「ミラーレス一眼」初の2割超え デジカメ1~6月世界出荷
ミラーレス一眼カメラの出荷が拡大している。カメラ映像機器工業会(CIPA)が8月1日に発表した1~6月期のデジタルカメラ統計で、ミラーレス一眼の世界出荷実績が初めてレンズ交換式の中で2割を超えた。
ミラーレス一眼の出荷は8カ月連続で前年実績を上回った。1~6月の世界出荷額は前年同期比40%増の607億円で、レンズ交換式のうち22.3%を占めた。統計のある2012年以来、1~6月期で初めて2割を超えた。一方で、デジタル一眼レフは15.7%減の2113億円だった。
ミラーレス市場では富士フイルムやソニーやパナソニックといった日本企業の存在感が大きい。12年にミラーレス市場に参入した富士フイルムの古森重隆・会長兼最高経営責任者(CEO)は「写真愛好家層は描写力のあるカメラを好み、ミラーレスはそれに対する最強の答えだ」と話す。
14年度の出荷台数は前年度比56.6%減200万台を計画する。低価格コンパクトを大幅に縮小する一方、利幅の大きいミラーレス一眼の販売を拡充する。4~6月期の販売実績は68万台と出足は好調という。
14年2月に発売した「X-T1」は発売以来、当初予定の2倍、2万台で5カ月間増産している。電子式ビューファインダーの性能向上にこだわり、ミラーレスの弱点とされてきた表示速度の遅れも大幅に改善した。ミラーレスの普及を加速させたのが、昨年11月以降に各社が発売した高性能機種とされる。ソニーやパナソニックなど、平均単価が10万円を超える高級ミラーレスが続々と登場している。ソニーの「α7」は一眼レフに使われる「フルサイズ」と呼ばれる大型撮像素子を搭載した。ミラーレス一眼の苦手分野だった自動焦点で、世界最速の0.06秒の高速性能を持つ「α6000」を14年3月に売り出した。08年に世界初のミラーレスを売り出したパナソニックも4月に世界初の4K対応機を発売し、赤字のデジカメ事業の採算改善を急ぐ。
ミラーレスが市場に登場してから6年。4倍以上の市場規模を持つ一眼レフは依然として根強い支持を得ている。スマートフォン(スマホ)に需要を奪われ縮小傾向が続くデジカメ市場で、成長分野としてさらに競争が激しくなりそうだ。(日本経済新聞:8月1日)
なんとも怪しい匂いのする記事である。
デジタルカメラが売れていないのは事実で、ミラーレス(ノンレフレックス)が売れているという記事を以前扱ったが、それ程のものでもなかった。おとなしく、CIPAの生産台数の推移から確認することにしよう。ミラーレスのある2012年以降の月生産台数推移を下に示す。
■ デジタルカメラ生産台数推移 (単位:千台)
月 デジタルカメラ計 コンパクト 交換式一眼レフ 一眼レフ ノンレフレックス
2014年6月 3,406 2,267 1,138 866 272
2014年5月 3,562 2,340 1,222 973 250
2014年4月 3,826 2,599 1,227 981 245
2014年3月 3,158 2,121 1,037 775 263
2014年2月 2,899 1,964 935 755 180
2014年1月 2,951 1,954 997 791 206
2013年12月 3,187 1,913 1,274 1,000 274
2013年11月 5,865 4,103 1,762 1,310 452
2013年10月 6,297 4,449 1,847 1,480 367
2013年9月 5,586 3,924 1,662 1,292 369
2013年8月 5,458 3,858 1,600 1,294 306
2013年7月 5,055 3,577 1,479 1,273 205
2013年6月 4,359 3,032 1,327 1,106 221
2013年5月 5,179 3,785 1,394 1,174 221
2013年4月 5,626 4,289 1,337 1,175 162
2013年3月 5,252 4,138 1,114 915 200
2013年2月 4,329 3,389 940 769 172
2013年1月 4,813 3,732 1,081 847 234
2012年12月 4,634 2,967 1,667 1,344 324
2012年11月 8,213 6,120 2,093 1,504 588
2012年10月 9,626 7,528 2,098 1,466 632
2012年9月 7,431 5,670 1,761 1,502 259
2012年8月 8,775 6,804 1,971 1,602 369
2012年7月 7,963 5,983 1,980 1,636 343
2012年6月 9,075 6,999 2,076 1,777 299
2012年5月 9,279 7,501 1,778 1,438 340
2012年4月 9,664 8,242 1,422 1,147 276
2012年3月 10,924 9,179 1,745 1,433 312
2012年2月 8,878 7,411 1,466 1,155 311
2012年1月 5,913 4,881 1,032 856 176
ミラーレスが増えているかといえばその傾向は認められるが、市場を必発原動力には力不足に見える。一方、レンズ交換式一眼レフはというと、ひところのような勢いは失ったようだ。大きく重いものが高性能と等しいというのは、現在でも一部で真実であるのだろうが、画質を決定するのがイメージセンサーとその処理技術であることからすると、大きく重いものより新しい製品に最良が移ることになる。高いカメラを買うより、ほどほどの価格で常に新しくするというのが良い写真を得る最良の手段ということか。これを信じる者が多ければカメラ会社は助かるのだが、スマートフォンのカメラとの性能差がウェブ上で見えなければ訴求力に乏しいということになる。
レンズ交換式カメラの出荷台数が伸びない中で、その一部が少し伸びているというのではカメラ会社の商売は厳しい。手ぶれ補正技術などの適用で最新のレンズが好ましいという流れをつくり、レンズで儲ける商売にしたかったようだが、たくさんレンズを集めるというユーザは限られているようだ。
何とも愛想のないまとめなので、平均単価に注目して推移をまとめた結果を下に示す。
■ デジタルカメラ平均単価推移 (単位:円)
月 デジタルカメラ計 コンパクト 交換式一眼レフ 一眼レフ ノンレフレックス
2014年6月 16,992 10,857 29,209 29,927 26,920
2014年5月 16,674 10,380 28,725 28,679 28,906
2014年4月 15,989 10,109 28,448 28,850 26,839
2014年3月 17,001 10,703 29,880 31,605 24,793
2014年2月 16,786 10,591 29,800 30,742 25,849
2014年1月 16,590 9,493 30,501 31,147 28,016
2013年12月 19,442 10,989 32,132 33,022 28,890
2013年11月 16,632 10,361 31,234 30,750 32,640
2013年10月 15,662 9,943 29,439 30,349 25,767
2013年9月 15,837 10,173 29,212 30,624 24,270
2013年8月 15,212 9,245 29,607 30,946 23,939
2013年7月 15,349 9,881 28,574 29,155 24,975
2013年6月 14,432 9,389 25,951 26,348 23,965
2013年5月 13,818 9,387 25,846 26,303 23,416
2013年4月 12,829 8,353 27,188 27,493 24,977
2013年3月 11,584 7,365 27,248 28,365 22,128
2013年2月 12,369 8,158 27,546 28,520 23,184
2013年1月 11,799 7,427 26,885 27,889 23,244
2012年12月 15,535 8,837 27,454 28,263 24,097
2012年11月 12,417 7,974 25,409 26,220 23,335
2012年10月 11,637 7,806 25,383 26,605 22,550
2012年9月 13,072 8,338 28,316 29,088 23,841
2012年8月 12,038 7,458 27,847 29,406 21,080
2012年7月 12,762 7,619 28,304 29,355 23,291
2012年6月 12,312 7,591 28,228 28,948 23,940
2012年5月 11,284 7,492 27,284 28,019 24,176
2012年4月 10,513 7,556 27,650 28,464 24,265
2012年3月 10,928 7,690 27,960 28,694 24,582
2012年2月 10,572 7,748 24,846 24,912 24,602
2012年1月 11,434 8,260 26,439 27,140 23,030
スマートフォンと直接競合するであろうコンパクトタイプの単価はひところより上昇している。安くてほどほど写るというのではスマートフォンに負けるから、安い製品は淘汰されて性能差のあるものだけが残っているということだろう。先の台数ベースで見ても悲惨なくらい台数は減っているから当然のことではある。
一眼レフタイプはどうかというと昨年末に上がったものが下がってきていて、同じような価格に届きそうな雰囲気である。イメージセンサーを大きくする、即ち保存する画像データが大きくなり、画像処理のソフトウェアの処理能力も要求されて、価格が高くなる要素満載でも製品価格は安くなるのである。ソフトウェアの代金は台数が沢山出れば吸収できようが、台数の伸びもないとなれば八方ふさがりである。
ミラーレスでも似たようなものだが、一眼レフとの共通化を進めてコストの吸収をおこなうということなのだろうか。
カメラ事業というのは、製品に愛着を持って長く使うというタイプの産業として特徴付けられていたと思うが、銀塩からイメージセンサーに切り替わって、産業の特徴が大きく変わったようだ。変わったのに、経営側の意思決定が同じであれば躓くことは必定である。さて、今後どのように舵取りをするのだろうか。
提灯記事を載せる事情はあるのだろう。新聞社の提灯記事はどこに載せてもらうのだろうか。
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