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2013年8月18日 (日)

タクシー減車義務化 運転手労働条件改善へ法案

自民、公明、民主3党は、国がタクシーの台数制限を事実上義務づける「タクシーサービス向上法案」で合意した。規制緩和による競争激化で悪化した運転手の労働条件の改善が目的。これまでの事業者による自主的な供給削減(減車や営業時間の制限)では不十分と判断した。秋の臨時国会での成立を目指す。「小泉構造改革」の象徴の一つだったタクシーの規制緩和を抜本的に見直す。(毎日新聞:8月18日)

小泉時代の規制緩和の流れを見直すことに決めたということのようだ。タクシーについては以前も書いたが、何か新しいことに気付くこともあるだろう。タクシーの規制緩和について考えてみる。

2002年2月に施行された改正道路運送法で参入が原則自由化され、料金設定の地域内同一料金も10%の自由度が発生するなど自由競争が促進された。当時の説明として携帯電話料金は自由競争によって非常に安くなったという説明がなされていたと記憶する。ダメダメな発想なのだが、理由は携帯電話会社が電波使用に関する法律が強くかぶされた中での大企業間の競争であるのに対し、タクシー会社は小規模の会社の集合体であるので競争を全面に出せば違法行為に走る可能性が高い業種であるから、これを単純比較するのは頭がおかしい人だと感じた。
タクシー業界は自由参入が可能となり、車両数が増えて、駅前に客待ちタクシーが溢れるようになり、乗務員の給料は減るということになった。タクシー料金がとっても安くなったとは聞かないし、乗務員の対応が良くなったという話も聞かない。
あれほど溢れている駅前タクシーも雪の日にはまったく見掛けなくなる。利用者が増えれば台数が増えても良いものであるが、そうはなっていない。雪の日には利用者は数倍になるだろうが、タクシー台数は数分の一になるだろう。理由は簡単で、雪の日は走行スピードが落ちるから距離を稼げない。売り上げは距離に走行時間の補正を加えた料金体系であるから、走れない日はうま味が乏しい。一方で接触事故があった場合には、修理代の一部負担をする会社もあるというから、事故で売上は吹っ飛ぶことになる。歩合型の賃金であれば走る理由がない。雪の予報があれば、タクシーは冬タイヤへの履き替えを行うだろうが、一般の車両はすべてがそうする訳ではない。雪国の人が見れば笑ってしまう程度の積雪で交通機関が麻痺するのは、全体が動かないのではなく、もともと道路にある自動車数が多いところに慣れない状況で停止する自動車があれば全体として機能不全が生じるということである。電車についても同様だろう。

既得権に守られた業界は、料金が高く、サービスも悪いから、自由競争にしなければならないという考え方の人がいるようだ。2002年以降に、それ以前より料金やサービスが顧客にとって良くなったかを考えてみると、ほとんど変化がないというのが多いだろう。携帯電話料金の比較では改善されたという声が多いだろうと思うから、自由競争によって改善がもたらされる業種とそうでないものがあると理解しなければならない。判断の目安としては、少数の大企業には自由競争の効果があるが、多数の小企業には効果は乏しい。大金持ちが出る産業なら自由競争させればよいが、貧乏人ばかりの産業には馴染まない。というところだろうか。

タクシー乗務員の年収の推移を、社団法人東京乗用旅客自動車協会が発行しているタクシー白書シリーズ (東京のタクシー2012) を参考にまとめた。東京都の男性労働者(全産業)の平均年収とタクシー乗務員の平均年収、二つの平均年収の比 (全産業比) の推移を下に示す。

■ 東京都の男性労働者の平均年収とタクシー乗務員年収の推移 (単位:万円)
   年   全産業  タクシー   比
  1967     77     82    106%
  1968     88     85    97%
  1969     98     87    89%
  1970    116    102    88%
  1971    133    105    79%
  1972    154    136    88%
  1973    184    166    90%
  1974    229    206    90%
  1975    259    223    86%
  1976    292    233    80%
  1977    326    257    79%
  1978    348    283    81%
  1979    365    307    84%
  1980    395    331    84%
  1981    418    352    84%
  1982    444    363    82%
  1983    460    377    82%
  1984    480    400    83%
  1985    496    428    86%
  1986    519    431    83%
  1987    525    462    88%
  1988    541    474    88%
  1989    579    500    86%
  1990    608    530    87%
  1991    634    565    89%
  1992    642    570    89%
  1993    642    516    80%
  1994    659    516    78%
  1995    669    528    79%
  1996    678    526    78%
  1997    683    524    77%
  1998    688    496    72%
  1999    672    467    69%
  2000    669    443    66%
  2001    683    436    64%
  2002    676    456    67%
  2003    663    436    66%
  2004    658    421    64%
  2005    672    406    60%
  2006    679    431    63%
  2007    691    448    65%
  2008    669    436    65%
  2009    661    365    55%
  2010    634    348    55%
  2011    652    379    58%

バブル以降タクシー乗務員の年収は減収傾向にある。バブルの弾けた後にピークを迎えている。この時期のタクシー乗務員の業務は世間並の収入が得られる仕事であった。バブル期には長距離タクシーを利用する行為が当たり前になされていたようだから、割の良い仕事となっていたのだろうと想像される。その後、規制緩和を挟んでいるものの、下がる傾向は止まらないでいる。
同じ資料から、タクシー業界の実態についての推移をまとめた結果を下に示す。

■ タクシー業界の状況の推移
        《    1日1車当り     》
   年   走行キロ 実車率 運送収入  輸送人員 実働率 1回当たり利用距離 タクシー台数
        [ km ]    [ % ]   [ 円 ]    [百万人]  [ % ]   [ km ]
  1989   331.7    55.7   54,321    415    91.7    5.1
  1990   323.1    55.4   56,551    392    88.2    5.2
  1991   323.4    55.2   56,825    387    86.4    5.3
  1992   309.4    52.1   56,601    368    87.5    5.1
  1993   304.4    50.0   54,554    370    89.5    4.8
  1994   308.9    49.4   55,057    379    90.9    4.7
  1995   306.2    48.4   57,950    368    90.7    4.7        256,875
  1996   306.2    47.9   57,641    367    90.1    4.6        255,984
  1997   305.3    47.3   57,693    362    87.0    4.5        256,403
  1998   293.6    45.1   53,114    354    86.9    4.4        256,403
  1999   288.3    44.4   51,584    348    87.3    4.3        257,780
  2000   289.3    44.8   52,274    351    86.5    4.3        257,088
  2001   286.4    44.3   51,348    347    85.6    4.2        256,343
  2002   279.0    43.8   49,475    347    84.7    4.2        259,033                
  2003   274.6    43.4   48,307    345    84.5    4.1        263,282        
  2004   272.4    43.8   48,289    348    83.5    4.1        267,141
  2005   273.1    44.8   49,497    358    81.4    4.1        270,703
  2006   276.2    45.6   50,604    365    79.5    4.1        273,181
  2007   272.3    45.5   50,742    355    78.2    4.2        273,740
  2008   257.0    42.0   46,333    312    78.6    4.1        273,529
  2009   243.5    39.2   41,148    284    81.6    4.0        271,327
  2010   244.4    39.7   41,915    272    85.2    4.0        265,431
  2011   247.9    40.7   43,514    266    85.1    4.0        251,466

規制緩和で車両台数は一割増えたが、利用距離は一割減り、輸送人員は3/4になった。これで労働条件が改善する訳もないから、前記の年収減へとつながっている。
国が車両数を一律に減らすようなやり方はカルテルになるとの見方があって作業方法に悩んでいるようである。国がやって問題があるなら、タクシーの事業者組合でやったらそれこそ公正取引委員会が出張ってくることになるだろう。
新自由主義を標榜する政治家は、能力の高い人や既に大きな資産を有する者の味方なのだろう。この手の人達は政治資金を出せる能力もあるだろう。自由競争は弱者切り捨てになりがちであるのは否めない。それを理由に競争を排除すると、少し前の社会主義国家の崩壊と同じ流れに乗ってしまうだろう。規制緩和でサービスの改善が期待できるのは条件が整った局面だけで有効なので、何でも自由競争にすれば良いというのは単純過ぎる。小泉改革は単純化してものを深く考えない政治行動で統一されていたから、自由競争こそがすべての成長の源であるという宗旨を掲げて、これに反対する者は抵抗勢力と排除していった。そんな簡単な話でないのは竹中平蔵は承知であっただろうが、この経済学者には経済学的な興味はあっても、将来の国家の在り様には興味は向かなかったのではないだろうか。あるいは、弱者には関心がないということかもしれない。

国が旗を振るカルテルは嫌悪するのだが、業界団体のカルテルは大好きである。生き残る為の手段として脱法行為に手を染めるというは、その身内からの裏切りの可能性も排除できないなかで危険を覚悟の行為である。この生き残る執念は、新しい産業を創り出す執念に通じるものだと考える。これを国が音頭を取って行うなどという、安全を国に担保させた行為など堕落以外の何物でもない。
国がぬるいカルテルなんぞに手を出してもろくなことは無い。タクシーを減らしたいなら、主要な駅に乗り入れ可能なタクシーを電気自動車に制限すれば良い。都市部の温度上昇を抑制するのに有効だから、環境対応を御題目にすればよかろう。電気自動車では長距離走れないというなら例外規定を設ければ良い。カルテルよりよっぽど簡単である。ただし、電気自動車にハイブリッド車を含めてはいけない。これでは既得権者を保護する行為になってしまう。出来ない提案をするからフェアな競争となるのである。出来そうな提案は有利不利が大きく出てしまう。有利を最大化する為に業界団体が政党に働きかけをするというのを癒着と称するのではないだろうか。日本共産党にもこの手のチェック機能は生きているだろうから、是非指摘して貰いたいものだと思う。
まあ、現政権は既得権者の保護政策を柱にしているから、これほど大胆な行動にはでないだろう。逆に既得権者が多すぎてまとまらない状態になっているのは、TPPへの対応を見れば容易に理解できる。


安倍晋三を好まないのは、noblesse oblige の匂いがしないからである。戦場に兵士を送り込む一方で自身の身の安全を計り、身内の兵役義務を回避するような行動を取った戦前の政治家に近い臭いを感じる。安倍には子供が居ないようだが、親類はいるだろう。この国の為に命を奉げることを求めるなら、自らがまず奉げれば良い。

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