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2013年10月 1日 (火)

東レ、M&Aの照準は自動車市場

9月27日に海外2社のM&Aを発表した東レ。買収総額は1,000億円に迫る見通しだ。買収するのは炭素繊維世界3位の米ゾルテック(ミズーリ州)と、韓国で繊維や水処理膜を手がけるウンジンケミカル(ソウル市)。買収金額はゾルテックが約580億円で、ウンジンケミカルは400億円程度となるもようだ。営業利益はゾルテック、ウンジンケミカルとも各20億円程度。のれん代は不明だが、両社とも相応の償却負担が発生する見通し。両社の営業利益の合計から、のれん償却負担を差し引いた短期的な増益効果は微々たるものになりそうだ。
東レは短期的な利益を追い求めた買収ではなく、中長期的な事業拡大が目的と説明する。ゾルテックは東レが手がけない低価格の炭素繊維複合材料の生産を得意とする。炭素繊維市場を拡大するカギの1つは自動車向け用途の拡大だが、東レが生産する炭素繊維は高品質だけに、価格の高さがネックになっていた。自動車のボディーなどには高品質な炭素繊維が求められるが、目に見えない構造材などに使うと「オーバースペックになりかねない」(大西盛行専務)。そこでゾルテックが生産する割安な炭素繊維を部材ごとに使い分け、価格面からも自動車部品の素材代替に拍車をかける考えだ。SMBC日興証券の渡部貴人チーフアナリストは「今回の買収で、東レは炭素繊維の分野で圧倒的な存在になった」と語る。(日本経済新聞:10月1日)


引用がいつになく長いのは適当な切れ目が見付からなかったからだが、東レについて考える。


ヒートテックで評判の会社であるが、炭素繊維のトップメーカでもある。大手化学メーカであるから手広く事業を行っている。旧社名の東洋レーヨンの流れで繊維会社と括られるが、糸偏会社は繊維から離れた会社が大きな会社になり、繊維を主な業務にしている会社は比較的規模が小さいという傾向がある。造船会社で陸に上がったと海に浮かぶ会社の違いにも似る。経営コンサルタントは従来からの業務や、そこでの成功体験に囚われることを悪く言うことが多いが、その会社がそうした歴史を負っていることを無視しても仕方あるまい。現在の事業が悪いことは直さねばならないが、歴史を直せというのは暴挙だろう。事実を歪めると良いことにはならない。
話が逸れたが、東レのセグメント売上推移を確認する。資料は東レの決算資料からで、東レの決算は3月31日〆となっている。繊維と炭素繊維と水処理の属する事業を拾った。結果を下に示す。

■ 東レの売上高推移 (単位:百万円)
  売上高     全体       繊維     炭素繊維     環境
  2006     1,540,723     581,196     53,748     212,766
  2007     1,672,504     608,677     69,809     226,456
  2008     1,789,125     637,930     84,522     250,302
  2009     1,579,944     569,645     71,093     214,993
  2010     1,436,652     525,840     51,390     193,284
  2011     1,624,297     584,647     67,757     210,988
  2012     1,699,109     639,030     70,593     227,567
  2013     1,709,906     632,989     78,272     242,840

売上全体の1/3強が繊維事業に依っている。化学繊維のラインナップが整っていることもこの会社の特徴であり、繊維を用いた技術に柔軟に対応できる要素なのだろう。繊維という産業は軽工業として途上国が発展する際に最初に着手する産業のイメージになっている。衣料用に限定すればその通りなのだろうが、高機能な製品に用いる材料となると話は違うのだろう。機能素材を提供することで、優位な立場で事業をしているという理解で良いのだろうか。東レに肩入れする理由なまったくないのだが、東証に上場している繊維製品の欄にある企業で、東レと帝人は群を抜いて大きい。売上の小さい方の帝人の半分くらいのところに四社くらいあって、そのまた半分くらいに十社あるという具合に事業の拡大を目指すか、選択と集中を行うか、それも出来ずに従来の仕事を続けるかという企業の集合体が繊維製品の欄である。この欄にあっても主な事業が不動産管理になっている会社もあるから、株式の欄が事業内容を表す時代ではなくなっている。
度々話が逸れる。炭素繊維と環境に関わる事業内容は下記の通りである。

 ● 炭素繊維複合材料事業
          炭素繊維・同複合材料及び同成形品
 ● 環境・エンジニアリング
          総合エンジニアリング、マンション、産業機械類、環境関連機器、
          水処理用機能膜及び同機器、住宅・建築・土木材料

炭素繊維は炭素繊維に関する事業と考えて良いが、環境の方は事業範囲が広い。どちらも売り上げは上がったり下がったりの推移であるから炭素繊維も水もこれからの事業の位置付けであると理解して良いようだ。炭素繊維はボーイング787に採用されても5%以下であり、水の関係はいろいろ込みでも15%を超えていない。
セグメントの営業利益の推移も確認したので下に示す。

■ 東レの営業利益推移 (単位:百万円)
  営業利益   全体       繊維     炭素繊維     環境
  2006      93,628      20,687     11,820      4,920
  2007     104,113      19,236     18,084      5,953
  2008     105,970      21,352     18,096      9,754
  2009      36,444       7,664      8,398      3,303
  2010      55,054       16,324     -5,305      3,850
  2011     115,600      32,449      3,285      3,349
  2012     127,088      45,327      7,671      4,882
  2013     103,423      43,222      7,299      2,628

繊維は機能性衣料の成功が利益の拡大につながったのだろう。炭素繊維は量が増えて生産性が上がったかと思ったが、利益は増えていない。単価が下がった可能性はあるが、本当の意味で量産化の実施がなされていないのではないかと想像させる。
東レの中期経営計画では、水と炭素繊維の営業利益を現状の100億円から2015年頃に400億円に増やす方針という。炭素繊維は飛行機が中心では利益の大幅な拡大は難しそうだ。水の方は市場性は高いのだろうが、売上を伸ばすには途上国対応の低価格での提供も重要になるだろうから簡単ではなさそうだ。
買収対象のゾルテックは東レが手がけない低価格の炭素繊維複合材料の生産を得意であるという。炭素繊維市場を拡大するには自動車用途の拡大が最も有力となるが、東レは価格の高さが問題になっていた。大西盛行専務によると、目に見えない構造材などに使うと「オーバースペックになりかねない」ということだ。安く作れない理由を高性能に理由を求めて納得してしまっている。そもそも、鉄素材を構成材料として百年に渡って最適化した自動車産業において、強度の高い炭素繊維を用いることは最低限の品質はクリアーしても、最適からはみ出す要素が出る。これをオーバースペックというのは、使用者である自動車会社が言うセリフで、素材提供側が口にすることではない。この辺りに素材会社に限界を感じるが、これを超えなければ市場に広がることはない。市場は自分の都合でなく、顧客の都合で動いているのだから。


久しぶりに決算書をまとめた。大きな企業は読むのが辛い。

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