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2013年11月 4日 (月)

東京高裁: JASRAの公取審決取り消し

テレビやラジオで流れる楽曲の使用料をめぐり、著作権管理業界で9割超のシェアを占める日本音楽著作権協会(JASRAC)の徴収方式が、独占禁止法違反にあたるかが争われた訴訟の判決で、東京高裁(飯村敏明裁判長)は11月1日、他社の新規参入を妨げているとの判断を示した。そのうえで、独禁法違反にはあたらないとした公正取引委員会の「審決」を取り消した。
高裁は、独占禁止法違反にあたるかどうかの審判手続きをやり直すよう公取委に求めた。公取委は上告する方針。この訴訟は、業界4位でエイベックス・グループの楽曲を管理する「イーライセンス」が審決の取り消しを求め、公取委を相手に起こした。JASRACも訴訟に参加。独禁法に基づき、高裁が一審となる。
JASRACは、テレビやラジオの放送局が支払う楽曲使用料について、使用した割合に応じて個別に徴収するのではなく、年間の放送事業収入の約1.5%を徴収する「包括契約」という方式を採用。業界シェア約98%で、市場をほぼ独占している。(朝日新聞:11月1日)


JASRACは昨年11月9日に書いたが、独禁法に触れないのかいということで再び考える。


JASRACの判決後の主張を先に記す。JASRACは、判決を不服とするコメントを発表した。
「訴訟の結果により権利を害される第三者」としてこの訴訟に (JASRACは) 参加し、イーライセンスには原告適格が認められないことや、審決の事実認定は合理的であり、法解釈にも誤りはないため、審決には取り消し理由がないことを主張してきたと説明。「本日の判決はこれらの主張をいずれも否定したもので、到底承服することができないため、判決文を精査した上でしかるべき対応をとる必要があると考えています」
とコメントしている。
法律論には不案内なので置くとする。今回の裁判の対象になっているは、放送事業者との包括契約である。包括契約は、年間の放送事業収入の約1.5%を徴収するということである。金額のイメージを確認する。電通の発表している資料によると、2011年の総広告費は57,096億円である(2009年:59,222、2010年:58,427)。広告費の割合と金額は下の通りとなる。

■ 広告費の金額
   新聞      10.5 %    5,995億円
  雑誌       4.4 %    2,512億円
  ラジオ      2.2 %    1,256億円
  テレビ     30.2 %   17,243億円

問題を整理してテレビについて考える。NHK以外の民放は、収入は広告料に依っていると考えてよいだろうから、包括契約の基礎となる放送事業収入は広告料で置き換えて良いことになる。この 1.5% ということは、259億円がJASRACに入ることになる。JASRACの手数料はこの15%であるから 39億円となり、著作権者に220億円が支払われることになる。テレビ放送されるコマーシャルで使用される音楽の著作権料は、放送局ではなく広告主または広告会社が申し込みを行い支払を行う。NHKの場合には放送事業収入に相当するのを番組制作費とすると、これが 2,042億円でこの1.5%は、31億円となる。ただしこれにはラジオが含まれる。実際のJASRACの状況を確認してみた。発表している2012年度の使用料等徴収額で、放送等の徴収額は 292億円となっている。上の計算結果と近い数字になっている。
包括契約なので、契約している放送局はどれだけ楽曲を使用してもJASRACへの支払金額には影響せず一定となる。逆に音楽を使用しなくても支払うことになる。これは変だと感じる。しかし、著作権者と個別に契約する状況は現実的ではない。団体を作って、まとめて支払うというのは製作側にも、徴収側にも利益をもたらす要素はありそうだ。著作権管理を行っている団体はJASRACのみではない。2000年に著作権等管理事業法が成立してからは、今回の原告であるイーライセンスなどが参加して、形式上の独占は解消されているが、実態としてはJASRACが98%と高く引き続き支配している状況である。

JASRACからすれば、イーライセンスも包括契約をすれば良いという論理なのかもしれないが、現時点で独占的な地位の会社が優位な立場で交渉することになるのは必然で、これこそが自由競争を阻害していると指摘されるところだろう。ラジオはともかく、テレビはデジタル化して楽曲の使用回数の管理は容易になっているのだから、包括ではなく実利用数に従った支払を行うように改めて良い状況であろう。これなら新規参入団体も同等であるから、先行者が優越的な地位による横暴だと言われることはない。
JASRACが、街の小さなジャズダンススタジオや、喫茶店などでの音楽使用に著作権料の請求をやかましくするのに、最も大きな媒体であるテレビ放送がどんぶり勘定で良い筈もない。厳しくというのが適当でないなら、権利を正しく保護するように徴収することを実現するなら、大小に係わらず同じ規則で実施されるのが当然求められる。JASRACが古い組織に思えるのは、既得権にしがみついている姿が窺えるからである。もう少し近代化のひつようはあるのではないだろうか。
なお、JASRACに加盟していない著作権者の楽曲は包括契約に含まれないことになる。有名なところでは、キャンディーズの春一番の作詞・作曲を行った穂口雄右はJASRACを抜けて個人管理しているので個別に契約しなければならない。これが沢山あっては、作業が煩雑になるばかりだから、という事情は理解するが、著作権を管理する団体が楽をしてはいけなかろう。


汗をかかない者が何かを得ることに抵抗を失うことを堕落と呼ぶ。

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