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2013年5月 7日 (火)

自民党の憲法改正案-2

昨日に続いて、自民党の憲法改正草案について考える。


あまり話題にならないと思うところからまず一つ。
■ 第九条2第5項
国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

自民党の憲法Q&Aの資料によると、軍事上の行為に関する裁判は、軍事機密を保護する必要があり、また、迅速な実施が望まれることに鑑みて、このような審判所の設置を規定したとある。
委員の一人である佐藤正久は陸自出身で、自衛隊の階級は呼びにくいので軍隊呼称に従えば大佐である。このような軍関係者 (呼び易いからで他意はない) が加わっていながら認めたのが理解できない。要するに軍法会議の設置であるが、下っ端に厳しく上役に優しいのがこの会議の特徴である。自民党のQ&Aには、軍法会議に不満があった場合には、一般裁判への道を確保することとなっているが、これが機能すると軍関係者が思ったのだろうか。具体的に考えてみる。
軍法会議に掛けられる軍人が出た場合、その裁判を担当するのはこれより上の階級の者に限られる。軍の上位に位置する者が、下位の者を裁くのは必然で、逆にすることはできないだろう。陸軍の事案を海軍で処理することもあるまい。軍事秘密の漏洩防止を目的に掲げる以上、自民党は別の軍が加わることは好ましい姿とは考えていないだろう。
中佐が対象であったとする。陸軍を例にすれば、大隊が500人規模で、その責任者が中佐である。中佐が処分される状況であり、この大隊に処分対象が含まれているとする。直接の命令系統にある上官は軍法会議に馴染まないだろうから、裁判官には少し離れた少将で担当することにしたとしよう。他に背広組や法律家が加わる可能性はあるだろう。さて、この中佐の処分が思いのほか軽かった場合に何が起きるか考えてみよう。マスコミは身内をかばったとこの裁判官担当の少将を叩くことだろう。逆に思いのほか重かった場合には、制服組から不満が沸くことだろう。思いのほか思いと、思いのほか軽いは別のものではなく、必ず重なるものであることに注意を要する。適性な判決などない。つまり、この少将に未来はなくなる。中佐の軍法会議を開けば少将が一人犠牲になることが約束されている。こんな現場に負担の大きな仕事を元軍関係者が拒否しないのは理解できない。

軍関係の例を示す。日本時間の2001年2月10日に、米国ハワイ州のオアフ島沖で、愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船えひめ丸が浮上してきた米海軍の原子力潜水艦グリーンビルに衝突され沈没した。乗務員の35人の内、えひめ丸に取り残された教員5人、生徒4人が死亡した。この事件でグリーンビルの艦長スコット・ワドル中佐は事故の責任について軍法会議で審議されることはなく、司令官決裁による減俸処分を受けただけで、後に軍を名誉除隊(軍人年金などの受給資格のある一般退職)した。スコット・ワドル中佐は、事件当時同乗の民間人を操舵席に座らせ、操舵に関与させていたとされた。
裁判に掛けられる、つまり起訴されるか否かの判断がまずある。軍法会議がある制度であれば、起訴が適当かどうかの判断は軍内部での判断になる。上記の米海軍の例では起訴猶予になり内部処分で終えている。
自民党の案では、軍法会議の上級審として裁判を受ける権利を設定するつもりのようであるが、被告人の罪が重い場合には上級審に持っていくだろうが、軽い場合には検察に当たる軍が重い処分を期待しない(なんといっても身内だ)のだからそこで済んでしまう。軍法会議は内部処理に過ぎず裁判とは違う性格のもとの理解した方が良いだろう。それを強いて設定する理由を軍事秘密を理由にしているが、公開基準の適正化で一般の裁判に適用可能だろう。軍のことは軍にしか分からないという論理なのだろうか。そうすると医療関係は日本医師会で行うということか。飛行機の操縦や、化学工場の運営についてはどこで行うか見当もつかない。


■ 第九条の三
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

自民党の憲法Q&Aの資料をひく。
党内議論の中では、「国民の『国を守る義務』について規定すべきではないか。」という意見が多く出されました。しかし、仮にそうした規定を置いたときに「国を守る義務」の具体的な内容として、徴兵制について問われることになるので、憲法上規定を置くことは困難であると考えました。
とある。何てことはない、自民党は徴兵制と書きたいがそう書くと反発が大きいと感じているので止めたと実質的に言っている。そう書きたかったと主張すれば良かろうものをと思うのは門外漢の考えで、反対されるから書かないのが選挙のプロの発想なのだろう。政策の実現より選挙の勝利を優先するのが、この国の国会議員の特性のようである。
有事の際には、戒厳令を布いて、私有財産の強制的な取り上げを行い、軍の車両が優先的に行動できるようにしたいのだろう。核武装もして、徴兵制も設定すれば、物騒な北の国と戦える環境は整備されそうである。

ポツダム宣言で、日本の軍国主義を排除すること、民主主義の復活強化へむけて一切の障害を除去すること、言論、宗教及び思想の自由ならびに基本的人権の尊重を確立することを実現する為に作成されたのが現在の日本国憲法である。ポツダム宣言以前に時計の針を戻したいようである。いっそのこと、フランスのヴィシー政権の憲法をまねて、「全権力を自民党総裁に委任する」としたらどうかと考えてしまう。

自民党の憲法Q&Aの資料は84頁もあるので、もう少し自民党の特徴を考えてみようと思う。出来が悪いと切り捨てるのは簡単だが、神は細部に宿るものである。何か学ぶこともあるだろう。


やはり憲法は国家権力を縛るものとする方が理解し易い。

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