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2013年4月21日 (日)

TPP参加国

TPPを巡り、カナダが日本の交渉参加に正式に同意したことが明らかになった。これにより日本は、参加している11カ国すべてから承認を得られたことになり、7月にも、TPP交渉に参加する見通しとなった。

11カ国とはどこで、どんな国かを考えてみる。

国を調べたらちょっと手間取った。報道される国は大きな国で、小さな国など相手にしていない様子が窺える。もしそうなら、米国以外は相手にしないとするのが理性であるような気もするが、まとまると便利なことがあるのだろうと想像する。そんなことが本当にあるのかどうかというのは、後々考えることにしよう。まず、一山幾らで扱われる11カ国がどこで、その国のGDPと人口、ついでに一人当たりのGDPを調べた。数字は2012年のものである。単位は米ドルとした。結果を下に示す。

■ TPP参加国のGDPと人口、一人当たりのGDP (2012年)
    国名        GDP[億ドル]  人口[万人]  1人当りGDP[ドル]
1 シンガポール     2,765        509        54,369
2 ニュージーランド   1,697        437        38,846
3 ブルネイ         166         40         41,679
4 チリ           2,682       1,711 ( 2%)    15,670
5 アメリカ       156,848 (57%)   31,038 (40%)     50,533
6 オーストラリア     15,418 ( 6%)    2,227 ( 3%)    69,238
7 ペルー            1,990       2,908 ( 4%)     6,844
8 ベトナム          1,381       8,785 (11%)      1,572
9 マレーシア        3,035       2,840 ( 4%)     10,687
10 カナダ            18,191 ( 7%)   3,402 ( 4%)     53,476
11 メキシコ         11,771 ( 4%)  11,342 (15%)    10,378
12 日本          59,640  (22%)   12,761 (16%)    46,736
--------------------------------------------------------------
   合計         275,583      78,000

カッコ内に示したのは全体に対する割合である。2%未満は省略した。
TPPの前身は、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの四カ国が参加する自由貿易協定である。これは、2006年5月に発効した。上記で、この四カ国はGDPが3,000億ドル未満である。東南アジアとオセアニアに南米が加わっているので距離は遠いが間は海だから隣の国という解釈も可能であろう。
ブルネイについて付け加えると、石油・天然ガスの資源を中心とした国で、1984年にイギリスから独立している。中国が中心に話題になる南沙諸島の問題では、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムと共に主張している。それぞれの国の考えがあるが、対中国では一致することがあるだろう。国境を接するマレーシアとの関係は、相互協力関係を強化するとしているから大きな問題はないようだ。人口が少ない一方で、エネルギー資源が大きいから一人当たりのGDPは大きくなる。四カ国の中ではシンガポールに続く位置にある。
エネルギー資源に恵まれたブルネイ、地下資源が豊富なチリ、農産品が大きいニュージーランド、貿易国のシンガポールの組み合わせは、バランスのとれた参加国の組み合わせであると言える。ただし、人口の合計は大きくないから、協定を結んでも経済効果は限られることになる。資源が出ても加工する産業が強くないから、付加価値を高めるには協定の範囲では効果が出難いことが悩ましい。この自由貿易協定には、さらにアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加を表明し、新たな枠組みの合意に向けて九カ国で交渉している。
経済大国のアメリカが入ってしまうとほとんどアメリカとの関係で議論されることになる。四カ国の自由貿易協定は、アメリカ中心の貿易のあり方に議論の中心は移った。日本が入らなかった場合のアメリカのGDPの割合は73%に達する。アメリカの次はカナダになるが、カナダとメキシコは1994年に発効した北米自由貿易協定の対象国である。この三カ国を一つにまとめるとGDP全体の87%に達する(人口だと70%)。日本が入らず、北米貿易協定の国がまとまると、この協定に他の国が加わったものに近くなる。四カ国の自由貿易協定とは別のステージに入っていると理解しなければならない。

北米自由貿易協定の国とオーストラリア、日本を除いた貿易協定なら小さな国で集合体を構成することに価値を求めるのだから理解できる。しかし、小国だけでは競争力のある産業が限定されて交渉がまとまらない場合もでるだろう。また、まとまっても自国の購買能力が低ければ自由にしても変化がないことも起こり得る。これではうま味がないので、沢山買って貰える経済力のもう少し大きな国に加わって貰えば、小さな国の競争力のある商品の消費地が確保され、条件が合えば安く商品が入る可能性も出てくる。しかし、このように理想的な状態になるのなら、協定がなくても勝手にそこに向かうものである。それが経済活動である。そうならないのは、それぞれの国内に事情を抱えるからである。
自由貿易協定で関税をなくすというのは、為替の問題を除けば一つの国にするのと同じ効果がある。日本で、北海道のテンサイで作った砂糖と、奄美大島のサトウキビで作った砂糖は、同じ砂糖として競争する。協定を結べば、これにオーストラリアやメキシコの砂糖も加わるということである。砂糖のように性能差が出ない商品では単純な価格、供給力、納期といった購買部門のみで判断が付く要素で購入先が決定される。よって、最も強い競争が生じる。一方、牛肉をアメリカ産にするか、オーストラリア産にするか、松坂牛にするかは前記の判断に品質上の差が加味されるので、品質判定をする部門の意見を聞かないと購入先の決定ができない。競争は少し緩やかになるが、同種の商品で安いものが売られればそれ以前の状態を維持するのが難しいのはどんな商品でもあることだ。
砂糖に近いものとして、天然ガス、石油、石炭といったエネルギー資源がある。(実際には石油や石炭にはグレードがあるので品質差はあるが相対的に小さい) 小麦や米には違いがあるようだが、販売先に合わせて品種選定をするなりすれば差は更に縮むだろう。米よりデジタル化が進んだ家電や通信機器の方が差が小さいかもしれない。自動車も趣味性が大きな高価格品は別にして、大衆車は確実に競争原理の中に放り込まれる。

日本と外国の交渉では、交渉開始後に交渉のテーブルから離れることを官僚は国際的な信用を失うと発信するようである。つまり、テーブルに付けば離脱不能である。現在、政府は聖域を守れないなら離脱することを公言しているが、過去の交渉を思い出すに官僚の反対と政治家を切り崩す作業は必至だろう。つまりTPPはほぼ無条件に参加する結論が待っている。しかも、交渉の相手は11カ国と言いつつも、実態としてはアメリカである。アメリカ相手に交渉決裂は考えられない。優秀な日本の官僚は、アメリカが解放を求めてくるだろう農産品について、オーストラリアやニュージーランドと天秤に掛けられる状態を目指すのだろうが、そうは簡単に行くまい。例えば、オーストラリアの自動車産業を破壊する恐れがあるのはアメリカの会社ではなく、日本の会社である。微妙な政府交渉で競合しないようにアメリカとオーストラリアは話し合うだろう。これが民間企業なら談合で、公取委に出番があるのだが、政府間であると公取委ではなく、こっちも政府となる。小さな談合はあげられるが、大きな談合は黙認される。気まぐれに大きいのが捕まるが、こっちのほうが例外だろう。少なくとももっとも大きい政府であるアメリカを捕まえることはないだろう。そう思うとアメリカの帝国主義が世界を征服しようとしていると主張する北朝鮮の言葉は、ある真理を声高に主張していると言えるのかもしれない。帝国主義はともかく、交渉のテーブルから離れるくらいのことは出来るようになりたいものである。そればみえみえのブラフであっても、立たないと確信されるより意味がある。国家間の交渉とはそういうものだろう。


TPPの国も分からないようでは何も分からない訳だ。

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