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2013年4月26日 (金)

理容師と美容師

髪が長くなったので切りに出かけた。これは普通の話だが、そこで聞いた話から考える。

理容室と美容室という区別がある。法律による定義は、
理容  頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること(理容師法第1条の2第2項)
美容  パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること(美容師法第2条第2項)
となっている。この業務を行うのが、理容師や美容師である。この資格は業務独占資格なので、無資格で行うことは違法行為となる。当然、資格がないのに看板を出すことも許されない。美容師又は理容師になるには、それぞれの免許の取得が必要であり、そのためには、大学に入学できる者(高卒者)が厚生労働大臣が指定するそれぞれの養成施設に2年以上通い、それぞれの国家試験に合格する必要がある。試験は財団法人理容師美容師試験研修センターが行い、各都道府県の受験会場や指定の学校で年2回実施されている。1998年の法律の改正でそれまで中学卒業で受験可能であったものが変更された。しかし、不思議な規定になっていて、当分の間、中学卒業資格でも指定学校が許可すれば良いことになっている。それなら中学卒業で良いだろうと思うのだが、いろいろ事情があるのだろう。数少ない中学卒業で取得可能な資格であったのだが、実質的に現在でも生きている。法律改定によって、2000年から新規の試験が開始されている。
試験の話に入る前に、全国にある理美容室と理美容師の人数を厚生労働省の資料から引用する。数字は2011年のものである。

■ 全国の理美容室数・理美師数 厚生労働省 2011年
         室数      人数    人/室
  美容師    223,286    457,116   2.04
  理容師  130,755    237,602   1.81

美容は理容の二倍くらいある。男性が理容室、女性が美容室に必ず行くとして、日本の人口を12,000万人とすると、美容室は270人に1つ、理容室は460人に1つとなる。年に6回通うとして、1回5,000円とすると、美容室の平均年間売上は計算上810万円、理容室は同じく1,380万円となる。
理容、美容を合わせた市場規模は2.3兆円といわれ、1軒当たりの年間売上高は657万円となる。二つを分けて考えると、美容市場は1.6兆円で、理容市場は0.7兆円とされている。よって、美容店の売上高は727万円、理容店は538万円と差がある。男性が美容室に行くのは普通にある一方で、理容室に女性が良く割合が低い(ほとんどないと考えて良いだろう)とすれば市場規模については理解できる。店舗当たりの平均売上に差があるのは、価格に違いがあるということなのだろうが、ここについてはまったく想像が付かない。平均売上の金額を見るに、ひとりで商売をしていて半分が人件費に充てられるとしてもそれほど高い年収ではない。業務独占資格といっても、儲かる仕事もそうでない仕事もあるのは、当然のことではあるが、不思議な気も同時にするのである。少なくとも国家資格取得後に開業しようとは思わない数字である。親がやっているから事業を継ぐ場合は開店資金が必要ないから良いだろうが、そうでないと難しい。借金しようとしても審査が通らないと大きなお世話ながら思ってしまう。かといって、大きな店に勤めるとしても待遇は良くないだろう。開店資金を貯めるには長い時間が掛かりそうである。
中学卒業で通学可能であるとすると、それから二年間通学するとしてと考えようとして気が付いた。インターンと言う制度があった筈である。調べてみると、法律の改正前は全日制の学校なら1年(定時制2年)で卒業できたが、その後1年以上の店での実務経験がないと受験できなかった。この期間をインターンと呼ぶ。法律の改正でインターン制度が無くなったが、学校での卒業までの期間が1年延長されたのであった。改正以前を調べていたら、美容師の試験に髪をカットする項目が試験になかったようだ。改定後はカットが加わっている。髪を切らないのは変である。現実に合わせた対応をしたということであろう。
話は戻って、学校の授業で学習したことを国家試験で確認して、営業してよいということであるが、国家試験の合格者がどうなっているかを確認した。なお、この試験は財団法人理容師美容師試験研修センターが行う。法律改正後の2000年以降で、年2回の試験の合計で受験者数・合格者数・合格率を示す。

■ 理容師国家試験
年    受験者数 合格者数 合格率
2000   6,260   4,315   69%
2001   5,461   3,583   66%
2002   5,547   3,345   60%
2003   5,074   3,340   66%
2004   4,671   2,958   63%
2005   4,683   2,730   58%
2006   4,293   2,589   60%
2007   4,009   2,523   63%
2008   3,243   1,978   61%
2009   2,843   1,878   66%
2010   2,477   1,463   59%
2011   2,360   1,523   65%
2012   2,230   1,537   69%

■ 美容師国家試験
年   受験者数  合格者数 合格率
2000  41,770   26,248   63%
2001  34,646   26,126   75%
2002  40,061   27,565   69%
2003  40,605   28,737   71%
2004  44,038   30,891   70%
2005  46,367   31,238   67%
2006  39,649   28,278   71%
2007  37,990   27,118   71%
2008  33,691   24,251   72%
2009  32,005   23,224   73%
2010  27,408   19,224   70%
2011  25,882   18,539   72%
2012  23,826   18,077   76%

理容師は2000年の半分以下に、美容師でも七割程度に受験者数・合格者数は減少している。仮に20歳から60歳の人が美理容師をしている(60歳で定年)とすると、美容師は毎年11千人、理容師は6千人が定年を迎える。理容師は1,500人強の合格者であり、美容師は18,000人の合格者であるから、人口が減少フェーズに入り、髪を切る回数が増えることもないとすると、この合格者数で市場要求とバランスするのは、美容師は25年で定年にならなければならない。つまり45歳で定年になる。一方理容師は生涯現役でも毎年減少することになる。
美容師の仕事の範囲を安定化させ、尚且つ拡大することを計らなければ美容師業務に将来はない。厚生労働省が出した通達を拾ってみる。

●拡大する要素
・着付そのものは美容師の業務独占ではないが、着付業務にともなう化粧結髪は美容師の業務。
・まつ毛エクステンションについては美容師の業務範囲。
・美顔施術については,当該施術が容姿を整え,又は美しくするために化粧品又は医薬部外品を用いる等業を行うに当たって公衆衛生上一定の知識を必要とするような場合には,理容師法又は美容師法の対象となる。

● 制限される項目
・まつ毛パーマによる被害が懸念されるため、その使用を禁止する。(薬事法)
・理容師は男性客に対し、仕上げを目的とする範囲でのパーマの施術を認める一方、美容師が行う男性カットはパーマに付随するカットを認めた。

美容室は理容室の業務を取り込むことが拡大の方法であり、既存の業務であるまつ毛や着付けに関わる仕事の独占化を強化するのが安定化に必要となる。後者は競争の激しい仕事であるから簡単ではないだろう。前者は実際的な話でこちらに乗り出すよりない。
男性が美容室に行った場合に理容室と差がもっともあるのは、髭剃りであるといわれる。美容師でも顔剃り(産毛の処理)は問題ないとするのが今日の状況であるそうだが、髭剃りとなると問題があるだろう。髭剃りを期待しない向きには問題はないから、若い男性を取り込むのが有効であろう。なお、理容師に聞いたところ、顔剃りは理容師の資格を取ってもすぐにできる仕事ではなく、練習を重ねて三年程度経たないとお客の顔を剃るのは難しいと言う。肌や髭の特性、お客の動きに合わせた動作など慣れないと出来ない仕事が多い項目のようである。髪を切るよりケガが発生するリスクが高いから、慣れない美容師が気軽にやる仕事ではないだろう。美容室で産毛処理に電気シャーバーを使う例があるようだが、衛生管理上の問題をどう対処するのだろうか。

1000円カットの店があるが、ここで働いているのはほぼ美容師と思って良いようである。店のメニューに髭剃りのような理容室の内容が書かれていたら理容師が登録されているだろうが、カットだけなら今日では問題ないようだ。1998年の法律改正は、このような隙間産業を生んだと言える。1000円カットの店と通常の店のどっちが上手かの議論は意味がなく、上手な人は都合によりどちらでも働く可能性があり、下手な人もまた同じであるというのが答である。

地域の組合について聞いたら、昔の様に価格を決めることもないから、メリットはないということだった。公取委も小さな団体を叩くのに精を出さないで、大きな会社の取り締まりに力を入れて貰いたいものである。談合をなくせばすべて安く高品質になると信じる原理主義は捨てた方が良い。より良い製品・サービスを提供するのに必要なら談合すれば良い。必要以上の競争原理の導入は業界を疲労させる。その結果がサービスの低下であるなら、談合の方が良かったとなる。役所の目指すところは談合の無い社会ではなく、談合するより真面目に仕事に取り組んだ方が良いと思うような社会秩序の構築を目指すことだろう。田舎の理容店がカルテルで1,000円高くても、親から子の代まで営業が続けば地域の利便性は維持される。1,000円安くなっても営業が継続困難と店仕舞いするとバスで1時間要する店に行かなければならない。こんな場合でも談合は悪か。そんな規則は作れないというのはもっともな話だが、それでは知恵を使っていない。難しい問題を解決するのに使うのが知恵である。


床屋というのは放送禁止用語のようだ。髪結いの女房は歴史上の表現だから許されるのだろうか。

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