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2013年7月 7日 (日)

HOYA、200億円の申告漏れ 国税局が指摘

HOYAが海外子会社との取引を巡って東京国税局の税務調査を受け、移転価格税制に基づき5年間で約200億円の申告漏れを指摘されていたことが6月26日、分かった。税務上の赤字があり、地方税や過少申告加算税を含めた追徴税額は約33億円。(6月26日:日本経済新聞)


移転価格税制はときどき話題になる。今回の事例を考えてみる。


報道から想像される事業は、HDD用のガラス基板であるようである。この製品だと特定した表現はないものの、繰越欠損金を除いた追徴税額が90億円とのことであるので、5年間でこの金額ということは、年20億円の税金をどの国に納めるかということからすれば数百億円の売上高のある事業であると考えて良い。海外に子会社がありこれだけ売上があるというのはこの製品と見て良いだろう。一部報道で、タイ、フィリピン、ベトナムであると言う表現もあったようだ。これも矛盾しない。
HOYAの東南アジアの会社は製造子会社である。つまり、各国の製造会社はHOYAにだけ製品を売る。HOYAはその製品を顧客に販売する。顧客への販売は、同じ製品であれば同じ価格であることが求められる一物一価の原則に従って、フィリピンでもベトナムでも同じ価格である筈だ。ベトナム工場が操業開始間もないからと別製品扱いして安くすることは可能であるが、先々ベトナム品は必ず安いことを求められる理由になるから採用し難い。もしディスカウントをするなら、工場最後の製品であろう。しかし、大量生産する製品で細かい動かし方は事故のもとだろう。だいたい理由を付けて価格を買えると、それこそ一物一価の原則破りと指摘される。
HOYAと製造子会社との取引価格は、HOYAが顧客に販売する価格に連動するのが合理的な説明がし易そうだ。顧客に1,000円で販売する場合に、製造子会社からHOYAへの販売は900円にして、10%がHOYAのマージンとなるような取り決めである。(輸送やそれに伴う保険は無視している) これだと、A社へ1,050円で、B社に950円、C社に1,000円と価格が異なっても処理は機械的に決定できる。特別な製品を量産して、1,500円であったとしても同じ規則で処理できる。
製造子会社が同じ国に存在するなら、取引価格が合理的に決定されていれば税制上の問題は発生しないと思われる。しかし、別の国にある場合には、どちらの国に税金を払うかという問題が生じる。日本の法人税が40%で、オランダなら25%、アイルランドなら12.5%であれば、アイルランドの方に利益を落とした方が支払う税金を減らせる。日本の法人税は高く、東南アジアの投資優遇措置、国外配当益金不算入制度を最大利用すれば確実に法人税の支払いは減ることが期待できる。

HOYAからすれば、ベトナム、フィリピン、タイと製造子会社が三国にあり、合理的な取引規定を設けていると主張することだろう。実際、HOYAは更正処分に対して、「当社の主張と東京国税局の見解は明らかに相違がある」とし、課税処分を不服として異議を申し立てる方針であるという。国税側からすれば、日本に支払うべき税金が海外に流れていると主張することだろう。HOYAのHDD用ガラス基板の売上高がどの位あるのかを確認する。HOYAは細かいセグメントでの公表をしていないので市場の推移から判断することにする。HDDの販売台数を報道からまとめ、HDDの台数の半分がガラス基板であると仮定し、HDD1台あたり平均1.5枚のガラス基板が使用されているとして各年の出荷数の推移を算出した。

■ HDDとHDD用ガラス基板の出荷数 (単位:百万台・枚)
        HDD  ガラス基板
  2006   430    323
  2007   500    375
  2008   550    413
  2009   560    420
  2010   650    488

HOYAはガラス基板市場で七割の市場占有率があると言われるので、単価を200円 (100円では安すぎるし、300円では高すぎる程度の意味で設定) として売上高を計算すると、2006年で450億円、2010年で680億円となる。タイ、フィリピン、ベトナムの生産規模は同じだと仮定すればそれぞれ150億円から230億円のHOYA売上相当を生産したことになる。各年の工場の利益率が20%あって、現地と日本の税率の差が15%あったとすると5年間の税額差の総額は85億円となる。設備の新しい古いが拠点ごとに差があるから、同じ売上げでも利益が出る工場と、出ない工場がでることになる。(HOYAは利益率の高い会社である)

グローバル企業の実効税率は、10%から40%まで開きがあると言われる。税額を抑えるのは株主に対する経営責任であるとする考え方がグル―バル企業ではあるだろう。単独の国で事業を営んでいる場合には工夫の使用はないが、複数国にまたがって事業を行っていれば工夫の余地はある。実際、HOYAの実効税率は15%という資料もあった。日本電産の25%に比べても低く、キヤノンやリコーの40%に比べて著しく低い。結局のところ、税金をどこの国で払うかの話に行き着く。日本の国税には不満があるが、ベトナムは日本が主張する話に不満をもつことだろう。この話は今後も続く問題であろう。


海外移転に熱心な会社は、国内の雇用維持に無関心であったりするようだ。

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