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2013年4月24日 (水)

インフルエンザ予防接種カルテル

インフルエンザ予防接種の料金を巡り、埼玉県内の医師会が最低額を設定していた疑いが強まったとして、公正取引委員会は4月23日、吉川松伏医師会(同県吉川市、松伏町)に独占禁止法違反(事業者団体による競争制限)容疑で立ち入り検査に入った。最低額は、少なくとも約10年前から医師会幹部らが毎年決めていた疑いがあることが関係者の話で分かった。 同日午後には、医師会幹部が所属する医療機関など数か所を審査官が訪れ、会員に送付した通知書などを提供するよう求めた。通知書を受け取っていたという医療関係者によると、文書は毎年、予防接種の時期に合わせて医師会名で各医療機関に送付された。約10年前、複数の医療機関が接種の料金を通知より安く設定したところ、医師会から最低額に戻すよう、すぐに連絡が入ったという。

医師会のカルテルという話である。医師会について考えてみる。

埼玉県の吉川市と松伏町が事件の舞台である。吉川市は、埼玉県の南東部に位置し、東は江戸川を挟み千葉県野田市と流山市に、西は中川を挟んで越谷市・草加市、南は三郷市、そして北は松伏町と、それぞれ境を接している。面積は約32平方kmで、人口は68,060人、世帯数は  26,193世帯という。松伏町は、吉川市の北に位置し、面積は約16平方kmで、人口は合計30,944人、世帯数は  11,480世帯という。吉川市が松伏町の二倍だと思って良いようだ。松伏町、草加市、越谷市、八潮市、三郷市、吉川市の5市1町で構成される埼玉県東南部都市連絡調整会議が、埼玉県東南部5市1町合併等検討会議を行っているというから関係は深い。
吉川松伏医師会の名簿を確認したところ、吉川市が16、松伏町が7の病院・医院が載っていた。地域の医療機関を検索の結果、吉川市が27、松伏町が11の病院・医院があった。ここで医師会とは何かを確認する。その地区に開業するからといって医師会に入らなければならないということはない。医療活動とは直接結びつかない。しかし、多くの医院が名を連ねているのは、市の健診事業や予防接種事業が医師会に委託されるので、その仕事を斡旋されることが大きい。この結果、地域住民に顔が知れたりして、後日受診する患者が増えることにつながる。逆に負担が生じることは、入会金と会費を払わなければならないことと、当直医を安い日当で行わなければならないこと(月1回くらいが相場のようだ)である。メリットと言えるかどうかは不確かであるが、医師会と税務署所長につながりがあり、医師会会員には税務監査が来ないというのがある。都市伝説に近い気はする。宗教法人にも毎年のように税務監査が入るご時世である。昔話と思った方が良いだろう。なお、医師会の会員になるのは、病院、診療所の開設者及び勤務医であり、前者を正会員(A会員)、後者を準会員(B会員)と呼び、入会金・会費に差がある。入会金は地域によって額に差があり、100万円から500万円とも言われている。東京都中央区の医師会が入会金・会費を公開していて、正会員で60万円/10万円、準会員で10万円/4.5万円となっている。これには格安とあるので、100万円からというのは相場のようだ。開業するときにこの金額を払うのは負担が大きいが、顔が売れるメリットは大きいから入会することになる。地方では会長に挨拶をしないと入れないなどという話もあるようである。医師会への入会金の税務処理が検索でヒットするから、開業時の困っている様子が窺える。どうでもいい話だが、金額が大きければ5年の分割償却するようだ。会費の違いは、医師会が会館などの施設を抱えている場合に高い傾向がある。
入会するメリットを考えると、診療科目が内科であれば加入すると良いようだ。確認すると今回の医師会で内科が診療科目にある病院・医院は21ある、逆に医師会に入会していない病院・医院は4でその内の一つは総合病院である。医師会に入っていない病院・医院の診療科目は、精神科や整形外科などの専門性の高いものになっている。

予防接種は保険適用のない自由診療になっている。インフルエンザワクチンの流通価格について、2005年に厚生労働省が公表している。それによると、成人1回分について、
  製薬メーカ製造原価     350円
  販売会社          600円
  薬品卸問屋         750円
  医療機関          1,000円
であるという。つまり、医者の手もとに届いたときの価格は1,000円で、もろもろの運営費用もあるだろうから、3,000円くらいの費用を受診者に請求するのが典型例となる。この3,000円を大人で4,450円以上に、2回の接種が必要な13歳未満の子どもでは初回3,700円以上の指示をして、カルテルを結んだことが今回の公取委の調査の対象である。予防接種より定期的に通院する患者を確保する方が病院経営では重要である。新規に開業した病院では患者が来る切っ掛けとする為に予防接種を安くしても良いと考えるだろう。カルテルで、このような行為をさせないというのは、医師会が既存病院の既得権を守りたいと思っているからであろう。
今回の医師会のカバーする人口が10万人として、予防接種率が40%とすると4万人が接種することになる。カルテルで1,000円高くしているとして20の病院(実際には21ある)で山分けすると、病院当たり200万円の増益になる。宣伝行為が制限されている医療機関では、この200万円を宣伝費と考えて、ディスカウント予防接種で集客したいという気持ちになる者あるだろう。もし、そういう競争は医療機関を疲弊させるだけだから許さないと医師会が考えたのなら、地域住民の為に3,000円を定価として公表すればよかろうにと思う。これもカルテルになるだろうが、公取委が世間相場並みであることを殊更に指摘することは憚られるだろうし、2,000円以下の不当廉売をどうするのかという意見でも出たらややこしくなる。4,500円は高いということがあるが、もしかしたら予防接種の売上の一部を医師会にキックバックする約束があってのことなら公取委が手を入れたことに合点がいく。これなら会長は刑事処分の可能性が高くなる。もっとも、この話は出ていないから、単純な価格維持であると想像される。
そんな想像をさせるのは、公取委が田舎の小さな医師会を相手に騒ぐのを不思議に思うからである。他にもカルテルの通報がウジャウジャあって、最も間抜けな方法でカルテルを結んでいた医師会を上げたのなら理解する。実際にはそう沢山もないだろうから、スケープゴートなのかもしれない。医療機関のカルテルを通報する者がそんなに多い気がしない。むしろ、公取委が医療機関の談合体質を問題視し、適正な競争原理を働かせようというのなら、その志は好しとする。そんなことをしたら、厚生労働省が黙っていないだろうし、日本医師会も自民党を通じて強烈な圧力を掛けることだろう。TPPで医療制度の開国が求められているなら、その前に冷たい風に当っておくのも悪くないと思う。医療関係がTPPに最も激しく反対しているのは、最も既得権が大きいのだろう。それ故、常日頃の政治献金の額も大きい筈である。そういうシマを決して荒らさせないのが、伝統的なこの国の保守政党のやり方であると信じる。

調べていたら出てきたので、ついでに記す。インフルエンザワクチンの製造会社は国内に四社で、若干の輸入品が流通しているようである。少し前のデータであるが、市場占有率を示す。
 化学及血清療法研究所(化血研) 41.3%
 北里第一三共ワクチン       31.8%
 デンカ生研                         12.7%
 阪大微生物病研究会              12.3%
 その他                  1.9%
ワクチンの製造元は製薬会社とは少し違う名前であった。新しいワクチン開発にこの四社に多額の補助金が出たことがあったと記憶する。ここも守られた世界のようである。


ワクチンコストを公表した役人は飛ばされたことだろう。

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