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2013年12月24日 (火)

オハラ:HDD用ガラス基板事業の撤退

少し前に扱ったオハラのHDD用ガラス基板の事業について撤退が発表された。発表内容について考えてみる。

12月12日にオハラより、『ハードディスク用ガラス基板事業の撤退及び特別損失の計上に関するお知らせ』として発表された。以下に一部を引用する。

当社は、平成6年にハードディスク用ガラス基板材を開発し、平成8年にはマレーシアにて生産拠点となるOHARA DISK(M)SDN. BHD.を設立いたしました。当社のハードディスク用ガラス基板材は、ガラス内部に結晶を析出させることで高強度を実現した点に特徴があり、主としてノートパソコンなどに搭載されるモバイル向けハードディスクドライブに使用されてまいりました。一方、昨今のスマートフォンやタブレット端末の急速な普及に伴い、ノートパソコンの需要は減少傾向にあり、モバイル向けハードディスクドライブは今後も需要増加が見込みづらい状況にあります。
このような状況の下、平成25年9月12日付「特別損失の計上、業績予想の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ」に記載のとおり、当社は当面見込まれる需要に合わせて事業規模を縮小するものの、将来的な需要に対しては材料特性で優位性が発揮できるものと判断し、新製品を投入して一定シェアを確保しつつ、当事業を継続できるものと判断しておりました。
しかしながら、その後、既存サプライチェーンが寸断されたことにより、新たな販路の確保に努めましたが、需要が減少する中、再構築には時間を要し、また、数年先と見られる次世代記録方式の採用まで当事業を不採算のまま継続することは不可能と考え、事業撤退することといたしました。


ガラス内部に結晶を析出させるというのは、結晶化ガラスと呼ばれるガラスである。非晶質のガラスに比べて破壊強度が高いという特徴がある。平成8年は1996年で、この頃から本格的な量産を行ってきたという歴史を示している。この頃はHDD用ガラス基板に参入する会社が多くあって、MYGも1997年に結晶化ガラスで参入している。翌年に合弁の山村硝子が撤退してミノルタの子会社になるがこのガラスは量産化に至らずオハラのガラスを用いて加工していた三井金属の事業を2001年に譲渡を受け以降量産を継続した。今年撤退したのは既報の通りである。他に日本ガイシが1998年10月に量産を決定したと発表したが、量産には至らず撤退している。これも結晶化ガラスである。1999年3月に結晶化ガラスではないが、日本板硝子と神戸製鋼所がマレーシアに合弁会社を設立している。翌年には神戸製鋼所が撤退し日本板硝子が事業を継続したが、2004年に日本板硝子が事業から撤退して終わっている。
他にも参入を計画した会社はあったと思われる。1kg100円で売るガラスの商売をしている会社からしたら、特別な成分系でもないのに1kg1,000円で売れたら天国のようだと思ったのだろう。産業の規模が大きくなった1990年代後半に参入を検討したが、2000年代に楽な商売でないことに気が付き撤退した。残った会社は儲かったのだが、2010年以降に雲行きが怪しくなってるというところだろう。いずれにしても、どこの会社も成功しなかった結晶化ガラスの実用化を果たしたということは立派な業績である。
オハラのガラス基板の売上高推移を下に示す。

■ オハラの10月期決算でのHDDガラス基板売上高推移 (単位:百万円)
  2004     1,740
  2005     2,434
  2006     3,580
  2007     4,018
  2008     5,606
  2009     2,870
  2010     5,346
  2011     2,135
  2012     1,327
  2013      183

2010年に増産を決定して投資しているが以降良い所がない。オハラの経営者は、普通の言葉で表現すれば騙されたと感じたことだろう。オハラの素材は加工会社としてコニカミノルタかシチズンを経由して昭和電工に収めるというルートしかない。シチズンが2012年3月に撤退を発表しているから、コニカミノルタ→昭和電工→東芝というルートのみとなっている。コニカミノルタの撤退というのが、発表にあるサプライチェーンの寸断に相当する。コニカミノルタは、昭和電工以外の会社への販売を試みたようだが失敗している。オハラはコニカミノルタ頼みである状況が上記期間で継続していたのだから、投資にはもう少し慎重で良かったのではないかと感じる。オハラが投資しないと、コニカミノルタではなくHOYAの製品を昭和電工が買うという恐怖が投資を促すのだろうが、結果として昭和電工は事業を継続してコニカミノルタを切ることになったのだから、投資判断の甘さは株主総会で指摘されることだろう。
事業撤退に関わる費用が一部オハラから発表されている。9月発表と修正された12月発表で比較してみた。結果を下に示す。

■ オハラ発表の特別損失額 (単位:千円)
               減損損失    たな卸資産評価損
  9月19日発表     1,800,226        263,451
 12月12日発表      3,658,109         431,580

9月では半分捨てるつもりだったのが、12月になってすべて捨てる判断をしたということが見える。発表にある新たな販路の確保を目指したというのが、半分にして生き残るつもりであるという解釈で良いのだろう。減損損失はともかく、たな卸資産評価損は9月時点ですべて捨てる判断でなければならなかった筈だ。コニカミノルタがなくなれば、加工する会社はないのだから製品の価値はない。つまり、手持ちの材料はすべて捨てる処理が基本になる。第3四半期にすべてを盛り込むと重いという判断があったのだろうが、結局すべてになるのだから悪い印象しか残らない。次世代記録方式への対応という発表の文言も、数年前の市場占有率の高い時代でも二割程度であったことを考慮すれば、全体量を供給する能力はない。再度の投資というのも現実的でないだろう。発表資料を飾る言葉でしかないと考えた方が良さそうだ。
発表の減損損失は、固定資産の収益性が低下した為に、その投資額の回収見込みが立たなくなって、帳簿価額を回収可能価額まで減額した時に発生する損失を指す。たな卸資産の評価は取得原価が原則だが、時価との差が大きいので修正するという作業が生じることがある。売れない資産の値段を変更するということである。36億円の固定資産と、4億円のたな卸資産ということは、固定資産に関しては2010年の投資額がまるまる無駄になった金額で、たな卸資産については2012年の売上高の1/3に相当するから、2013年は稼働しない状況であったことが窺える。いずれにしても、オハラには負担の大きな金額である。


カメラレンズの小型化は光学ガラスの使用量を減らすから、近い回復が難しい環境にあるようだ。

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