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2013年9月27日 (金)

受刑者の選挙権、認めないのは違憲:大阪高裁判決

受刑中の選挙権を認めない公職選挙法11条の規定が憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の控訴審判決が9月27日、大阪高裁であった。小島浩裁判長は「受刑者の選挙権を一律に制限するやむを得ない理由があるとは言えない」と指摘。「規定は違憲」とする判断を示した。(朝日新聞:9月27日)


投票したいと思った受刑者がいたということである。少し考えてみる。


刑務所内で選挙権があるか否かについて考えたことがなかった。公職選挙法で処罰されている受刑者なら投票権が制限されるだろうが、窃盗の受刑者に停止する理由は見当たらない。しかし、行動の自由を制限するというのが懲役刑という刑罰であることからすると、選挙権に制限が掛っても仕方ない気持ちもある。被選挙権の方は、議会への参加が出来ないから制限されて良いように思う。こっちの方は議論にならないだろう。
今回の裁判の原告は、受刑中のため2010年7月の参院選で投票できなかった元受刑者の男性(大阪市西成区)であるという。公職選挙法11条では、禁錮以上の刑を受け、執行が終わるまでの人には選挙権や被選挙権がないと定めている。男性は、この規定に基づいて違法に選挙権を否定され、精神的苦痛を受けたとして国に100万円の国家賠償を求めていた。なるほど、選挙権は停止されるという法律があるのだった。しかし、この法律が不適切な規定だと思うに至ったようだ。
裁判で国側は、受刑者には公正な選挙権の行使を期待できないと主張したようだが、正面切ってこう主張されると違うのではないかと感じてしまう。判決で裁判長は、受刑者であることのみから、ただちに法を守る意識が著しく欠けるとはいえない、として退けている。国の主張を追認すると、人権意識が乏しい気がしてしまうから原告の主張の方が魅力的にうつる。行使が期待できないではなく、懲役刑が自由を制限する刑罰であるから、制限される行為に選挙権も含まれるとは主張できなかったのだろうか。公正な選挙が期待できないことを全ての受刑者について主張するとは、論理的なほころびが生じる可能性が高い。つまり、たった一人の公正な選挙が期待できる受刑者が存在すればこの論理は否定される。原告が規定できない受刑者であったという主張なら具体的かつ、容易に検証可能な主張となるが、こちらのほうがほころび易いかもしれない。無理が通れば道理引っ込むというのは裁判所には馴染まない。
裁判長は加えて、憲法改正の国民投票については受刑者にも投票権が認められているとし、不在者投票で選挙権を行使させることが実務上、難しいとはいえない、と指摘している。受刑者であることを理由に制限するのは違憲との判断を示した。国家賠償については違法とはいえないとした。大阪地裁では、受刑者が一定の社会参加を禁じられるのはやむを得ないと判断し、違憲確認の訴えを却下していたという。と、いうことは大阪地裁の判決も確認しなければならない。

2013年2月6日に大阪地裁(山田明裁判長)で判決があった。判決は、一定の刑罰を受けた者に対し、法秩序に対する違反が著しいことを理由に、受刑中の社会参加が一定の範囲で禁止、制限されることはやむを得ないとして、違憲確認請求を却下し慰謝料請求を棄却している。弁護側は、受刑者の選挙権を一律に否定する規定を違法・無効とする判断が相次ぐ世界の潮流を指摘しているという。世界の潮流とかグローバルスタンダードという言葉を使う理由は、思考の停止をしたいからだと確信している。隣の家がこうしているから、この家もこうしようというのは小学生の使う典型的なセリフである。隣との違いにより整合性が取れない事情が出ているというなら分かるが、同じようにしないと乗り遅れるよというのは隣の家が必ず正しいことが前提となる。それは本当なのかということを考えるより、自分自身が提示された問題に真剣に考えて答を出すのが正しい行為だと信じる。
人権派弁護士の主張 (国連の自由権規約25条違反とか) は考えないで、原告の主張を拾ってみると、未決勾留者には選挙権が認められており、辻褄が合わない。選挙違反を犯したわけでもないというのがあった。辻褄が合わない部分については同意できる。ところで、この原告はなぜ懲役になっていたのかと疑問を抱く。個人的な事情は公開されないのだが、部分的な情報はあった。
原告は、釜ヶ崎地域合同労働組合委員長として長年、日雇労働者や野宿者の支援活動に取り組んできた。2008年6月には府警・西成署で暴行を受けたと訴える男性の相談を受け“怒れる労働者たち”とともに抗議活動を繰り広げた。その際、市道に車を止めて街宣活動をしたとして道路交通法違反容疑で逮捕され、懲役2カ月の判決が確定した。これに伴い確定していた別の刑の執行猶予が取り消された。野宿労働者のテントを大阪市職員らが撤去しないようビデオ監視して「威力業務妨害」罪に問われたもの。結局、2010年3月~11月、滋賀刑務所で服役し、同年の参議院議員選挙では投票できなかった。(週刊金曜日ニュースより)
ある種の活動家ではあるようだが、あまり礼儀正しい活動家とは言えない事情を持つようである。国家権力に弾圧されたと主張するのだろうと予想するが。

最高裁でも高裁と同様の判決の可能性もある (もちろん地裁と同様の可能性もある) 。違憲となれば法律の改正をしなければならないが、どうするか。長期刑の受刑者には制限し、短期刑は可とするのは実務的 (刑務所が異なるから) だが、どこの選挙区にするのだろうか。刑務所の所在地を現住所とすると、3カ月前までにそこにいないと投票権が別になる。なんだか面倒な話である。入所の3カ月間は投票権を停止するという制限を、事務的な事情を理由に加えるのはできそうだが、人権派弁護士に努力せよとお叱りを受けそうである。地方議会の選挙ならどうだろう。2012年10月に行われた利島村議会議員選挙は、定数6のところ7人が立候補している。有権者数256人で、投票者数240人、(投票率 93.75%) である。最多得票数が48票で、最下位当選が22票、落選が21票である。現住所を利島にあると主張したら、村議会議員候補者は刑務所で立会演説会をしなければならなくなる。利島村は東京都の島で、伊豆諸島にある。郡というのはないので、東京都利島村である。郵便番号は100-0301である。
地方議会への参加は問題が発生しそうな気がする。国政選挙のみが現実的だが、果たしてどうするのか。違憲判決に鈍感な国会のようなので、ほったらかしにしそうである。それだけはして欲しくないと思うのである。


原告の事情はもう少し報道された良い。痛みがある主張だから裁判所に行く理由がある。空虚な理論が飛び交うだけなら学会でやれば良い。

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