた低酸素脳症の男児が脳死と判定されたものである。
臓器の行き先とその後について確認する。
 

● 心臓    大阪大病院              10歳未満の男児
     心筋の一部が正常に育たない左室心筋緻密化障害
     移植する手術に成功したと発表した。経過が良好なら約3カ月から半年で退院できる。

● 肺     京都大病院              10歳未満の男児
     肺の気道が粘液でふさがれるなどの症状が出る嚢胞(のうほう)性線維症
     移植する手術に成功したと発表した。

● 肝臓    京都大病院              10代女性
     胆汁の流れが悪くなる原発性硬化性胆管炎
     手術に成功したと発表した。

● 腎臓-1  東邦大医療センター大森病院  50代男性
     手術を24日に終了した。

● 腎臓-2  東京女子医大病院         40代女性
     手術を24日に終了した。

手術が成功したことは喜ばしいことである。また、臓器提供を承諾した女児の両親と家族にはお悔やみ申し上げる。

日本臓移植ネットワークが公表している脳死臓器提供296例による移植件数は下のようになっている。

■ 脳死での臓器提供(2014年11月26日更新)
  臓器     移植数   生存数
  心臓      219      204
  肺        235      192
  心肺同時     2        2
  肝臓      253      211
  肝腎同時     3        3
  膵臓        42        41
  膵腎同時   162      154
  腎臓      370      347
  小腸        13        8
  合計     1,299     1,162

ドナー(臓器提供者)が296人いて、臓器提供の数がそれと合致しないのは、腎臓のように二つある臓器がある場合もあるし、無論、ドナーの状態により移植に適さない場合があることによる。米国に比べれば少ないとは言え、脳死移植の実施がまだ記事として扱われるの理由は、2010年に改正された臓器移植法の改正によって子供がドナーになることが可能となったものの、まだ実施例が少ないということによっている。
法律の改正の背景には、海外に子供の移植手術を行う為に行く例があり、多額の費用が生じること、倫理的な問題があることがクローズアップされたことがある。多額の費用については、寄付を求める詐欺も出ているようで別の方面にまで問題が拡大している。
臓器移植の可否を考える前に、移植医療の状況を確認してみる。
脳死肺移植の事例を確認した。国内の実施例は2013年末までで197例ある。『本邦肺移植症例登録報告―2014―』(日本肺および心肺移植研究会)によると、脳死肺移植の5年および10年生存率はそれぞれ73.2%、64.0%である。世界の平均より高い数字となっている。実施例が多い腎臓移植では、5年生存率はが78.6% (生体腎移植では97.3%) である。
『脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 検証のまとめ』によると、脳死臓器提供の生存率は下記のようになっている。

■ 脳死臓器提供による移植結果
       1年生存率  3年生存率  5年生存率
  心臓    97.4%     97.4%     95.4%
  肺      83.8%     78.6%     73.4%
  肝臓    82.9%     80.5%     78.9%
  腎臓    96.2%     93.0%     90.8%
  膵臓    94.9%     94.9%     94.9%
  小腸    82.5%     72.2%     72.2%

小腸については移植を希望する患者数が少なく他の臓器との比較が難しいようだ。肺や肝臓の移植の場合には、5年後に4人に1人は亡くなるという結果になっている。
子供が臓器移植を受けることで普通の生活が送れるというイメージは、部分的には正しいのだろうが全体としては間違った理解だろう。拒絶反応が少ない角膜移植においても、免疫抑制剤を定期的に使う必要 (不要のケースもある) がある。点眼で済む場合もあるが、内服薬が必要とされる場合もある。そして、その薬は高価である。加えて、薬を用いないと拒絶反応で移植片不全になる。HLA型が合致する場合が多い生体移植 (親族に限定されている) の腎移植の成績が良いのはここに関係しているかもしれない。

健康であっても寿命は有限であることからすれば、移植医療の成果は生命の停止を一定期間遅らせることであると言える。だからこの時間が、5年でも10年でも大きな成果だとする主張には同意する。しかし、十代の子供に5年の時間しか与えられないという無力感も同時に覚えるのである。
これを理由に移植医療が無駄だと主張するつもりはない。しかし、医療従事者が気楽に移植の成果を主張するのに違和感を覚える。どんな医療行為を求めるかは患者の側が選択するものである。それに相応しい情報公開になっているのかに疑問を覚えるのである。長生きは良いことである。しかし、その価値観を押し付けることは許されない。少なくとも、生命に関する倫理観は医者が決める種類のものではない。


移植報道をするなら、その後についても報道べしと考えるのである。

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