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2013年5月26日 (日)

クモの糸量産

スパイバー(山形県鶴岡市)は5月24日、クモの糸を人工合成し繊維にする技術を確立、量産に乗り出すと発表した。自動車部品メーカーの小島プレス工業(愛知県豊田市)と工場を新設、2013年中に月間100キロを供給できる体制を整える。クモ糸は強度が高く伸縮に優れる次世代素材とされる。自動車部品や医療素材向けなどに用途開拓を急ぐ。

不思議な記事なので考えてみることにする。


今回の人工クモ糸は微生物から出る特殊なたんぱく質を原料としている。成分や特性はクモの糸と同様だが、分子や遺伝子の配列を見直して他の素材などと組み合わせやすくしているという。紡糸という言葉が出ているから、繊維は短繊維であるようだ。用途としては、低コスト化を実現して、自動車用部品、人工血管などの幅広い利用を見込むという。低コスト化は避けては通れない道であるが、自動車用と医療用とでは使用する量が異なる。コストもあるが、供給可能な絶対量が少なければ採用できない。そんなものは幾らでもあるというか、そんなものばかりだと言っても良い。小島プレス工業と連携して山形県鶴岡市に約7億5,000万円を投じて生産拠点を新設し、当初年産1.2トンを用途開発を進め2015年には年産10トンに能力を拡大するとしている。

連携している小島プレス工業と言う会社は、愛知県豊田市にある1938年設立の自動車部品製造会社で、従業員数は 1,651名ある。場所柄から想像される通り、トヨタとの関連が深いようである。売上高は、1,482億円であり、内訳としては、金属部品 100億円、樹脂部品 1,100億円、電子部品 250億円くらいであると推定される。社名にあるプレスは金属部品加工に関連するようである。売上の大半を占める樹脂部品は、自動車外装部品や内装部品とある。大柄な部品を作っているイメージであるが詳細は不明である。
糸に関する仕事なので、シートなどの布製品を扱っている会社を想像したが外れた。自動車内装部品には難燃性 (それほどのレベルでもないような気がするが) 求められるだろうから、タンパク質の糸では不適かなと思ったが、用途が外れているから議論にもならない。樹脂パネルを作っているからFRPの関連製品の開発かとも思ったが、クモの糸をつかう利点が思いつかなかった。連携しているのだから思惑はあるのだろう。ベンチャー側とは違っていて当然である。資金だけむしられないよう主張しなければならないが、パトロンになるのも別の価値観であるから良いかもしれない。

開発色が強い投資であるのだろうが、7億5,000万円投じて1.2トンということは、償却期間が5年の均等だとすると年1億5,000万円で、1kgあたりの償却額が12万5,000円で、10倍に生産量が投資無しに増えても1万2,500円となる。生糸の価格が1kgで5,000円前後であるから、蚕では駄目でクモでなければならない要求に応えないといけない。医療用途の検討として、絹を再生医療用材料に行っているようである。人工血管が代表的なもののようだが、どのような状況かは知らない。
蚕の糸もクモの糸もタンパク質であるところは一緒である。蚕が糸として古くから使われているのに対し、クモが利用されていないのは幾つか理由がある。一つの代表的な理由は、クモが共食いすること。これで多数のクモを飼うことが難しくなる。蚕が桑という植物を食べるのに、クモは虫を食う (一部例外があるようだ)。また、クモは自分の作った糸を食べる。クモの糸は、人間にとって使い勝手が悪い。これに対して、蚕は人間なしには生きられない特性がある。桑の緑のなかに、白い色で動きも鈍ければ鳥のエサになるだけである。

人口的にクモの糸を製造する技術に到達したのは立派な成果である。スパイバーは既に関連技術を含めて16件の特許を出願しているとのことなので、特許を検索してみた。技術的な内容は分からないから、「スパイバー」を検索ワードにしてみた。その結果、山形の会社のものは2件であった。他に3件のクモの糸に関係する特許があったが、スウェーデンのスパイバー・テクノロジーズ・アーベーという会社のものであった。会社のホームページに関係があるような記述はないので別会社だろう。ということで、16件のほとんどは最近の出願であろうと考えられる。ついでに2件について発明者を確認したところ、
  関山和秀 (社長)
  菅原潤一 (最高技術責任者)
  関山香里
  村田真也
関山香里は研究員で社長の妻であるという。この4名はいずれも慶応義塾大学の出身とある。2件の特許は、
  特許公開2013-096037  人造ポリペプチド極細繊維及びその製造方法
  WO2010/086990      DNAタグの構築方法
である。
この会社は、資本金780,330千円、資本準備金770,330千円で、社員数は報道によると30名くらいとある。バイオ関係は資金を必要とするらしい。

絹は紫外線に当たると黄色く変色する。クモの糸の方が劣化の度合いは低いようだ。また、クモの糸は水分量によって機械的な特性が変化する。水分量が低くなると、弱く、伸びにくくなる。
今回、人工クモの糸で作ったドレスを公開していた。和服の着物を作る時に、一枚に生糸900gというのが良く言われる数字である。ドレスでも似たような量だろう。1kgの糸を確保するのは量産体制が整っていないと大変なことだろう。投資をして量産をスタートしても、その先に何をするかが見えないので、注目を集める必要があったのではないだろうか。少なくとも人工血管の様な医療分野は認証に時間を要するので、資金繰りが大変になることが予想される。世間の目を集めておかないと大変なことになる。もっとも現実的なのは防弾チョッキの様な使い方だと思うが、その筋でも認証はあるだろうから想像するより大変かもしれない。用途を絞ってしまっては年10トンはもてあます。実用化は難しいとつくづく思う。


蚕は1頭と数える。そして、蚕などと読んだら叱られる。お蚕様と呼ばねばならない。養蚕の盛んだった地域ではどこもそうである。

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