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2013年10月30日 (水)

日本の葉タバコ生産

日本たばこ産業(JT)は国内のたばこ事業再編の検討に入った。現在、6工場で手がける最終製品の生産を北関東工場(宇都宮市)など主力4工場に集約、原材料工場も含め中小4工場を閉鎖する。並行して営業体制も見直し、本体社員の2割弱にあたる1,600人程度の人員削減にも取り組む見通し。国内たばこ販売は減少が続いており、事業体制を一段と絞る。
閉鎖を検討しているのは最終製品を手がける郡山工場(福島県郡山市)と浜松工場(浜松市)、原材料工場の平塚工場(神奈川県平塚市)と岡山印刷工場(岡山市)。健康志向の高まりで国内のたばこ市場は1996年度をピークに4割縮小、昨年度の販売本数は1,951億本となった。JTの国内工場は2002年に31カ所あったが、需要減に合わせて統合を進めており、4工場閉鎖で5工場体制になる。来春の消費増税で需要のさらなる落ち込みも予想される中、人員削減にも踏み込む。JT本体の従業員は8,900人いるが、生産だけでなく支店など営業拠点も縮小し、大幅に人員を減らす。(日本経済新聞:10月30日)


葉タバコ生産について考える。


記事にある平塚工場は、東海道線の平塚駅から近い線路沿いにある。平塚市に近い秦野市や小田原市のJT工場も過去に閉鎖している。確認したら、秦野工場は1987年、小田原工場は2011年であった。秦野工場は記憶にないが、小田原工場は閉鎖する少し前に近くを通った記憶がある。神奈川県のこれらの工場は、秦野市を中心とした地域で葉タバコの耕作が盛んだった時代にさかのぼる。秦野での耕作は1984年に終了しているから、地域的な工場の存在意義は無くなったといえる。
葉タバコの生産量と輸入量の推移について確認した。近年の数字では判断できないので、農水省と財務省の発表をまとめたグラフで示す。
Ha_taba
葉タバコとしての輸入の他に、完成品の輸入もある。1990年以降、葉タバコは輸入、国内生産とみに減少傾向にあるが、完成品の輸入量は増加している。つまり、タバコの販売量は全体として減っているものの、輸入品は増えている。国内生産のタバコはとても減っているということである。タバコの販売不振は、健康志向とそれを推し進める策としての値上げが要因である。
葉タバコの栽培には、JTと売買契約する必要がある。契約は、たばこ耕作組合が農家の委任を受けて一括して行う。組合が無い場合には組合をつくってということになるが、現実的ではないだろう。葉タバコの種子は契約面積に応じてJTから無償で配布される。農家の収入は10a当りの販売代金が平均45~55万円で、所得率は65%という。葉タバコ代金に消費税も支払われるし、良質の葉を得る為に奨励金も用意されているという。
国内の葉タバコ農家の状況について確認した。結果を下に示す。

■ 国内の葉タバコ農家の状況
   年   年度面積(ha) 生産額(億円) 農家戸数(戸) 1戸当り生産額(万円) 1戸当り面積(ha)
  1985   47,801    1,999       78,653        254.1          0.61
  2002   23,038    1,093       20,758        526.4          1.11
  2006   18,512     686       14,417        475.8          1.28
  2007   17,669     693       13,696        505.8          1.29
  2008   16,778     694       12,981        534.7          1.29
  2009   15,769     681       12,169        559.2          1.30
  2010   14,980     542       11,437        473.6          1.31
  2011   14,083      -        10,801         -            1.30

栽培農家が減少していることが分かる。1985年に比べ2010年では栽培面積が1/3以下に減少し、戸数は1/7以下になっている。規模の小さい農家が止めたという推定は、2009年と2010年の比較で1戸当りの生産額が減少したことで、これからは相対的に規模の大きい農家も栽培を止める可能性を示すことになっている。
購入側のJTの立場で確認する。JTの葉タバコ購入推移について確認した。結果を下に示す。

■ JTの葉タバコ購入数量と金額 (単位:数量 = 千トン、金額 = 億円)
  年度  国産買入数量  買入金額  外国産買入数量 買入金額    価格差
  1985     116       1,998         60        875       1.19
  2002     58       1,092         87       595       2.76
  2006     37        685         62       302       3.79
  2007     37        692         72       381       3.50
  2008     38        694         80       437       3.33
  2009     36        680         76       428       3.33
  2010     29        541         57       318       3.32

買入金額は国産の方が大きいものの、近年接近している。国内の状況を考えると逆転する可能性は高い。葉タバコの単価で比較すると、1985年では外国産の二割増しだったものが、2010年には三倍強にまで差がついている。為替は円高方法に動いている期間であるから外国産に有利に働くにしても差が大きすぎる。
JTの本音としては、国内の葉タバコ農家を保護して高い葉を購入するより、外国産に切り替えたいというところだろう。タバコ販売の伸びが期待できない環境で、価格の高い原料購入を継続するのは厳しい。営利事業を行っている企業であれば、利潤を追求する為の選択が正しいことになる。JTは株式の過半数を国が有する株式会社ではありが、逆言えば約半数は民間が有しているということになる。葉タバコ農家の為に株主が不利益を被る理由は無いと主張するのも可能だろう。

日本の農産物は耕作面積が小さいことから、品質が高いものの、供給量に限りがあり、単価も高いという傾向がある。少ない面積で作業するから、品質以外に行きようがないという事情はこの国の他の産業にも類似した傾向として見て取れる。これを悪しとして農業の大規模化に舵を取っているのが近年の農業政策になっている。これでは単純に自己批判するだけで終わってしまうのではないかと心配する。そうは言っても、品質の高い農産物は高く売れるから輸出すれば良いという楽観的な意見には賛同しない。これは農業の実態を知らない者の発言に過ぎない。
自己批判もしない、おバカにもならないで、どうするかという結論は持っていない。もう少し国内の生産量を増やさなければならないというのと、可能なら輸出もしたいという思いには賛同するからまったく否定している訳ではない。しかし、都市部近郊の農家を絶滅させたのは、政治の無策によっている。都市部の市街化区域で農業を行うのは、禁止税的な固定資産税や相続税で困難になっている。虫食い状態の開発を許したのは、都市部をより都市化しようとした政策があったからである。東日本大震災で買占めに走らせたのは、食べ物が入手困難となる予想が信憑性を持ったからである。地産地消という、いかにも頭の悪いフレーズは、まずい物を地元で食えと翻訳されるべきものである。金を出せば買える状態であればそれで済む。有事とは金を出しても買えない状態を指す。簡単な解を得られる問題ではない。ということは、愚かな行為が最良の解である可能性もある。最適化を進めれば、不測の事態に於いて何も対応できないというのが、先の震災での経験であったと思う。


ユーザは高い税金を掛けられるなら、タバコに有害物質が含まれていないことの情報公開を求めて良いと思う。

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