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2013年9月21日 (土)

3カ月の業務停止命令 自費出版会社の日本文学館

「選ばれた作品」などとうそをついて小説などを自費出版するようしつこく勧誘したのは特定商取引法違反(不実告知など)に当たるとして、消費者庁は9月20日までに、出版社の日本文学館(東京・新宿)に新規勧誘などの業務停止を命じた。期間は9月20日から3カ月間。
同庁によると、同社はホームページや月刊誌で小説や詩を募集。応募者に電話をかけ「選び抜かれた作品」などと優秀作であるかのように装って自費出版を勧め、断っても「印税を出版費用に充てられる」としつこく誘っていた。
契約した人が負担した出版費用は63万~約100万円だったのに対し、1,000冊以上売れても印税収入は数万円だった。2011年3月~2013年2月の契約者は延べ1,161人。全国の消費生活センターに110件の相談があり、最大170万円支払った人もいた。(日本経済新聞:9月21日)


自費出版について考えてみる。


日本文学館という会社は、公募の文学賞を運営している。この会社に限らないが、公募の文学賞は、良い小説家を発掘しようというより、自費出版の勧誘の要素が強い。日本文学館は誰もが文章を書けるをコンセプトにしているのだから、多くの人が出版することが良いことだという意味合いはあるのだろう。自費出版と書いたが、自費出版は製本した後の処理は発注した依頼人が行うが、商業出版のように書店に流通するような出版を行う方式を共同出版と区別する。流通するのだからISBN番号も付与されるし、そうなると国会図書館にも保管されることになる。このあたりが殺し文句になっているだろうことは容易に想像が付く。区別が面倒なので以下、自費出版と呼ぶことにする。
類似した話が過去にあった。新風舎が2007年に商業出版の様な話で自費出版を著者に持ち掛けて問題を起こした。全国の書店に並ぶと話したのに、数カ所の書店にしか並べられなかったという事件で、出版社が裁判で負けている。この裁判の結果によるというより、この無理が祟ったのか、新風舎は2008年に倒産している。
日本文学館は、出版したい人に出版の機会を与えて、読者が多いものについては規定の印税 (著作権使用料と書いた方が適当だと思う) を支払うというビジネスである。売れそうにない作品も出版するから、出版会社で費用を負うと大変だから印刷・製本等の費用を著作権者に負担して貰って、個人では手におえない販売については協力するという図式である。この作業分担は妥当な方式だと思う。これで問題が生じるのは、初期の支払い費用が高いことと、売れると言ったのに売れなかったという二つと思って良いだろう。
本を作成する費用は、1,000部作るとすると実費は50万円を超えるだろうと想像される。本はハードカバーで適当なページ数を想像して貰って良い。カラーページは無いものとしている。ここで部数を100にしても総額はそれほど変わらないだろう。つまり単価が印刷部数で、500円から5,000円になるということである。
著者から届いた書類を印刷製本するだけならこの費用で済むが、実際には校正作業を行うだろう。それも複数回行う可能性もある。電子ファイルで情報を与えられたのなら作業負担は小さいが、手書きであれば入力と点検が必要となるから負担は増える。素人の書いた文章の校正作業など想像したくない作業だろう。100万円を出版費用に充てるのは安くはないが、不当に高いというものでもない気がする。しかし、1,000部売れるというのはほとんどないだろう。自費出版のカテゴリーは書きたい人が書きたいことをまとめた本だから、読み手の都合を考慮して売れる本を作るという作業とは異質のものだということである。売れるようなものに近付けるのが出版社の仕事であるが、自費出版にはそのような仕事はしないだろう。売れないものを売れると言ったのなら問題がある。
出版年鑑2013から、2012年の出版数を下に示す。

■ 出版年鑑2013  2012年国内出版数
  書籍新刊点数   82,204
  社会科学      16,094
  文学         13,893
  芸術         12,763
  技術          9,104

自費出版は文学か社会科学に属していることだろう。出版年鑑2007によると、2006年の新刊数は 80,618 で2012年と同じ水準である。この年に新刊数が最も多かったのが新風舎で、2,788である。2位は講談社で2,013とのことである。新風舎は自費出版が圧倒的に多い会社であったようだから、この中に騙されたという人もあるのだろう。

書籍の市場規模が小さくなっており、出版会社、印刷会社は事業の変革を進めなければならない状況にある。出版会社であれば電子書籍の可能性も検討できるが、印刷会社であればそうもいかない。そもそも電子書籍のノウハウはこれから構築されるものであるから、既存の会社より新規に事業を始めるベンチャーの方がしがらみがない分取り組みやすいだろう。
そんな環境にあっても自費出版は増加傾向にあるという。自分の人生を振り返ったものを書籍に残したいという希望は多くあるようなので、団塊世代の定年退職と結び付いているとも考えられる。ここに市場性があると考えたのは正しい判断であるし、本の仕上がりを良くする為に校正作業に協力するのも妥当だろう。しかし、営業活動でウソを付いてしまってはいけない。日本文学館は業務停止によって多くのお客を失うことになるだろうから、今後は業務の仕方を変更を余儀なくされることだろう。現実には事業の継続は難しいのだろう。

文学賞に応募すると出版のお誘いが多数届くという話は少し前から聞く。勧誘をするのは商売だから仕方ないのだが、投資用のマンションや金融商品と同じ扱いになるというのは、夢を語る商売には馴染まない。もう少し上品な商売の仕方があるのではないかと感じる。


このブログを書籍化しませんかというお誘いはない。さすがに売れないと思うのだろう。

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コメント

>現実には事業の継続は難しいのだろう。

その通りかと思います。ホームページに掲載されている新刊情報によると、かつて毎月20~30件あったのが去年の5月からは一桁です。

どういう事情によるのかわかりませんが、去年年末に社屋を移転したそうです。しかし、ホームページにはそのことは一言も告知ありません。果たして、どういうところに移転したのかと思います。

何と何と、5月の新刊はたったの1冊です。

これでいったい企業活動が成り立つのでしょうかね。

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