« 茶摘み | トップページ | 橋下氏慰安婦発言 »

2013年5月13日 (月)

茶摘み-2

昨日に続いてお茶の経済事情について考える。


お茶についての基礎知識を整理しながら進める。
四月下旬から五月上旬にかけて、その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶を一番茶という。一番茶を収穫した後二週間ぐらいで、又新しい次の芽が伸長を開始し、45日程度で次の芽を摘採できるようになる。この二回目に収穫するお茶を二番茶という。一番茶と二番茶の違いは、煎茶の味の主成分とされるテアニンが二番茶の三倍以上あり、旨みの多いお茶であると言われる。二番茶の後にも芽が伸びるので、それを摘めば三番茶、四番茶となる。地域によっては三番茶以降はなく、秋口に秋冬番茶を摘むところもある。四番より後はない。ひと月半で摘める状態になると言っても、一番茶が五月からだと四回目は九月下旬になり、この先は涼しくなるから葉の成長が期待できない。十分な肥料を施せばある程度は育つだろうが、木が弱ってしまっては翌年の収穫に影響する。ところが、本当の理由は他にあるようだ。全国茶生産団体連合会の調査結果を下に示す。

■ 荒茶価格推移(煎茶)   [単位:\/kg ]
    一番茶  二番茶  三番茶  四番茶 冬春秋番茶
1993  2,970   1,026   780    612    392
1998  2,442   1,172   700    660    284
2001  2,644   1,103   648    640    327
2002  2,787    996   399    421    286
2003  2,868   1,085   678    795    325
2004  2,926   1,275   996   1,132    417
2005  2,670   1,118   804    732    316
2006  2,626    960   509    316
2007  2,641    974   579    347
2008  2,396    883   565    388
2009  2,250    715   370    290
2010  2,645    780   374    280
2011  2,438    844   570    291

一番茶価格を基準にすると、二番茶は平均的に1/3の価格で、三番茶は一番茶の1/4、二番茶の六割程度の価格となる。冬春秋番茶は一番茶の一割強となる。
お茶を摘む作業は、産地では機械化されている。製茶作業も量産品は自動化が進んでいる。つめり、摘むのも加工するのも、一番だろうが三番だろうが作業負担は同じである。むしろ、冬場に茶の木の高さを揃えた状態で摘む一番茶が最も効率が良くて、葉の伸びにばらつきが大きくなる二番茶以降の方が整える作業が入って摘む負担は多くなる可能性さえある。
価格のこれだけの開きがあると、その年の収益は一番茶の品質と量で決定されることになる。一部の地域で一番茶の手摘み品が珍重され、高価で売買されるのは、新芽の早期に収穫される一番茶新芽の早期に収穫される一番茶は、味が良いからである。この時期の新芽は機械で摘めるほど成長しておらず、手作業でないと摘めない事情に依っている。
昨日の話であった遅霜対策も、最も単価の高い一番茶を守ることが、経済的な意味でお茶栽培の収益のすべてを決定するからである。若いは芽軽いが、冬の間に蓄えた養分が一気に出るのだから味わいは濃い。つまり、乾燥した荒茶の重量当たりではお茶の成分が沢山入っていることが予想される。若いを葉摘んだお茶では、出がきくと感じるものである。出がきくというのは、何回もお茶が出るということだが、成長した葉ではすぐに葉が開いて”出がきかない”と感じるものである。この言葉使いは方言の類かと思っていたが、お茶をつくっているところでは通じるようだ。

お茶の種類はどうなっているか気になってくる。答えを先に書くと、特に断りがなければやぶきたという種類と思って良い。農林水産省の特産農作物の生産実績調査から、少々古いが生産実績をまとめた。

■ お茶の生産実績(栽培面積) [単位:ha]
          2002   2003   2004   2005   2006   2007
優良品種   46,059  45,890  45,234  46,105  46,031  45,733
その他                          512    622     663
在来種      3,474   3,521  2,727    1,991   1,817    1,770
合計      49,533  49,411  49,115   48,619  48,471  48,167
やぶきた    37,746  37,510  37,054   37,449  37,162  36,505
ゆたかみどり  2,400   2,396   2,350    2,412   2,424    2,488
おくみどり     820    893     942     890    930    946
べにふうき      0     3       8     23    33     98

品種改良が進んで、在来種の生産量は限られている。優良品種の代表がやぶきたである。やぶきたの他に、多くの種類があるが栽培面積が次の多いのがゆたかみどりであり、その次となると多くの種類が同じ水準にあり判断がつかない。代表例としておくみどりを採用して示した。また、花粉症の症状を抑える効果が有るとかないとか書いてあるパンフレットを郵便局で見つけたべにふうきを参考に加えた。ただし、べにふうきは緑茶ではなく、紅茶や烏龍茶用である。ついでに、これらの品種について説明を加えておくことにする。

 品種名     登録番号     来歴 (育成年)
やぶきた    茶農林6号    静岡種実生選抜 (1953)
ゆたかみどり     -       あさつゆの自殖種 (1966)
おくみどり    茶農林32号   やぶきた×S16号 (1974)
べにふうき   茶農林44号   べにほまれ×枕Cd86 (1993)

別にこの番号に意味はないが、調べていたら目に付いたので記録に残しておくだけの話である。このブログで一貫しているのはこのことだけかもしれない。話を戻す。
登録番号は1号から52号までが登録済であった。茶中間母本が6号登録されている。せん茶が多いが、紅茶や他の用途向けもある。お茶の木は挿し木で増やすが、挿し木がついて定植出来るようになるまでに三年程度は掛かり、摘めるようになるには更に数年掛るから年数を要する。べにふうきの育成年が1993年であっても広く栽培されるのに10年を要するのはこうした理由による。しかしこれも、挿し木による茶の繁殖法が1935年に発見されたからで、挿し木技術が無ければ品種改良など遅々として進まないものだろう。
75%がやぶきたであるとすれば、ある時期に製茶加工工場は集中して忙しくなることになる。そしてそれ以外はほとんど仕事がなくなる。工場の稼働を安定化させる意味では、早生種と晩生種をバランス良く栽培することが有効であるだろう。しかし、お茶が温暖な気候を好むことからすると、早生種はほとんど考えられず、晩生種といっても木が芽吹く頃の差であるから時間差は小さいかもしれない。工場では違う種類を混ぜて加工できないから、別の装置で加工することになる。その地域で、やぶきたとそれに遅れて二週間後に摘める種類の良質なお茶があれば価値があるかもしれない。しかし、お茶の品種改良では収穫量と病気への耐性を主張しているので、時期をずらすというのは現実的ではないのかもしれない。

今後、良質なものを口にするのは贅沢になるだろう。何でも金で買えるということを人類が経験したのは、たかだかこの半世紀程度のことであり、それも世界の限られた地域の出来事に過ぎない。趣味性の高い嗜好品は、自らの手で栽培加工しなければならない時代に戻るかもしれない。母の実家で製茶加工をしているのを良く観察しておけばよかったと少し後悔する。見るのとやるのは違うのであるが。


私が手摘みするのは、ごく少量しか摘まないからである。

« 茶摘み | トップページ | 橋下氏慰安婦発言 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 茶摘み | トップページ | 橋下氏慰安婦発言 »

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ