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2013年4月19日 (金)

TPP交渉:ニュージーランド

前回に続いてニュージーランドを考える。

最低賃金は、時給で13.75NZドルで全国共通(以前は13.5NZ$であった)である。為替レートとして、1NZドル=61.92円=0.7762米ドル(2012年5月平均、NZ準備銀行) を用いると約850円になる。2012年改定の東京都の最低賃金が850円であるからほぼ同じである。
一方で、ニュージーランドでの平均年収は250万~350万円程と言われる。2011年の日本のサラリーマン平均年収が400万円であるからやや少ないことになる。国で比較した基本給を確認した。日本貿易振興機構(ジェトロ)からの引用である。製造業の作業者、エンジニア、マネージャーでまとめた。結果を下に示す。

■ 各国の製造業の職種別の基本給 (月額/単位:US$)
             作業員  エンジニア マネージャー
 オーストラリア    3,246   4,862     6,961
 ニュージーランド   2,314   3,734     5,080
 シンガポール      967   1,997     3,357
 香港          1,306   1,880     3,197
 韓国          1,220   1,675     2,437
 台湾           888   1,152     1,774
 マレーシア       257    745     1,485
 タイ           231    540     1,342
 パキスタン       136    489     1,085
 インド          188     450     1,034
 中国           217    448      837
 フィリピン        221    344      863
 インドネシア      151    291      783
 ベトナム        101    287      736
 スリランカ       102    280      627
 バングラデシュ     47    175      378
 ミャンマー        78     58      280
 横浜市        2,965   4,209     5,395

参考に載っていた横浜よりやや安いくらいがニュージーランドであった。日本と同等レベルと思って良さそうである。東南アジアのデトロイトと呼ばれるタイは日本の1/10、中国も作業者は同じだが、エンジニアやマネージャーではもっと安い。タイは最低賃金の引き上げがなされ、中国は元の引き上げがある可能性を考えると労賃のメリットは薄まってくることが予想される。何かと話題のミャンマーはこれらの国より安いから、ベトナムと並んで進出先の検討候補になるのが理解できる。
ニュージーランドに話を戻す。この国は、国土が狭く、人口も少ない。地下資源では金、銀が面積を考慮すれば多いが、他には鉄くらいで、石炭、原油、天然ガスも多くはない。ただし、人口が少ないので輸入量を減らす効果はあるようだ。
絶対的な人口が少なく、一次産業以外に競争力のある産業が乏しく、資源も限られているものの、賃金が高いとなると、外国の企業が現地生産をする理由を見いだせない。農業関係の機械はそれなりの市場規模があるだろうが、人口も資源も土地も大きなオーストラリアでの現地生産をすることより優先度を高めるほどではないように思える。試みに調べた2012年の各国の新車販売台数を示す。

■ 自動車販売台数2012年
 米国  14,492 千台
 日本    5,370 千台
 NZ          101 千台
 豪州     260 千台

米国に比べるのは適当でないかもしれないが、ニュージーランドやオーストラリアの市場規模が小さいことが分かる。地理的に距離が離れていることもあり、どの自動車メーカもこの市場を重視してこなかったのだろうと思われる。自動車に限らず他の製品においても似た状況があるものと推定される。参考の為に記すと、オーストラリアで自動車を生産しているのは、現地資本のホールデンとフォードとトヨタである。税制上の制約があったことから、他の会社も現地製造を行ったが撤退している。

TPPの話にやっとたどり着いた。
関税の撤廃によって商品が安く変えるという単純な解釈ではいけない。関税が設定されることで、その国の市場で商品が売れなくなる。その結果、国際市場で商品がダブつくことになるから、需給の関係によって決定される価格は下がるという理解が良いと思う。関税をなくして安くなっても、国に入る税金がなくなり、別のところから取らなければならなくなる。税金は富の再配分であるが、公平公正の実現が難しいのは消費税論議で見て取れる。輸入品に適切な関税を課しておくのは消費者に見え難いから、徴税者にとっては都合がよいこともあるだろう。前の国際市場の需給バランスに影響するということで、先の自動車の例で考えてみる。2012年の世界の自動車販売台数は81,100千台である。米国の市場は18%の割合を持つので、ここに関税を設定すると国際的な自動車の需給に影響が出て、価格を引き下げる効果が出ることが期待できる。しかし、ニュージーランドの市場規模は0.1%に過ぎない。これに他の大きな市場から距離があることを考え合わせれば、国際市場に与える影響は非常に小さい。国内で生産している会社がなければ、関税の効果は消費税の税率を調整することに留まってしまう。
ニュージーランドでは関税を撤廃して日本から自由に商品が入るようになっても、それほど脅威は感じられない。一方で、主要輸出品の農産物や木材は一億人の人口を抱える日本は大きな市場であり、ここに大量に買って貰えると嬉しい。この事情を考えれば例外を設けるのに否定的な発言をして、原理主義的な立場を取るのは当然のことである。国内の林業はすでに壊滅的になっているが、税率の引き下げでどのような影響があるかを調べるのは意味がありそうである。農産品の関税撤廃により、国内農業が壊滅的な影響を受けると農業団体は主張している。確かにそうなるだろうと思う。なくなったその先に何があるかまで考えないといけないだろう。食品の自給率が下がり、安全上問題であるまでではまだ掘り下げが不足している。もっと考えてみると、TPP交渉より適切な交渉方法が見えてくるかもしれない。そのヒントが林業の過去の経緯にあるのではないかと想像する。ただし、木材に対する多少の専門知識が必要だろうから、私の手におえないことは容易に想像が付く。


遺伝子組み換え食品が国を滅ぼすという石原の主張は右翼として正しい。ただし、街宣車に乗って叫んでいるようにしか聞こえないのが残念である。

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