ガソリンスタンドについて-2
昨日に続いてガソリンスタンドについて考える。
ガソリンスタンド(GS)の経営について考える予定だったが、ガソリンの販売量の推移の統計資料に差異があることが確認されたので、もう少し統計を調べることからにしようと思う。
ガソリンの国内出荷数量に関する統計データは三つあった。経済産業省の生産動態統計、国土交通省の自動車燃料消費量統計年報、全国石油協会の実態調査である。それぞれの統計から、GSに関係する代表的な項目を抜き出した。結果を下に示す。
■ 経済産業省生産動態統計 [単位:千kL] *ガソリンは自動車用のデータを採用
ガソリン (高級) (並級) 灯油 軽油
2006 61,067 10,425 50,642 28,149 41,174
2007 60,528 10,140 50,388 24,173 44,173
2008 58,447 9,196 49,251 21,623 47,496
2009 58,617 9,280 49,337 21,499 44,699
2010 59,903 9,151 50,752 20,548 43,641
2011 57,126 8,391 48,735 20,143 41,634
■ 全国石油協会 [単位:千kL]
ガソリン ハイオク レギュラー 灯油 軽油
2006 61,213 10,374 50,839 30,320 31,582
2007 67,247 10,381 56,866 28,168 28,036
2008 65,100 10,681 54,419 26,841 26,103
2009 48,795 6,517 42,278 22,870 22,931
2010 38,581 4,983 33,598 19,674 22,077
2011 40,730 5,110 35,620 18,700 20,288
■ 国土交通省自動車燃料消費量統計年報 [単位:千kL]
ガソリン 軽油 LPG
2010 52,964 27,186 2,219
2011 53,214 25,660 2,067
差が大きいことに困惑したのだが、統計の取り方に違いがあることが分かった。経産省の統計は、すべての事業所に対して実施している。国交省の統計は、毎月5,000の自動車使用者へのアンケートの集計結果となっている。全国石油協会の実態調査は、揮発油販売業を営んでいる10,0000企業を無作為抽出してアンケート調査を行っている。上記の数字は、企業当たりの年間総販売数量に企業数を掛けて総量を算出した結果を示した。
各統計の特徴としては、経産省が石油元売り側、全国石油協会はの小売り側、国交省は利用者側の状況を示していると考えて良さそうである。全国石油協会のアンケートの発送先はGSの事業者数が20,000を切っている状況の中で十分な数であると考えて良い。国交省のアンケートは自動車の保有台数が乗用車だけで5,800万台を超えている中でのサンプル数としては少々少ない。全体的な傾向を見るのに用いるのが適当な利用方法であろう。ただし、古いデータは公表されておらず、国交省のホームページへのアクセスが非常に悪い状態であるのでこの統計については諦めることにした。
経産省のデータによると、この5年でハイオクが20%減り、レギュラーが4%減った。ハイオクが減っているのは、不景気の影響でハイオク指定のクルマの人気が下がる傾向もあったようである。GSと乗用車の保有数について確認した。結果を下に示す。乗用車保有数は国交省による。
■ 乗用車保有数とGS数 [単位:自動車は千台、GSは戸]
普通車 小型四輪 軽四輪 乗用車計 GS数 台/GS
2000年 13,943 28,593 9,901 52,437 53,704 976
2001年 14,807 27,943 10,790 53,541 52,592 1,018
2002年 15,375 27,494 11,671 54,540 51,294 1,063
2003年 15,837 26,885 12,491 55,213 50,067 1,103
2004年 16,296 26,401 13,297 55,994 48,672 1,150
2005年 16,635 26,255 14,202 57,091 47,584 1,200
2006年 16,715 25,698 15,108 57,521 45,792 1,256
2007年 16,772 24,921 15,931 57,624 44,057 1,308
2008年 16,748 24,356 16,760 57,865 42,090 1,375
2009年 16,689 23,919 17,412 58,020 40,357 1,438
2010年 16,890 23,470 17,987 58,347 38,777 1,505
2011年 17,040 23,144 18,487 58,670 37,743 1,554
GSの1店舗当たりの乗用車台数は、この10年で1.5倍増え、1,000台が1,500台を超えた。GSのガソリンの売上が減少しているのはエコカーの普及による影響があるとする説がある。2009年のエコカー減税から、燃費の良いクルマ、特にハイブリッドカーを中心に販売数を伸ばしている。仮に新車が5年で10%、10年で95%が廃車されるとすると仮定すると、この3年間に登録された乗用車の割合は20%強と計算される。保有台数自体は3年間で1%増加しているから、全体の20%を占めるこの期間の新車が、従来車に比べの燃費が10%改善しても全体の走行距離に変化が無ければ1%の使用燃料減に留まる。上記の表で2000年以降、軽自動車の保有台数が著しく伸びている。小型車の販売が期待したほどの結果になっていないが、軽自動車は市場を拡大している。高価格なハイブリッドカーと軽自動車に販売が集まる状態はここ数年の傾向である。
ガソリンの販売量は落ちているものの、自動車台数は増加し、GSの廃業の多さからすれば売上が著しく減少するようには見えない結果であった。しかし、実際にはGSの廃業は目立つ。タンクの更新の費用負担は代表的に500万円(最小でも300万円)掛ると言われる。GSの年間売上高は平均的に500百万円で、粗利率は13%程度と全国石油協会の調べでなっている。販管費率は12%となると、人件費に5百万円で企業の利益はなしというのが平均的な中小GSの経営状態であるようだ。この傾向は地方のGSに顕著に表れる。クルマが必需品である地方は人口密度も低いからGSの数も少ない。ここで経営が圧迫されて廃業となると、困るのは地方の住民である。消防法に例外を設ける訳にはいかないだろうが、田舎でGSまで20km以上あるのが当たり前になっては問題が出てくることだろう。高速道路のGSの間隔が40~70km目安(もちろん例外はある)で設置されていることからすれば、日常生活ではこの半分程度でGSに行き着かないのは困ることがある。対策をするのは困難であるにしても、どの程度の問題があるのかを公表するのは行政の仕事だろう。その上でどんな対策が必要かを検討すればよい。廃業して困ったと言っているだけでは何も解決しない。
GSは燃料価格の変化があると無理を強いられ利益を失うようである。変化が少ないと経営が安定するなら、公定価格を設定すればGS経営は成り立つことになる。自由競争が価格を下げるというのは、全ての製品に適用できる公理ではない。競争に敗れるものがいる時代なら、まだ競争原理が働くが、敗れる前に降りる状況が生ずれば不便だけが残り、製品に高い料金を支払うことになる。自由競争を最善と考える新自由主義が適用可能な範囲には、狭く小さな市場は含まれない。競争のあり方について提起する政治家がいても良いように思う。
GSのことを調べても結論に行き着かなかったが、ガソリンを必要な人がいて商売にならないというのは不条理だろう。どこを直せば変わるのか全く見当がつかないが、そんな疑問を持ちつつ今後も考えていくこととする。
猪瀬が橋下発言を批判することを、目糞鼻糞を笑うと言う。辞書に採用されそうな例だ。しかも、どっちも辞職しない。(推定)
« ガソリンスタンドについて | トップページ | コバルト国際価格上昇 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 維新・足立氏、「犯罪者」発言を陳謝「深く反省する」(2017.12.01)
- 加計問題、論点深まらず 野党は追及継続へ(2017.11.15)
- パナが高級ミラーレス一眼 10年目の節目に新戦略(2017.11.16)
- 三菱自、SUV型のEV出展へ(2017.09.20)
- 参院選、3.08倍差「合憲」 合区後の一票の格差 最高裁(2017.09.28)
コメント