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2014年8月19日 (火)

おしゃれで楽な電動車いす:ベンチャー企業が発売へ

従来のイメージを打ち破る、斬新な電動車いすが9月3日、発売される。若手技術者たちが、ベンチャー企業を立ち上げ開発した。おしゃれで使いやすいデザインが評価され、国内の空港や遊園地などにも導入される予定だ。
車いすの名前は「WHILL(ウィル)」。手すり部分を前傾にし、「前に進む」イメージを出した。パソコンのマウスのように直感的に操作でき、四輪駆動で雪道や坂道も安定して走れる。7.5センチの段差も乗り越えられる。開発を支援してきた神奈川県立総合リハビリテーションセンター主任研究員の沖川悦三さんは「移乗と座り心地、移動の三要素が、ユーザー視点に立って作られている。これまでも格好いいだけの車いすはあったが、そこが従来の製品とは違う」と話す。
開発は4年前にさかのぼる。日産自動車のデザイナーだった、代表取締役の杉江理さん(32)は、発展途上国向けに車いすを作ろうとリサーチする中で「100メートル先のコンビニに行くのもあきらめる」という使用者の話を聞き、驚いた。杉江さんは「車いすには、二つのバリアーがあった。『かわいそうな人』と見られる心理的な障害と、移動しにくいという機能的な障害です」と話す。杉江さんらが、試作品を2011年の東京モーターショーに出したところ、想像以上に反響は大きかった。本格的な販売を目指して12年に起業すると、共感した仲間がソニーやオリンパスなどを辞めて集まった。昨年、市場規模が20倍の米国に本社を移し、日米両国に拠点を置いた。
電動車いすは、30万円くらいから数百万円するものもある。「WHILL」は税込みで102万6千円。すでに約70台の予約が入っている。自治体に認められれば、購入の際に公的助成も受けられる。京都市の大学教授、大石秀夫さん(67)は「スポーツカーみたいで格好いい」と購入を予約した。「車いすで外に出ると、どうしても人から避けられてしまう。ウィルなら興味を持って話しかけてくれるかもしれない」と期待する。(朝日新聞:8月19日)


車いすについて考える。


車いすには記事のような電動のもの、タイヤを乗っている人が回すタイプ、もっぱら介護する人が後ろから押すことを前提にしたタイプがある。電動車いすはモータや電池が加わるから価格も高い。記事のWHILLの仕様を確認する。

■ WHILL仕様抜粋
  フロントタイヤ       WHILL 全方位タイヤ (直径:24.9cm)
  リアタイヤ         24.9cm
  ドライブシステム     4輪駆動
  ブレーキ          電磁ブレーキ
  スピードコントローラー  3段階切り替え(速/中/遅)
  電動スライドシート    前後電動スライドシート 15cm
  モーター          24V x 2
  バッテリー         12V 50Ah × 2
  充電器           据置型
  充電時間          5時間
  重量             90kg (バッテリー抜き 63kg)
  乗員体重         100kg以下(荷物を含む)

電動車いすの中でも大きく重いタイプだろう。そうなった理由は移動可能範囲を拡大する為に、タイヤをごっついものにしているし、モータも大型のものを採用しているのだろう。この結果がバッテリーの容量拡大と相まって重量が90kgまで至った理由になるのだろう。
電動でないタイプの車いすの重量は13kg前後というところである。12kgのものもあるが15kgのものもある。利用者の求める機能やサイズによって部品の追加があるから重いものもあるというところである。一方、介助用と呼ばれる人が押すことを前提にしたタイプはもう少し軽くなる。それでも10kgを下回ることは少ない。代表的には12kg前後というところだろう。電動タイプは15kg程度からあるが、施設内での利用を前提にしているようで、記事の商品と比較するには相応しくない。比較として最適か否かの判断はつかないが、今仙技術研究所の電動車いすの重量が85kgだった。そこそこの距離を段差をクリアーして走るとなるとこうなるのだろう。
電動である必要があるユーザに向けてはこれで良いが、車いすは必要だが自分で動かすタイプのものの方が利用者は多いだろう。つまり市場は大きい。しかし、この手の車イスが13kgというのは重い。利用者は病院に行くことがあるだろうが、クルマに積むのに大変な重さである。利用者が積む作業はしないだろうが、介護者がする作業には負担が大きい。これが8kgに満たないものなら事情が変わる。
車いすの重さは自転車のイメージで考えれば良いだろう。一般的な自転車の重量は15-20kgで、電動アシスト付自転車が25kgといったところである。電動アシスト付自転車のアシスト割合は最大2/3 (10km/h以下) まででで、24km/hで補助は無くなる。アシスト割合が100%になる電動車いすとの比較は難しいが、モータと電池の構成物の重量が5倍くらい重いだろうと想像する。上ではシティサイクルの重量だが、スポーツ用の自転車なら10kgを下回る。車イスを炭素繊維を用いれば半分近くまで軽くなることになる。実際競技用の車いすはこのようなレベルになっているのだろう。競技用のような仕様にすると市場が限定されてしまうが、汎用性の高いものに仕上げれば市場は広がるだろう。

軽いものが利用し易い製品になる。炭素繊維では価格が高いからというのは、現時点ではその通りだが、釣竿やテニスラケットに使うだけで、次は特殊な自動車というのでは市場に偏りが大きい。高いのならリースにすれば良く、耐久性が十分なら何とかなるだろう。行政からの補助金の頼り仕事が広がることはない。
車いす購入で、年間1万件の購入案件に10万円の補助金を支給することを行政がしたとする。つまり10億円と行政の監理費が掛る。毎年この金額を支給し続けるのなら、10億円で格安炭素繊維車いす開発会社を設立し、毎年千台をレンタルと販売に回す事業をするということの方が国の将来に役立つのではないか。炭素繊維を用いた車いす開発はいろいろな会社が発表しているが、50万円クラスのようだ。販売力もない会社ではいるら良い製品であっても年間100台売るのがやっとで、これとて継続するのは困難だろう。つまり、会社がやっていける販売価格は100万円に近いということになる。標準化した二つ程度の仕様の製品を継続生産するなら原価低減は可能だし、炭素繊維会社の福祉関係の新規事業に協力するなら展開し易い環境が整う。デザインコンペをしてマスコミに宣伝してもらえば、車いすも注目されることになる。レンタルの会社も充実させれば、介護保険の適用などの事務手続きも簡素化して、利用者の負担軽減も達成されるかもしれない。8kgの軽量車いすを20万円を下回る価格で提供することが大切で、長期に使う可能性が乏しければレンタルで対応すれば良い。
福祉関係の話題では利用者の利便性を掲げるが、多くの場合、介護する人の使用上の便益を拡大することの方が大切である。ただでさえ労働環境の悪い福祉関係の仕事で、負担軽減を達成することの価値は大きい筈だ。ベンチャーは富裕層を意識した高性能を追えるが、行政はマスの大きな代表的な利用者をターゲットにしなければならない。

電動車いすが故障して止まってしまったのを見たことがある。100kgに利用者が乗った状態では一人で動かすのは簡単ではない。狭いところで動けなくなった場合は悲惨である。こういう場合に軽量であることは重要な性能である。モータと電池に頼った開発は大型化の方向に進むものである。大きなものは安定した走行が期待できるし、乗り心地も良いことだろう。ただし、ちょっとしたトラブルに対応するのが大変である。近くのコンビニにはいきやすくなるが、マンションの前の角で不具合がでることもある。
車いすにおいて3cmの段差は、3mの壁に等しい存在になる。段差をなくす活動は立派な考えだと思う。しかし、どうしても越えられない3cmの段差を超すのは、周囲の人の理解しかないだろう。走行性能の高い戦車より、自転車の方が性能が高い場合も出てくる。車いす利用者が排除されていることを前提にした製品開発は寂しい気がする。もちろん、走行性能を高めることの重要性を否定するつもりはない。


デザインコンペが、経済産業省や厚生労働省かという話になってしまうのか。

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