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2013年8月13日 (火)

DELLの経営状況

PCの市場環境に続いて、DELLのPC市場でも位置について考える。

主要PCメーカの出荷台数の推移を調べた。基本的にIDCの発表している数字を採用した。結果を下に示す。

■ 四半期毎のPCの主要メーカ出荷数量の推移 [単位:kpcs]
          PC      Lenovo   HP     Dell   Acer Group ASUS  その他
  2010 CQ1 85,232     6,253   14,944    9,868   10,610     ---    43,557
      CQ2 82,289     8,363   14,823   10,626   10,190    4,216    34,070
      CQ3 89,903     9,868   15,420   10,829   12,613    ---     41,174
      CQ4 93,480     9,482   17,582   10,801   11,853    ---     43,764
  2011 CQ1 85,138     8,143   15,229   10,338    8,953    4,310   38,164
      CQ2 84,413    10,276   15,263   10,927    9,160    4,468   34,320
      CQ3 96,080    12,543   16,679   11,039    9,307    5,798   40,714
      CQ4 95,913    13,040   15,113   11,967    9,692    6,126   39,974
  2012 CQ1 88,633    11,705   15,726   10,110    8,952    5,401   36,739
      CQ2 85,374    12,802   13,414     9,633    9,241    5,820   34,464
      CQ3 87,795    13,824   13,946     9,499    8,414    6,381   35,732
      CQ4 89,789    14,105   15,023     9,482    6,959    6,467   37,753
  2013 CQ1 76,295    11,700   11,997     9,010    6,150    4,363   33,075
      CQ2 75,632    12,619   12,378     9,230    6,226    4,590   30,589

DELLのPC出荷台数は落ちているものの、他の会社も落としているからDELLだけに限った話ではないようにも見える。Lenovoが2011年下期から急成長しているように見えるのはNECのPC事業を統合した影響であろう。
DELL以外の例えばHPの出荷数量の減少も大きいから、DELLに限った話というより、PC市場の悪化があるという判断も成り立つ。DELLの決算状況を確認してみることにする。DELLのホームページから売上高と営業利益、売上高については製品とサービスに分けて集計した結果を下に示す。単位は百万米ドルである。

■ DELLの四半期決算の推移 (単位:百万米ドル)
   年   月     売上高    製品売上 サービス売上 営業利益
  2009 2-4     12,342    10,232    2,110      414
      5-7     12,764    10,623    2,141      671
      8-10    12,896    10,746    2,150     1,656
      11-1    14,900    12,096    2,804      -569
  2010 2-4     14,874    12,086    2,788      519
      5-7     15,534    12,645    2,889      745
      8-10    15,394    12,520    2,874     1,979
      11-1    15,692    12,751    2,941      190
  2011 2-4     15,017    12,059    2,958     1,212
      5-7     15,658    12,610    3,048     1,146
      8-10    15,365    12,312    3,053     1,142
      11-1    16,031    12,925    3,106      931
  2012 2-4     14,422    11,423    2,999      824
      5-7     14,483    11,403    3,080      901
      8-10    13,721    10,706    3,015      589
      11-1    14,314    11,212    3,102      698
  2013 2-4     14,074    10,902     3,172      226

DELLは八割弱を製品売上で稼いでいる会社である。サービス関係の売上は、成長していると言える。主力の製品販売は、PCを中心としてものであり、2011年には12億ドル/Qの営業利益を上げていたものが、直近の四半期では1/5以下になってしまっている。DELLは直販であることがビジネスの特徴である。
製品とサービスだけの分類だと分類が粗いので、もう少し細かくみることにする。DELLの年度決算からまとめた。なお、DELLは1月末までの会計年度を採用している。下記の年度はその年の1月末であることを示す。

■ DELLの年度決算の推移 (単位:百万米ドル)
  年度    売上高 営業利益 DesktopPC Mobility Servers Storage  Services Soft & Peripherals
  2004  41,444  3,544   18,700    9,700   4,300   1,100   2,700    4,900
  2005  49,205  4,254   20,800   11,800   4,900   1,300   3,700    6,700
  2006  55,788  4,382   21,568   14,372   5,449   1,863   4,207    8,329
  2007  57,420  3,070   19,815   15,480   5,805   2,256   5,063    9,001
  2008  61,133  3,440   19,573   17,423   6,474   2,435   5,320    9,908
  2009  61,101  3,190   17,364   18,604   6,512   2,667   5,351   10,603
  2010  52,902  2,172   12,947   16,610   6,032   2,192   5,622    9,499
  2011  61,494  3,433   14,685   18,971   7,609   2,295   7,673   10,261
  2012  62,071  4,431   14,144   19,104   8,336   1,943   8,322   10,222
  2013  56,940  3,012   12,991   15,303   9,294   1,699   8,396    9,257

表でMobilityとあるのは、ノートPCと解釈して良いようである。サーバーとストレージ、サービスが法人向けの事業となる。デスクトップとノートPCなどの売上を合わせると2013年で50%ある。2004年は69%あったから依存度は下がったとも解釈できるが、依然として高い。法人向けの市場は、新興企業にとってはハードルの高いところであろう。もともとDELLは、中間業者や在庫に掛る費用を最小化することで、高スペックの製品を低価格で提供することで事業を拡大してきた。自社で安いマザーボードを製造してきたDELLは、台湾のASUSに大量に発注することでさらに安くなることに気が付き、ASUSから購入するようになった。ということはDELLのPCは、ASUSのPCにDELLのシールが貼りついているものだということになる。それが悪いことだと決めつけるには単純過ぎるが、自社の売上の過半数を占める製品を全て外部に任せる手法は企業の体力を奪うことになるだろう。DELLから注文を受けるようになったASUSは自社ブランドのPCを出荷するようになった。日本でASUSが有名になったのはネットブックPCのEee PC が安く売られてあたりからであろう。成功したとは言い難いネットブックPCではあるが、ASUSの知名度を上げることには大きな貢献があった。

製品としてのPCの品質には見るべきところのない会社になったDELLであるが、販売に関してはどうかというと、こちらも競争力を失っているようである。ユーザの希望にあった商品構成に仕上げるということで魅力的であったものが、市場の拡大によって専門的な知識のある顧客中心であったものが、PCに詳しくない顧客が急激に増加することになった。その結果、ユーザ対応の窓口の負担が増大し、日本のコールセンターを中国に移した。状況説明が困難な素人ユーザが、日本語の上手でない中国人スタッフに話をするというのは悲劇である。これが生じるとどうなるかをいうと、顧客の評判が非常に悪くなった。
DELLの製品が悪いという話は多い一方で、DELLが沢山売れているから悪い評判も出回るだけで標準的なものだとする意見もある。どっちも一理あるのだろうが、DELLのビジネス手法として大量販売を前提にして、大量購入をする法人向けを重視して単価を安くするという方法を採用している。法人は不具合があった場合に代替品を納入することで不満を防いでいたが、PCが売れない状況では止まることの不満が選定に大きく効いてくるだろう。もともと法人向けの事業に強い訳ではないから、その市場で従来から商売をしている企業と競争していくのは容易でないだろう。
今回のMBOが実施された場合にDELLがどうなるかについては公表されている情報が乏しい。それが株主が同意するか否かを迷う理由にもなっているのだろう。2001年以降のゲートウェイが急速に企業活動を縮小したのとは状況に違いはあるにしても、DELLでなければならない仕事が乏しければ消えていく可能性は高くなってしまう。やりたい事業があるのであれば、二月以降繰り返し伸ばされ九月までのびのびになっているMBO計画が、成功のタイミングを逃してしまったのではないかと心配してしまう。


DELLは調べて楽しい会社ではなかった。暑い中の作業だったのに、残念。

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