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2013年4月 3日 (水)

肉牛BSE検査 7月にも緩和の方針

牛海綿状脳症 (BSE) 対策の見直しを議論していた内閣府の食品安全委員会専門調査会(座長・酒井健夫日本大教授) は4月3日、食肉処理場で実施されているBSE検査の対象牛の月齢を48カ月超に引き上げても人への健康影響は無視できるとして、問題ないとの見解で合意。今後、一般からの意見公募を経て食安委が厚生労働省に答申。厚労省は検査緩和に向け関連省令の改正作業を進める。 (共同通信)


BSE検査の経緯について考えてみる。

BSEについて月齢20カ月以内では感染しないと書かれている記事が多い。これがBSEの検査対象を決定する区分になっている。しかし、これには異論もあっる。専門調査会の委員であり、BSE研究の権威である山内一也東京大学名誉教授は(社)日本獣医学会のサイトで、「人獣共通感染症」という連続講座を掲載し、BSE問題についても様々な発言を行っている。その中の「BSE対策をめぐる最近の議論と変異型CJDキャリアーの問題」(第161回)で、山内氏はこう述べている。

「英国での成績では24カ月齢以下での発症例は0.006%以下(約177,500頭中10頭)、30カ月齢以下では0.05%(81頭)である。そのうちもっとも若いBSE例は20カ月齢である。この例について、European Commissionの報告(3)では次のような議論を行っている。英国での感染実験では接種後32ヶ月目で脳に感染性が見いだされ、35ヶ月目に発症が見られている。そこで発症3ヶ月前にはBSE検査陽性になると仮定して、このウシの場合17カ月目にはBSE検査陽性になると推定される」

すなわち、3カ月間で感染から発症に至る仮説が正しいとすれば、17カ月齢の牛が感染していたことになる。
    ● 出所: アメリカ牛肉輸入再開、本当に安全なのか
    http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/report/40/index.html

当然、このような意見もあると思う。危険因子を拡大解釈すれば、食用に適するものが無くなってしまうだろうから、異常プリオンタンパクが存在する特定危険部位をすべてあらゆる月齢の牛から取り除くこと (正しい作業でが必須要件だ) と、厳密なトレーサビリティの確保することで運用しなければならない状況はある。生産者におもねた訳ではなく、現実的な選択としてこうなる。
そうはいっても問題は転がっているもので、米国で2005年8月24日に開催され第29回食品安全委員会プリオン専門調査会では、配布された資料によると、米農務省が発表したデータで2004年1月から2005年5月にかけて、特定危険部位の除去手続き違反が1036件あったという。約束を守らない者がいるのは世の常だ。守らない者が儲けてしまう構造を作らないようにするのが知恵であるのだが、守るか守らないかを知るには情報が必要である。情報の公開は欠かせない。横道にそれた。戻そう。
月齢を区切ることを行った際に、食肉用の牛にどの位の月齢が流通しているのかを公表してこなかったことに大きな問題がある。政府と報道機関がであるが、実のところ良く知らなかったのではないかと疑っている。もちろん、意図的に隠した一部の役人もいることだろうというのは想像される。日本国内で食肉用に流通している月齢20カ月以下の牛は13%程度と言われる。つまり、20カ月に線を引けば全数検査になる。31カ月以上は微妙で、肉牛を太らせるタイミングに重なるので超えることが多い。特にブランド牛はほとんど超えると見込んで良いだろう。今度の48カ月となると逆にほぼ無いと思って良い。食肉用に用いられる牛には肉牛の他に、乳牛の年数が過ぎて生産性が下がった牛 (乳のでが悪くなったものなど) がある。48カ月超は食用として品質が落ちるから安い。今回の見直しで負担がここだけ掛るというなら、なおのこと安くなるだろう。加えると、乳牛用に多く用いられるホルスタインは食肉用としては質が落ちるという。年数の経過したホルスタインでは加工用となるだろう。つまり、全数検査から、全数無検査に移行することになる。
適切な検査に替るものとして、危険部位の除去、原因となる肉骨粉の不使用の徹底である程度、というよりほとんど危険は回避できるだろう。検査で心情的な安心は得られるから、心情的な部分を経済的な合理性に解を求めればよかろうと思う。

少し前の話題に移る。 2011年12月16日の農業協同組合新聞より。
2007年に米国とカナダは日本政府に対して輸入条件見直し協議の要請をしてきており、野田首相は日米首脳会談で輸入条件の見直しを検討すると米国に表明した。こうしたことから12月15日の自民党畜酪小委員会では「動機が不純。外圧に負けてやっていると国民は不信感を持っている。30カ月齢以下の牛肉輸入へ緩和するとの話が先行し、食品安全委員会も不信が持たれる」 (野村哲郎参議院議員) といった批判が相次ぎ、「米国の政治圧力に屈して見直しを行うことには断固反対する」との決議を行った。
わが国では21カ月齢と23カ月齢での発生が確認されている。これを理由にBSE検査対象を20か月齢超としてきた。30カ月齢超に見直すならこの二例についてしっかり納得のいく評価をしなければならない。JAグループもTPP参加の「入場料」として政治的圧力で見直しを行うことには断固反対している。
    http://www.jacom.or.jp/news/2011/12/news111216-15691.php

民主党政権の時代であり、当然、自民党はこの当時野党である。外圧に負けたり、TPPの入場料扱いされたりしていた国会議員が、ほどほど文句を言うポーズを取りつつ政権の支持率の高さに流されて、意見を変更するということなのだろうか。定見を持たない国会議員には困ったことだが、そもそもそんなものは持ち合わせてないと言われればそれまでの話ではある。どうすれば金になるかを考えて決めるのは民間がやる。民間には馴染まない仕事は政治以外に求めようがない。食の安全を民間にやらせれば、貧乏人は危険な物を食べろとなる。これを政治信条として支持するならそう表明すれば良い。選挙の参考にする。その程度の権利は主張して良いだろう。
時流に乗ることばかりに熱心な政治家も困るが、何でも不安だと煽る団体にも困ったものである。せめて適切な情報開示に協力する報道であって貰いたいものだと期待する。


ここまで牛肉の安全に神経を尖らせるなら、放射性物質も引続き気を遣ったらどうだろうか。

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