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2013年5月24日 (金)

富士通の早期退職応募、計画を上回る

富士通は5月23日、不振の半導体事業のリストラの一環で3月に発表した早期退職の募集に対し、計画を約500人上回る2,454人が応募したと発表した。50歳以上の幹部職員を対象にした募集では約300人、半導体子会社である富士通セミコンダクターグループの募集では1,600人を予定していた。結果として、幹部社員が491名、半導体事業が1,963名の応募があり、双方とも想定人数を大幅に上回った。

希望退職に応募が多いというのはままある。どうしてそうなるのかを含めて富士通(6702)について考える。


富士通の連結決算の推移を見てみる。会社ホームページにある決算短信より抜粋した。

■ 富士通連結決算推移 (単位:億円)
         2004   2005  2006   2007  2008   2009  2010   2011  2012
売上高    47,628  47,914  51,001  53,308  46,929  46,795  45,284  44,676  43,817
営業利益    1,602  1,815  1,820   2,049     687   943  1,325   1,053   953
営業利益率   3.4%   3.8%   3.6%   3.8%   1.5%    2.0%   2.9%   2.4%   2.2%

2007年度から2012年度で売上高が約1兆円減り、利益は約1,000億円減少している。利益率も2000年代の前半は3%を超えていたが、近年は2%前半まで下がっている。何はともあれ巨大な企業なので、不振の半導体事業に注目して考えた方がよさそうである。半導体事業が含まれるセグメントはデバイスソリューションである。当該事業の売上高と営業利益の推移を下に示す。

■ デバイスソリューション推移 (単位:億円)
        2004  2005   2006  2007   2008   2009   2010  2011  2012
売上高   7,948  7,075  7,626  7,967  6,501  5,890  6,306  5,847  5,403
営業利益   326   333   190   182  -758   -90   209   -101   -142

これでも大きな企業であるが、2006年度以降業績が芳しくない。2008年には半導体部門を分社化して経営判断の迅速化を目指したとあるが、十分な効果には至らなかったようだ。日本の半導体産業は不振であるなかで、これだけの規模の事業になると止めるのも大変だということである。また、止められてしまっては困る会社が沢山でるが、この困る会社が支援してくれるような古き良き日本の習慣が失われていることが悩ましい。

富士通の半導体に特段の興味もなかったが、スーパーコンピュータの京のプロセッサは富士通製ではなかったかと思い出して興味が湧いたのである。京は、事業仕分けで二番じゃいけなのですかで有名になって、その後予算が復活したので世間の記憶に残っている。しかし、この京の利用については、非常に民主的な利用方法がなされているようで、京でなければできない仕事を実現するという本来の使い方がされていないようである。国家予算を使うと思わぬところで躓く。
5月13日に行われた政府の総合科学技術会議は、国の大型研究開発の事後評価などを議論する専門調査会を開いて、理化学研究所の京の検証を開始した。7月までに評価結果をまとめるが、出席者からは高い計算能力を生かした「戦略的な利用を促すべきだ」などの注文が付いたという。専門調査会では理研を所管する文部科学省が、京について今年3月までに100件の利用が採択されたと報告。利用企業はトヨタ自動車や竹中工務店、大日本住友製薬など46社に上る。データを細かく分け、並列台数を多くした超並列処理などの技術的課題を解決し、卓越した成果を創出したと評価した。ただし、出席した委員からは使い方に工夫が必要だとの声が出た。京を使って0.3京以上の大規模計算をするのは2週間に2日程度。委員からは「1京の演算ができる性能を発揮する使い方をすべきだ。民主的にみんなで小分けで使うと開発した意味がない」との指摘が出た。戦略的に利用する仕組みを決めるための指針が必要だとの意見もあった。消費電力について「必ずしも省電力できなかったのではないか」との声も上がった。
理化学研究所の野依良治理事長(ノーベル化学賞受賞者でもある)が、件の事業仕分けにおける科学技術関連予算の削減を、「将来、歴史の法廷に立つ覚悟でやっているのかと問いたい」と批判した。これに対して、行政刷新会議の加藤秀樹事務局長は、「(仕分け人は)誰一人として科学技術、研究を否定していない。仕分けの議論を見も聞きもせずに仕分け人を不見識と言う野依さんの発言は非科学的と言わざるをえない」と反論している。
これは加藤に分があると思うのだが、世間はブランドに弱いからノーベル賞にすり寄っていたと記憶する。野依も加藤も京大だが、研究者と大蔵官僚なら、悪役は大蔵官僚に決まっている。悪代官が本来使われる筈の200億円を他に持ち去ろうとしているのに、印籠をかざして止めている図柄となる。印籠にはノーベル化学賞(2001)と書いてある。水戸黄門をやるのは昔は悪役だった者がやるのが伝統だったが、里見浩太朗がやっていることからすればこだわらなくても良さそうだ。ただし、とても視聴率は期待できない。
100メートル走を、9秒57で走るのを10年以内に達成する為に毎年100億円の予算を付けるといったら野依でも反対するだろう。100メートル走は2番では駄目な世界である。1京の能力があると言っても0.3京以下でしか使われないなら不要と言われる。省エネである筈が、活用度が低ければ、そっちの性能もでないだろう。その程度の成果しかあげられない者が、未来の歴史の法廷に立つことは無いだろう。一山幾らで書類送検される口である。税金から引っ張ってきた予算は、国民に対する説明責任から免れない。活用し、成果を出すところまで責任を取ってもらおう。成果を上げることを約束するのではない。成果を上げようと最大の努力をしたことを説明しないのなら、税金泥棒と呼ばれても仕方ない。

京は開発途上で、日本電気も日立製作所も抜けて、逃げ切れなかった富士通が取り残されたもので、中途半端な予算なら中止してくれれば良かったと思う人もいたのではと想像する。開発が延命したとしてもその先に何があるかが重要である。明るい未来が描けないのは、問題の本質を捉えきれていないのではないかとさえ感じる。具体的には、京で性能が出ても開発費が高いこと、専用のプロセッサ開発から着手するので、それはより顕著になる。メインストリームにある学者は嫌うだろうが、ゲーム機のプロセッサで大きな仕事をする方が美しい絵であるだろう。美しい命令体系の専用プロセッサを用意するというのは、四半世紀前の美の価値観であると思う。そこらに転がっている汎用品で最大の能力というのが、今世紀の美ではなかろうか。自らの信じる美しいスタイルを提言するのは良いが、資金を含めてエレガントな回答を提出するのは難しいものである。
富士通のプロセッサを製造するのは台湾の会社で設計のみのようだ。半導体は国を意識する時代ではないようだ。


決算書を見ていたら、他の話になってしまった。

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