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2013年4月25日 (木)

ユニクロ、賃金体系を世界統一

カジュアル衣料ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)は、全世界で働く役員と幹部候補の正社員について、賃金体系を統一する制度を導入する。新興国採用の人材にも先進国並みの待遇を約束して優秀な人材を確保し、海外での事業展開を拡大する。

ユニクロ(ブランド名で以下統一する)の経営と合わせて、賃金制度の狙いを考えてみる。

ユニクロには19段階の階層がある賃金制度で運営されている。その上位の階層の7段階までについて今年統一賃金制度を導入している。役職としては、執行役員や上級部長であるという。(対象者:50人) これを部長や店長に相当する8から14段階まで拡大する。(対象者:1,000人) ユニクロ事業が対象で、13の国と地域の海外採用者が対象となる。(対象者:300人)
この報道を読んで、19段階もある賃金制度であれば上がったり下がったりすることになり、管理が大変だろうなと思った。しかし、上位の7階層の最も下が上級部長であるから、本社の偉い人が該当するクラスのようだ。新しくなった店長が14だとすると、店で働く正社員の賃金は5段階に分離できる。店長は管理職扱いになっているだろうから、その一つ下の15は副店長(こんな呼称があるかは知らない)で、店長予備軍となる。つまり、店に配属された正社員には3段階のどれかになるということである。大変だと思ったのは少数の上層部の賃金決めだけで、実務階層には影響がない。経営階層に近い職種の少数の社員に対して賃金決めの方式が複雑であるだけで、一般の店舗で働く数の多い社員にはあまり関係がない。これだと公表する必要も、報道する要素も乏しい気がするが、グローバル化が関係しているからニュースになるということのようだ。それなら、ユニクロのグローバル化の状況を確認するよりない。
ユニクロの決算資料から1992年以降の売上と利益、店舗数をまとめた。なお、ユニクロの決算は8月である。金額の単位は億円。

■ ユニクロの連結決算 (単位:億円)
     売上高 営業利益 経常利益 当期利益 店舗数
1992年  143    9      9       4       62
1993年  250    22     21       9       90
1994年  333    33     27       13     118
1995年  487    42     45       21     176
1996年  600    44     46       23     229
1997年  750    53     55       27     276
1998年  831    60     63       29     336
1999年 1,111   143    142      68      368
2000年 2,290   606    605     345     433
2001年 4,186  1,021   1,032     592     519
2002年 3,442   504    511     279     585
2003年 3,098   413    416     209     622
2004年 3,400   640    642     314     655
2005年 3,840   567    586     339    1,232
2006年 4,488   704    731     404    1,632
2007年 5,252   650    646     318    1,828
2008年 5,865   875    857     435    1,958
2009年 6,850  1,086   1,013     495    2,258
2010年 8,148  1,324   1,238     617    2,203
2011年 8,203  1,164   1,071     544    2,088
2012年 9,287  1,265   1,252     717    2,222
(店舗数にはフランチャイズ店舗を含む)

2001年が高いが、全体としては売上も利益も伸ばしている会社であると言える。(2002年から在庫の拡大が経営に影響したという) フリースで売上を伸ばした時代があり、近年は機能性衣料の販売によって差別化を実現して売上を伸ばしているようである。グローバル企業というので、国内の売上と売上に占める割合を下に示す。

■ ユニクロの地域売上 (単位:億円)
     売上   国内  国内割合
2007  5,252  4,717   90%
2008  5,865  5,149   88%
2009  6,850  6,063   89%
2010  8,148  6,810   84%
2011  8,203  6,001   73%
2012  9,287  6,201   67%

2007年以前は、海外売上が10%に満たないのでセグメント資料は公表されていなかった。グローバル化しているといっても、海外売上は2012年で1/3に届いていない。ただし、製造は東南アジア中心に行っているからその意味ではグローバル化していると言える。しかし、今回の賃金制度は海外との統一というのが目玉になっている。営業利益がどうなっているかを調べた結果が下の通りである。

■ ユニクロの地域別営業利益  (単位:億円)
      全体  日本(割合)  その他
2007   650   594 (91%)      55
2008   875   820 (94%)     55
2009  1,086  1,085 (100%)      2
2010  1,324  1,280 (97%)      44
2011  1,164  1,062 (91%)     101
2012  1,265  1,023 (81%)     241

2012年に海外の営業利益が増加したものの、それ以前はそれほど大きくない。
以上の結果をまとめると、ユニクロの賃金制度変更の理由は、日本市場が売上が増える見込みが乏しいので、販売の重点を海外に移して行く計画がある。そのとき、海外との人材交流があったときに賃金格差があると業務支障が生じる恐れがあるから事前に対策したというものである。このまとめは、ユニクロに好意的なものとなっている。逆に穿った見方をするなら、国内の店舗業務についてブラック企業のイメージが付いてしまい、売上に影響が出るまでになっている。この状況を放置すると深刻な状況になる。そこで、低賃金に大義名分を付けて正当性を主張し、ブラックなイメージを薄めたい。こっちの方が真実に近い気がする。ここ数年の国内売上が鈍っていることへの対策として、店舗のスクラップ&ビルドを行っているようである。効率の悪い店舗は閉じて、大規模または集客力の見込める店舗を開発する作業である。しかし、それが売上に結び付いているとは言い難い。機能性衣料が各社で販売されていることも影響しているが、ファッション性という市場にブラック企業のレッテルを貼られると商売に響く。ファッション業界がブラック的な要素がなかったとは言わないが、大規模に販売している会社でそれをするのは事情が違う。しかし、今回の発表では効果は期待できないだろう。安いことを正当化しても働く社員は幸せになれないからである。むしろ、多様な労働形態の拡大をアピールするとか、障害者雇用(高いことで知られる)について雑誌に記事を書かせるとかした方がイメージ改善には良い。

実際問題としては、上位の階層の賃金に段階が多すぎる。ユニクロ社長は、1億円か100万円かになり中間層はなくなると主張しているが、執行役員から上級部長までに賃金階層は3段階もあれば十分である。この階層こそ成功報酬型の仕事であるべきだから、実績に連動する賞与なりを支給すれば良い。基本給は単純に月額100万円とすれば良い。上層部が身分保障された高賃金で、最下層が安い固定給で長労働時間だと感じる社員が多ければブラック企業の噂は広まる。執行役員の数も多すぎるように見えるし、整理が必要なのは上の階層のように思える。そこに触れていないことが、安い賃金のイメージ戦略に見えてしまうところなのである。


カンダタだったすべてが悪かった訳ではない。まして、商売をしている企業ならなおさらである。
(カンダタは芥川龍之介の蜘蛛の糸の主人公)

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