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2013年9月 5日 (木)

北陸新幹線工事、官製談合の疑い

北陸新幹線の融雪設備工事を巡る談合疑惑で、談合に関わったとみられる設備工事会社の担当者が「入札前に発注元から予定価格を聞いた」などと公正取引委員会に説明していることが5日、分かった。公取委は工事を発注した独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が予定価格を漏らした疑いがあるとみて、官製談合防止法の適用も視野に調査を進める。(日本経済新聞:9月5日)


談合の内容からして、役所が一枚噛んでいると思ったが、その流れになっている。談合について考える。


公共工事の入札に関して、業界の人間が談合する行為があると批難されるのは、自由競争が阻害され、工事費用 (つまり税金でだ) が高くなるという考え方で犯罪行為とされるからである。これは一つの論理ではあると思うが、公共工事に関していえば、不当に安い価格で入札して手抜き工事をされることを排除することの方がより重要な要点である。日本の公共工事や建物建設といった事業で、手抜き工事による事故発生はあれば話題になるのだが、これは逆に言えば手抜き工事の少ないことを示している。笹子トンネルの天井板落下事故はどうだという話はあるが、絶対数として少ないし、程度が悪いものが少ない。道路を建設して数年したらアスファルトの表面に緩やかな凹凸が生じたり、道路の周囲が崩れたりするのが普通に発生する国もある。途上国なら資材や工事技術の問題と片付けられるだろうが、そうでない国でこのような事例が幾らもある。
不当に高い価格という表現があるが、不当に安い価格という事実もあるのである。不当に安いことは、安いに伴う質の悪さを伴う訳だから、その質の悪さが長期的には維持コストとして跳ね返って来て総合的には安くないということになるのである。このような事例を発生させない為の予防策として入札があると考えた方が良い。手抜き工事は価格が高くても同様に発生するのではないかとも考えられるが、手抜き工事を予防する為の点検は行われるから現実には発生しない。悪意のある作業者が実施すれば想定外の作業を行う可能性もあるのだが、入札資格として過去の作業実績を設定しているから一見さんお断りにはなっているし、規模の大きな事業なら経営状況の分析も必要だから、そこまで悪意のある業者を想定する必要はない。もちろん、粉飾決算をすることもあるだろうし、倒産直前の資金回収に最大の手抜く工事をする可能性もあるだろう。これらの危険因子を排除するのが、入札前の審査作業なのである。
よって、競争入札が工事費を抑制すると素朴に考えるのには無理があることが分かる。現在の公共工事のように高度に専門化された作業が求められる世界では、その仕事が大きな市場規模がないものの、不可欠である業務が存在する。そのような業務を持つ会社は、競争力はあるが市場が小さい業務と、競争力のない市場の大きな業務をバランスさせて経営している。競争力のない方は他社に置き換え可能なのであるが、それを全て別の会社にしてしまうとこの会社の経営は行き着いてしまう。そうなると業界での仕事に不都合が生じる。かといって、この会社を吸収する会社もないのだから、業界の都合として、この会社には生きていて貰わなければならない。
今日の談合と、昔の伝統的な談合とで、ここに大きな違いがある。もちろん昔の談合でも、小さな業者に親方が専門性に合致する業者に配分するという方式をある期間で実施していたという見方もできるだろうが、業者が集まって入札価格や、受注後の仕事の分け方を話し合うということは、公取委に嫌う談合の典型例となる。公共事業が減って中小企業は疲弊して、談合による受注調整ができないとなれば会社は事業撤退を選択する。東日本大震災の復興事業で、作業が思うように進まない訳は公共事業が減少したことにより、事業者数が減っていることも大きく影響している。有効需要があるのだから参入する業者や、事業拡大する企業があるだろうという自由主義的な考えは上手く機能しない。この四半世紀公共事業は減少し続けている。道路や橋やダムを造ることは無駄であり、悪であるとさえ思われている。今回の震災の影響による需要は十年分を超えるかもしれない。しかし、その先にはまた事業は減ると想像される。そんな市場環境が容易に想像されるのに、苦労する仕事に自分の子供や孫に就かせたくないと思うのが親である。儲かるからやりたいという社員の為に経営拡大をすれば良いというのはもっともな話だが、社員を子と思うのがこのようなタイプの企業の経営者なのである。ゼネコンは違うというが、鹿島建設も大林組も設計事務所でしかない。実際に作業にあたるのは地元の業者でなのである。この国で高度成長で良い思いをした企業に対して、この四半世紀叩き続けたつけがこのようなところに出ているのである。

実質一社しか入札しない案件で、予定価格より高くて入札が不調となり、再入札となったが入札を辞退する状況が発生する可能性はある。入札が成立しないことは、予定価格を算出した担当者の不手際と考えられるから、担当者としては何としてでも避けたい。会社が他にないのに入札するという行為は無意味であるが、この無意味な作業を法律が求めているのである。全国市民オンブズマン連絡会議は、落札率が90%以上は談合の疑いがあり、95%はその疑いが極めて強いと指摘しているようだ。しかし、予定価格の算出が妥当であれば、その価格で実施して貰えば良いだろう。競争を煽ることが市場を活性化するというのは、このような市場では成立しないだろう。役所が一枚噛んでいるようなのは、この現実を見たときに競争入札は意味がないと感じているのだろう。
勝手な想像であるが、価格を安くすると業者がやらないというから、なんとか受けて貰える価格を設定する作業を担当者は行ったのではないか。融雪設備を新幹線に適用するという工事は、全てを引き受けるには負担が大きいから、関係する会社で調整 (これを談合と呼ぶのだが) したのではないだろうか。調査を受けているのは東京の企業が多いが、現地の企業との事前交渉をしているだろう。現地の企業と取引可能な会社は実はそれほど多くはないのではないだろうか。

適切な予定価格の算出が行われるなら、受注業者は入札資格の審査に合格した会社に任意に予定価格で実施して貰えば良い。競争して安くしようとしないで、適切な価格で実施することを重視する時代になってよい筈だ。
皇居の石垣を積み直す工事があったら、受注するのは間組だろう。これは談合ではなく、出来ない会社には発注出来ないという自然な論理である。融雪設備を敷設するのがそれと同様に扱って良いかには少し違和感はあるが、近いものがあるのだろうということには了解する、競争命の入札制度一本やりを改めたら良いと思う。全国市民オンブズマン連絡会議には批難される考え方であろうことは承知しているのではあるが。


安くてひどいめにあったエレベータの件は、競争入札の陰の産物だと思う。

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