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2013年10月27日 (日)

東北工業大学 岩崎俊一理事長の「文化勲章」受章

ハードディスクなど大容量の磁気記録の研究で文化勲章の受章が決まった岩崎俊一・東北工業大理事長(87)が10月25日、仙台市太白区の同大で会見し、「たいへん感激している」と喜びを語った。
岩崎さんは福島県生まれ。旧制山形中や旧制秋田中を経て東北大を卒業。東京通信工業(現・ソニー)に就職した後に大学に戻り、同大電気通信研究所長や東北工業大学長を歴任。秋田県高度技術研究所(現・県産業技術センター)の名誉所長なども務める。
磁気テープなど情報の磁気記録が研究テーマで、1977年に情報をより高密度に記録できる「垂直磁気記録方式」を提唱。この技術をもとに、現在のハードディスクの大容量化が実現した。1987年には日本学士院賞も受賞している。(朝日新聞:10月26日)


垂直記録の話に触れることにする。


岩崎俊一の業績として紹介されるのが垂直記録である。四半世紀前には業界では広まっていたから、実用化までの道のりの長かった技術である。改めて業績を読んだ。研究対象としたのは磁気媒体である。この年代というより、もう少し若い人も含めて、磁性体の研究で、磁気記録という応用方面であれば対象はヘッドであったと思う。媒体が塗布媒体となり、磁性体を含んだ溶液をプラスチックに塗るという製法が磁性体研究とは距離がある。媒体が技術的に劣っているということではなく、大学で研究対象とするには新規性や進歩性を表にするのに少々骨が折れそうだということである。
ハードディスクドライブ(HDD)の大容量化に貢献したという表現が以前は報道であったようだが、現在では磁気記録の研究という妥当な表現に落ち着いている。経歴を確認すると、東北大学電気通信研究所教授になったのが1969年、1986年に所長になり、1989年に退いている。1987年に文化功労者に選ばれている。1980年代は垂直記録が注目された時期である。表彰を受ける時代であったのだろう。業績としては、メタルテープの研究、そして、垂直記録に関する研究がある。

垂直記録のFDDが1980年代に出荷されていたが広まらなかった。リムーバブルな媒体は互換性が重視されるから使い勝手が悪いと採用されない。加えて容量も通常のFDの4倍程度とそれほど大容量でもなかった。この時代はまだPCが高価で、普及もし始めたばかりの頃であったから沢山売れる時代でもなかった。過去の技術開発の話を読んでみたら、プロジェクトX 風の展開になっているのが笑えた。笑い話ではないのだろうが、自分たちにしか分からない苦労話をされても困ってしまう。
1980年代に注目された技術が広く採用されなかった理由は、従来の長手記録方式の高密度化が進んだからである。長手記録を面内記録とも呼ぶが、水平記録という呼び方もされるようだ。水平記録というのは単独では妙な表現ではあるが、垂直の反対は水平らしい。垂直記録以後に使われる表現だろう。

長手記録の高密度化の達成には、塗布媒体が薄膜媒体に変わったこと、ヘッドが高感度なMR (磁気抵抗) ヘッドを採用したことなどが大きく貢献している。これらの技術を大容量へと導いているのは、ヘッドと媒体の隙間を小さくする技術、ヘッドの低浮上の実現にある。こっちの方は多くの企業と、多くの人が関わり貢献している。
磁気テープの特許を読んでみたらテープの表面粗さがRaで 0.02μmとあった。これは単位を変えると20nmとなる。テープはヘッドと媒体であるテープが接触する記録方式である。これに 対してHDDは、ヘッドが媒体 (ディスク) 上を浮上して一定の隙間を保持する記録方式である。接触と浮上では、浮上の方が離れていそうである。実際には、HDDのヘッド浮上量は10nmレベルにあると言われる。表面粗さが20nmで、塗布膜厚も厚い媒体では記録密度の高い記録は難しい。高記録密度とは記録の効率化であるから、情報を書き込むヘッドの磁束の広がりは小さくなければならないし、再生側のヘッドも媒体に残される磁気信号を感度良く拾わなければならない。1980年代にブームになった垂直磁気記録が2005年まで量産化に至らなかった理由は、道具がそろっていない環境では実用化されなかったという素朴な理由なのだろう。

いつもと様子が異なっているので、世界でのHDDの出荷台数の推移を示す。5年毎に各年の出荷台数を単位千台で示した。

■ HDD出荷台数推移 (単位:千台)
   年     HDD台数
  1981年      130
  1986年     7,670
  1991年     29,580
  1996年    108,670
  2001年    191,950
  2006年    430,043
  2011年    622,390

HDDで垂直記録が1980年代に実用化されても趣味の領域か、特殊な業務用に留まっただろうが、2005年以降の実用化であれば、数億台の市場規模のなかで差別化も可能となる。当然企業での研究開発費も大きくなっていた筈である。
現在のHDDは全て垂直記録と思って良いようだ。HDDのサイズとしては、2.5"と3.5"サイズが同じくらいで、2.5"はガラス基板を使用したディスクが、3.5"はアルミ基板を使用したディスクが用いられている。TDKの発表資料によると、1990年と2013年で、HDD会社は41から3に、メディア会社は21から4に、ヘッドは14から3に減っているという。市場規模は大幅に大きくなったが、開発投資も大きく生き残れる会社は少ないということのようだ。


磁気記録の関係者が表彰されるのは、何はともあれおめでたい。

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