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2013年8月21日 (水)

「はだしのゲン」閲覧制限

◆ 「はだしのゲン」を閲覧制限 松江市の小中学校 市教委が表現を問題視 (日本経済新聞:8月17日)
松江市教育委員会が、原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」を子供が自由に閲覧できない「閉架」の措置を取るよう市内の全市立小中学校に求めていたことが8月18日までに分かった。
市教委によると、首をはねたり、女性に乱暴したりする場面があることから、昨年12月に学校側に口頭で要請。これを受け、各学校は閲覧に教員の許可が必要として、貸し出しは禁止する措置を取った。

◆ 「はだしのゲン」閲覧制限は不要=広島知事 (時事通信:8月20日)
広島県の湯崎英彦知事は8月20日の記者会見で、松江市教育委員会が市内の小中学校に広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を要請していたことについて、「制限は必要ないんじゃないかと思っている」と異論を唱えた。
知事は「はだしのゲンは、広島の原爆の実相を伝える一つの資料として長年、たくさんの方が読み継いできたものだ」と指摘。一部描写が青少年向けとしてふさわしくないとの意見に関しては、「理解を助ける指導があるのは望ましいことだが、だからといって(閲覧を)制限するというものでもないし、大人がいないと読んじゃいけないというものでもない」と述べた。

◆ 「教育的配慮は必要」=はだしのゲン閲覧制限に下村文科相 (時事通信:8月21日)
下村博文文部科学相は8月21日の閣議後記者会見で、松江市教育委員会が広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を市内の小中学校に要請したことについて、「学校図書館は子どもの発達段階に応じた教育的配慮の必要性がある」と述べ、要請は市教委の権限に基づく行為で問題ないとする認識を示した。
下村文科相は、「漫画の描写について確認したが、教育上好ましくないのではと考える人が出てくるのもありうる話だ」と指摘。「学校図書館以外で、読みたい人が読める環境が社会全体で担保されていれば良いのでは」と話した。


以上は、松江市教育委員会が市内の小中学校に広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を要請した件に関わる報道を拾ったものである。図書館のあり方について考えることにする。


小中学校の図書館は、学校図書館法によって運営が規定されている。学校に設置された図書館であり、"図書館の自由に関する宣言" の図書館である。市教育委員会が学校を管理する立場から指導して良いこととはレベルの違う要件であることを理解しなければならない。閉架措置を求めてはいけなくて、最大譲っても図書館の考えを聞くまでであろう。これとて問題のある行動であるのは明らかであるのだが。教育委員は、議会の承認で首長に任命される。この結果、教育委員は地方議会、主に首長と密接な関係を持っていることが多いようである。ただし、教育委員には政治的な偏りが生じると問題だとする意識があり、特定の政治団体に所属する委員が過半数を占めることを排除する規定がある。政治心情まで問題にしている訳ではないから、政党に入っているか否かだけの規定である。教育委員会の権限が強く、官僚的な組織であることから問題視されることも多い。強い権限を持っていると認識しているから、学校に指導しようとするのだろうが、立場をわきまえない愚かな行動であると指摘しておこう。
図書館の自由に関する宣言の中から、今回の事例に関係のありそうな部分を拾った。

■ 図書館の自由に関する宣言
                         
                         
                                                  1954 採 択
                                                  1979 改 訂
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
-----------------------------------------------------
1. 日本国憲法は主権が国民に存するとの原理にもとづいており、この国民主権の原理を維持し発展させるためには、国民ひとりひとりが思想・意見を自由に発表し交換すること、すなわち表現の自由の保障が不可欠である
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第2 図書館は資料提供の自由を有する

1. 国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
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以前、佐賀県武雄市の図書館の管理をCCC (カルチュア・コンビニエンス・クラブ) が行うときに書いた気がするが、図書館資料の提供は自由に行われなければならない。これが制限されることは許されない。公序良俗に反する図書もあることと思うが、それであっても閲覧可能にするのが図書館のあるべき姿であろう。成人向け雑誌を開架扱いで良いかという話については、閉架である必要があるだろう。猥褻な図書として発行禁止になった資料をどこも保管管理していなかったら、判決内容の確認に困るだろうということは当然ある。だから、はだしのゲンがこれに相当すると考えるのは後で付けた言い訳に過ぎないだろう。
はだしのゲンは掲載誌が移っている。週刊少年ジャンプという一般の少年誌に連載された部分を第一部とし、それ以降を第二部と分けるのが普通のようだ。掲載誌と掲載時期を下に示す。

■ はだしのゲンの掲載誌
  1973年-1974年  週刊少年ジャンプ
  1975年-1976年  市民   (オピニオン雑誌)
  1977年-1980年  文化評論 (日本共産党系)
  1982年-1985年  教育評論 (日教組の機関紙)

第二部が左翼系の雑誌に連載されたことが分かる。作者が左翼系の雑誌のコンセプトに合わせた作品にしたという意見もあるようだが、商業誌で制限のあった第一部と、原爆反対の姿勢を自由に表現できる環境であった第二部の違い程度のものだと思った方が当たっているのではないか。月刊自由民主に連載したからといって、原爆反対の姿勢が弱くなる訳ではあるまい。もちろん、月刊自由民主に連載するというのが有り得ない組み合わせなのだろうが。
左翼系の資料は児童の目につかない所に置いておこうというのが、ひどく知恵の感じられない所業なのである。見せないようにすれば見たがるのが子供の心理である。真剣に教育上、首をはねたり、女性に乱暴したりする場面に問題があると考えるなら、それに相応しい解説と指導を出来る体制を学校に求めるのが正しい作業であろう。
自民党の憲法草案で表現の自由について、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行うことを認めないとしているから、教育委員会は左翼系の活動は公の秩序を害すると判断したのかもしれない。この憲法案は議論もされていないものだから、施行されたとあわてて対応したのなら、随分とうっかりしたものである。
文科大臣の下村が言う、読めるところがあれば良いという発言にはあいた口がふさがらない。読めるところを国会図書館のみにするのと大差ない。猥褻図書ならこれくらいでも良いが、少年誌や雑誌に連載されたものを制限する理由はない。図書館を小さな存在だと扱う驕りが見えてくるようだ。権力に酔う人間は、平衡感覚を失うものらしい。


下村には、崇教真光が公の秩序を害すると指定される可能性を想像する能力はないのか。

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