火力発電量が過去最高 1月発受電電力量、全体は0.7%減
電気事業連合会が2月17日発表した1月の発受電電力量(速報、10社合計)によると、火力による発電量が前年同月比2.0%増の655億4,000万キロワット時となり過去最高だった2012年1月実績を更新した。国内の原子力発電所は2013年10月から全て停止しており、冬の電力需要期を迎えて火力への依存が一層強まった格好だ。
全体は0.7%減の853億4,000万キロワット時で3カ月連続のマイナスだった。気温が前年より高く暖房需要が伸びなかった。電源別では水力が6.1%減の33億3,400万キロワット時。原子力は4カ月連続ゼロだった。太陽光など新エネルギーは3.3%増の2億2,900万キロワット時だった。
火力発電量の増加に伴い燃料消費も拡大した。石炭は1月として過去最高の565万9,000トン、液化天然ガス(LNG)も1月として過去2番目の511万9,500トンを消費した。(日本経済新聞:2月17日)
発電について考える。
電力10社の発電受電電力推移を確認する。単位が大きいので月平均の数字で、キロの千倍のメガの千倍のギガワットの表記にした。結果を下に示す。
■ 電力10社の月平均発受電電力量推移 (単位:GWh・月平均)
2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003
発受電電力量 75,452 76,968 78,100 82,305 78,312 80,989 83,624 80,944 80,410 78,966 76,134
内訳 水力 5,219 4,752 5,233 5,238 4,807 4,703 4,764 5,495 5,001 5,909 6,033
火力 54,121 55,564 50,890 40,450 38,259 42,378 45,086 39,000 38,519 38,148 38,829
原子力 1,034 1,328 8,391 22,606 22,176 20,592 20,795 23,927 23,915 21,873 18,378
新energy 208 214 215 205 - 7 0 0 0 1 1
他社受電 15,463 15,829 14,067 14,532 13,626 13,956 13,983 13,404 13,927 14,021 13,895
※ 2013年は4月から12月の平均値
季節変動の影響がある可能性があるので、2013年4月から12月の発電エネルギー別の発電量推移を下に示す。
■ 月度発電エネルギー別発電量 (単位:GWh)
火力 石炭 LNG 石油 原子力 新energy 風力 太陽光 地熱
4月 49,012 11,108 29,943 7,961 1,765 210 6 9 195
5月 48,563 12,072 28,878 7,613 1,776 225 3 10 212
6月 49,051 12,961 29,365 6,726 1,746 187 2 7 178
7月 57,874 15,717 33,651 8,506 1,782 197 4 9 184
8月 61,365 16,449 34,886 10,030 1,760 208 2 9 197
9月 51,208 15,482 30,585 5,141 474 205 2 6 197
10月 53,761 13,742 31,729 8,290 0 191 3 5 183
11月 54,131 13,708 32,174 8,249 0 211 4 5 202
12月 62,122 15,244 36,644 10,234 0 236 6 5 225
1月の火力発電量65,540GWhは、12月より5.5%多い。原子力発電が10月から完全停止状態だから不足分はどこかで補わなければならない。稼働率の低かった原発でも2,000GWh近くあった。これに対して新エネルギーの合計は200GWh程度とレベルが違う。しかもそのほとんどが地熱発電である。大騒ぎしている自然エネルギーも足元はこの程度であることを認識しなければならない。中期的に2,000GWhにしようと思うのなら、心情的に加速する無計画な手法では覚束無い。金のばらまきをして参入を増やすやり方は市場を刺激する効果は高いだろうが、電力供給の実効力には乏しい。撒き餌をする時期は過ぎたので、実際に発電する一定規模の業者のみを支援すれば良い。撒き餌に乗っかった業者に既得権が発生するようでは意味がない。より透明性の高い自由競争を仕掛けないと、そろばんが合わないという壁を打ち破る力は自由競争以外では得られない。
次に発電に用いられるエネルギー資源について考える。これも月平均の発電用の使用量の推移をまとめた。最近四カ月と2012年以前を月平均の使用量としてまとめた結果を下に示す。
■ 発電用資源の月平均使用量
2014年1月 2013年12月 2013年11月 2013年10月 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006
石炭(kt) 5,659 5,308 4,782 4,779 4,187 4,108 4,252 3,986 4,224 4,418 4,241
重油(Ml) 1,522 1,304 913 886 1,340 985 525 466 856 997 614
原油(Ml) 1,344 993 926 997 1,122 964 397 302 666 933 503
LNG(kt) 5,120 5,266 4,597 4,620 4,649 4,407 3,478 3,359 3,395 3,474 3,148
ナフサ(kl) 0 0 0 0 1 219 1,078 3,203 31 1,203 1,505
世の中は二酸化炭素の発生量の少ないLNGがお好みのようである。天然ガスの産地の政情が不安定なこと、輸送に費用が掛かることなどを考えれば、お気軽にLNGに走ってはいけない。この国のエネルギー政策を安全保障の面から考えれば、石炭の比重を高める方が妥当な選択だろう。この国の発電なら排ガス対策は十分取られるだろうし、調達リスクも小さい。相場の変動も相対的には小さい。原発を危険だと嫌うなら石炭を選ぶ理由はある。逆に、電力が不足するからと原発を安易に再開しようとするのは、学習効果が乏しすぎる。
天然ガスはサハリンからパイプラインで、石炭はモンゴルからというのを、商社が検討していることだろう。簡単ではないが。
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