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2014年2月24日 (月)

法科大学院7校「改善進まず」 中教審の特別委調査

中教審の法科大学院特別委員会は2月24日、入学者数の減少など深刻な課題を抱える法科大学院を対象にした2013年度調査で、12校に「重点的な改善が必要」と指摘した。このうち既に学生の募集停止を決めた5校を除く7校はいずれも「前年度から改善が進んでいない」とした。
7校の内訳は国立が香川大と鹿児島大、私立が白鴎大(栃木)、日本大(東京)、愛知学院大、京都産業大、久留米大(福岡)。特別委は、入学者数が低迷していることや教育体制が十分に整っていない点を課題として挙げた。 「継続的な改善」を求めたのは静岡大など20校。学生募集の停止を決定または検討中の4校を除く16校のうち、司法試験の合格状況などで「大幅な改善がある」と評価されたのは琉球大(沖縄)と青山学院大(東京)の2校のみ。残りの14校は一層の改善が必要とした。(日本経済新聞:2月24日)


司法試験をめぐる状況について考える。


司法制度改革でつくられた大学過程である法科大学院では、修了すると司法試験の受験資格が得られる。当然のことながら、専門職学位として法務博士(専門職)が与えられることになっているのだが、これは博士(法学)とは別のものである。この大学院に進学することは、司法試験の受験資格を得ることであるのは言うまでもない。
華々しく始まったこの大学院が上手いかない理由は、進学者の思惑である司法試験に合格できないということにある。司法試験は非常に難しい試験として有名であったが、司法制度改革で弁護士の人数を増やす必要があるとされて合格し易くなったと受験者は考えていたのであるが、もともとが難しかったのでそれほどは変わらなかったという結果に至っているようだ。過去の資料をもう一度読んでみた。規制緩和の進行が予想され、以前のように事前規制を期待するのが難しくなり、事後に法的な処理をする機会が増えるので弁護士を増やす必要がある。グローバル化の進行もあり、企業内に法律専門家を置く状況に対応できるようにするのが好ましい。一部の地域で弁護士がいない状況があり、法律サービスを受ける体制を整える必要がある。司法試験を目指して長期にわったて浪人する人は社会的な損失になるので改めなければならない。というようなものであった。
順番に考えていく。人口が減少するフェーズに入っていることを考慮すれば規制緩和は必然的な流れなのだが、規制緩和は既得権を奪うことにつながることから反発がある。健全な競争を促すのが正しい政策になるのだが、既得権の保護を必要以上に重く考え、国民も国に守られたいという意識から抜け出せないでいる。
グローバル化というのは人気のあるフレーズである。極東の人口が規制や難解な商習慣が多く残る島国は、市場規模こそそこそこあるものの今後の拡大は期待できないことから、市場としてはあまり魅力的ではない。つまり、外国資本がこの国を目指す動きはそれほど大きくはない。そこそこの人口と交通インフラの発達があることを考慮すれば、食料品の輸出先にとっては有力かもしれない。つまり、この国にある企業にとってのグローバル化は、海外に製品を売ることや、工場を海外に進出することである。外貨制限の少ない国であってこの作業に対する法律上の問題は、外国の法律に抵触するか否かの判断の方に移る。法科大学院は国内法を対象とした勉強を主としてしているようだから、企業が求める法律家を十分満たすとは言い難い。だいたい、企業は厳しい国際競争にさらされることになるのだから、無駄に法律家を雇用する余裕などない。弁護士資格保有者が、大卒と同じ給料では不満も出るだろう。今日においてもグローバル化を黒船来航のように考えているようだが、それほど魅力的な市場でないということを認識する必要があるようだ。
弁護士がいない過疎地域が問題になっているが、いないのは商売にならないからに尽きる。難しい試験をやっと通って、売上の期待できない地域に事務所を開く理由は誰にもない。少なくとも、誰かの役に立つ仕事を法律家として行いたいと考えるなら、一定レベルの依頼が期待できるのが前提になる。そこに市場を作るという意気込みなら尊敬される行動であるが、取ってつけたような人がいないからという言い訳は、弁護士の人数がいくら増えても同じように繰り返される台詞であろう。
司法試験浪人を問題にするのは理解するが、一般論としてハイリスクハイリターンの仕事に挑んでいることに他人がとやかく言う筋合いではない。ハイリスクはともかく、ハイリターンでなくなっている制度改革を行うなら、正しい情報公開が求められる。司法制度改革の数字がそのまま達成されるのなら、弁護士の市場価値は下がるのは必然である。それではハイリスクを犯す理由はなくなる。法律家が原理主義で行動を決定するのは結構だが、市場は別の行動原理で動く。理念先行で制度を作るのは結構だが、現在の状況と合っているのかぐらいはもう少し精度の高い点検を行って貰いたいものである。

視点を変えて大学ごとの司法試験の受験者数と合格者の累計をまとめた。大学名と平成25年の定員と合わせて下に示す。

■ 平成18年から25年(2006-2013)の司法試験受験者、合格者の累計
       大学  定員数 受験者  合格者            大学   定員数 受験者 合格者
   1   東京    240  2,792  1,516  79%     39  大宮    停止   684   64  ―
   2   中央    270  3,087  1,386  64%     40  青山学院  50   497   64  16%
   3   慶応義塾 230  2,442  1,319  72%     41  東洋     40   475   58  18%
   4   京都    160  1,987  1,055  82%     42  名城     40   345   55  17%
   5   早稲田   270  2,747   988  46%     43  西南学院  35   409   52  19%
   6   明治    170  2,334   625  46%     44  駿河台   停止  621   50  ―
   7   一橋     85   946   561  83%     45  桐蔭横浜  50   532   50  13%
   8   神戸     80   978   453  71%     46  神奈川    25   359   46  23%
   9   同志社   120  1,652   402  42%     47  近畿    40   291   45  14%
  10  大阪     80  1,044   387  60%     48  広島修道  30   292   45  19%
  11  北海道    80  1,013   384  60%     49  福岡     30   226   45  19%
  12  立命館   130  1,709   378  36%     50  駒澤     36   386   44  15%
  13  東北     80  1,094   345  54%     51  中京     25   240   43  22%
  14  名古屋    70   841   306  55%     52  筑波     36   283   42  15%
  15  上智     90  1,127   303  42%     53  獨協     30   465   42  18%
  16  九州     70  1,105   300  54%     54  熊本     22   260   39  22%
  17  関西学院  100  1,262   279  35%     55  琉球     22   234   39  22%
  18  首都大    52   692   265  64%     56  関東学院 25   308   37  19%
  19  関西     100  1,323   231  29%     57  國學院   30   383   33  14%
  20  大阪市立  60   723   220  46%     58  北海学園  25   166   29  15%
  21  千葉     40   496   217  68%     59  香川     20   234   28  18%
  22  法政     80  1,116   206  32%     60  静岡     20   213   27  17%
  23  立教     65   753   148  28%     61  大東文化  40   377   27   8%
  24  学習院    50   611   135  34%     62  龍谷     25   388   27  14%
  25  日本     80  1,147   131  20%     63  久留米    30   305   27  11%
  26  専修     55   717   122  28%     64  白鴎     20   215   26  16%
  27  広島     48   529   118  31%     65  東北学院  30   252   24  10%
  28  横浜国立  40   546   117  37%     66  京都産業  32   414   24   9%
  29  創価     35   547   117  42%     67  東海     30   333   23  10%
  30  成蹊     45   554   108  30%     68  信州     18   242   22  15%
  31  南山     40   433   105  33%     69  島根     20   201   22  14%
  32  愛知     30   266   104  43%     70  神戸学院  停止  203   19  ―
  33  岡山     45   396    98  27%     71  大阪学院  30    300   15   6%
  34  甲南     50   612    96  24%     72  鹿児島    15   234   13  11%
  35  新潟     20   452    75  47%     73  愛知学院   25   199   13  7%
  36  山梨学院  30   319    74  31%     74  姫路獨協 廃止   158    3  ―
  37  明治学院  停止  624    72  ―      75  予備試験   0    252  178  ―
  38  金沢     25   327    70  35%          計    4,261  53,319  15,256

合格者数の多い順に並べた。合格者の右に示したのが、合格者数を平成25年の定員で割って、8で割ったものである。8というのは、平成18年から25年までの8回の試験回数である。(一部大学で途中から参加したものや停止したものは無視した) 司法制度改革のワーキンググループは七割の合格率を目指すとしていたから、実績で六割を超えている大学は良好なグループで、その半分の三割を下回っている大学は少々問題があると考えるとする。六割を超える大学の合格者の合計が全体の47%になるのに対し、三割以下だと15%程度にとどまり、二割以下だと9%以下となる。
合格率の低い大学が地方に多いことからすると、僻地政策に効果があったか疑わしい。四国や九州の大学での合格者数が少ないことは、この地域の合格者が少ないことを意味するものではないが、この地域の出身者が法律家を目指すなら大都市に行かなければならないことは事実である。高尚な理念を掲げてもこの程度と言われても仕方ない結果である。

中教審の法科大学院特別委員会は大学の不備を指摘する立場にあるのだろうが、この制度の致命的な欠陥を指摘する役割もあるだろう。それは、法科大学院の学位が司法試験受験資格以外に何の役にも立たない状況であることである。浪人しても受からず、三回までのという受験制限を掛けて若者が無駄な時間を過ごさないように配慮したつもりかもしれないが、このセリフは漫才のM-1グランプリでも同様の言葉を聞いた。諦めるきっかけを作るのは個人がするもので、国や制度で縛るものではない。制度は適性のない者を排除するように作られていればよく、少数の例外の為に細かい条件を書き加えることは本来目指す業務とは違う部分での負担を生じるばかりである。法科大学院を修了したら世の中の役に立つ学生だという状況を作ることが本筋だろう。それをしないなら、以前の司法試験で活躍した司法試験予備校と法科大学院は同じ価値しかない。学問と教育の方向を見誤ってしまっているようである。


弁護士というのが最強の既得権者なのかもしれない。

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