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2013年6月13日 (木)

川崎重工、三井造船との統合白紙

造船重機大手の川崎重工業は6月13日、長谷川聡社長を同日付で解任し、村山滋常務が後任の社長に昇格したと発表した。臨時取締役会を開き、人事とともに、三井造船との経営統合交渉を打ち切って白紙に戻すことも決めた。長谷川社長らが他の取締役の意向に反し、統合交渉を進めたことが理由としている。経営方針をめぐる対立が、異例の解任劇につながった。
川崎重工は6月26日に定時株主総会を開く予定。主要企業が、総会直前の時期にトップ人事や経営に関する重要事項を決めるのは珍しい。長谷川社長と高尾光俊副社長、広畑昌彦常務の3人が取締役に降格された。東京都内で記者会見した村山新社長は、長谷川氏らについて「経営統合ありきで、強い不信感を持った」と非難した。同社をめぐっては、4月に三井造船との統合交渉が報道されたが、その際は交渉を否定していた。今回の発表に合わせて、交渉の事実を認めた上で、白紙に戻すことになったと説明した。 (時事通信)

造船会社の経営について考える。

まず、川崎重工 (7012)と三井造船(7003)の最近十年の決算について確認した。決算短信より、売上高と営業利益、経常利益の推移を示す。単位は億円である。両社とも、3月末の会計年度であり、年の示すのはその年の3月31日の決算を意味する。また、決算は連結ベースの数字を使っている。結果は下の通りである。

■ 川崎重工と三井造船の最近10年の決算状況 (単位:億円)
川崎重工業 (7012)
 年     2013   2012   2011   2010   2009   2008   2007   2006   2005   2004
売上高  12,888  13,037  12,269  11,734  13,385  15,010  14,386  13,224  12,415  11,602
営業利益  420    574    426    -13    287    769    691    417    247    222
経常利益  393    636    491    142    387    639    490    308    210    121

三井造船 (7003)
 年     2013   2012   2011   2010   2009   2008   2007   2006   2005   2004
売上高    5,771    5,719    5,892   7,660    6,867    6,592   6,228    5,685   5,165  4,762
営業利益   240    314    389     430     269     361    207      98    160   185
経常利益   262    323    362     420     234     322    186     126    140    140

川崎重工が三井造船の二倍の売上であることが分かる。売上はこの十年、横ばい状態であるが、三井造船については2010年をピークに減少傾向にあるように見える。業務内容に違いがあると思われるので、両社の主要セグメントの売上と営業利益の推移を確認した。まず、川崎重工の結果を示す。

■ 川崎重工の主要セグメントの売上高・営業利益推移 (単位:億円)
【売上高】         2013   2012    2011   2010   2009    2008   2007   2006    2005   2004
船舶海洋         903   1,135   1,184   1,518   1,264   1,413   1,088   1,096    870    949
車両           1,299   1,326   1,311   1,500   1,864   1,717   1,842   1,683   1,717   1,205
航空宇宙         2,391   2,065   1,968   1,888   2,004   2,373   2,691   2,185   1,882   1,737
ガスタービン・機械   2,070   1,946   2,026   1,913   1,951   1,854   1,833   1,614   1,413   1,364
プラント・環境      1,158   1,228    890   1,075   1,051   1,425   1,220   1,645   1,910   1,914

【営業利益】      2013   2012   2011   2010   2009   2008   2007   2006  2005   2004
船舶海洋        41     39    -10    15    -10     32   -22    -17    10     -23
車両           22     51    81    87    113     71   131     88    77     43
航空宇宙       148     78     30    37    -41    108   134     97    60     42
ガスタービン・機械  70     77     95    89    110    133    98     68    26     45
プラント・環境      97    141    82    79     89    108   -24    -84   -144    12

川崎重工は、経営の多角化が進展している。過去にはプラント環境の割合が高かったが、現在では航空宇宙とガスタービン・機械のセグメントが大きい。船舶海洋は2010年から減少している。造船事業が入る船舶海洋事業の売上は全体の一割を切るレベルになっている。続いて三井造船を見てみる。

■ 三井造船の主要セグメントの売上高・営業利益推移 (単位:億円)
【売上高】   2013    2012    2011   2010    2009   2008   2007    2006   2005   2004
船舶      3,214   3,099   3,129   4,299   3,112   3,030   2,547   1,904   1,669   1,982
鉄構建設          441    433    669    609     548    604    538    585    406
機械     1,526   1,687   1,761   1,966   2,052   1,908    2,085   2,330   2,041   1,598
プラント            391     477    687    976   1,035     817    613    597    490

【営業利益】 2013   2012   2011   2010   2009   2008   2007   2006   2005  2004
船舶      106    157    191    125     34    137    30    -27    40   113
鉄構建設          8     18     48     26     16     3     20    -1    8
機械      112    151    227    259    214    234   142     80    76    53
プラント          -13    -59    -11    -27    -58    16    11    27    -5

こちらのセグメントは船舶となっているから造船に関する事業部門はここに入る。2013年の決算ではここが船舶海洋になっていて、セグメント変更の両方が示されている2012年でこのセグメントは大きく変わらないから、船に関する事業であると理解して良い。2001年にこのセグメントは全体の30%であったが、2007年に40%を超え、2012年は55%になっている。船関係が伸びたというのは事実であるが、船以外が伸びていないのも事実である。プラント事業が将来性が高いという話であるが、売上が低下傾向で利益も出ていないこともあり、従来から売上がある事業と将来性のある事業は別のものであるのだろう。
三井造船が船への依存度が高い(高過ぎる)なかで、事業統合を川崎重工が判断するのは躊躇われるだろう。造船受注の拡大が今後期待できないということのようなので、統合に向けた動きは危険だとするのは自然な流れのように思える。
企業の統合や事業譲渡で、相互補完関係が成り立つ理想的な組み合わせという言葉が出る。相互補完が成立するのは、一方の会社が他方の会社の領域をうま味が無いと判断していたからであろう。しかし、自社の方針で手を出さなかった領域を、魅力的な領域とするのは宗旨替えすることに等しい。それなら統合前の経営者は自己批判することになるのだから、新会社で経営にあたるに相応しくないだろう。ところが実際には、新会社の社長は前の経営幹部であるというのが相場である。そもそも相互補完関係など考えていないのだろう。
数字が並んだので、造船業界の環境について明日考えることにする。


久しぶりに時間の習俗を読み直した。ほとんど忘れているが部分を覚えている。読み切っていないが、点と線の方が出来が良さそうな気がしている。これも昔感じたような……。

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