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2013年4月 1日 (月)

日本・モンゴル共同声明

安倍晋三首相はモンゴルでの一連の日程を終え、31日夕、政府専用機で羽田空港に帰国した。

大相撲以外に日本で話題になることの少ないモンゴルについて考えてみる。

外務省発表の資料をまず確認する。
安倍晋三日本国内閣総理大臣と、日本国政府の招待により日本国を公式訪問中のナムバリーン・エンフバヤル・モンゴル国大統領は2月26日に会談し、次のとおり共同声明を発出した。
  「今後10年間の日本・モンゴル基本行動計画」
  双方は次の基本方針の下で「日本・モンゴル総合的パートナーシップ」を構築・強化する。
  1. 高いレベルの政治的関係を維持、相互理解及び相互信頼の強化を図る。
  2. 国際場裡における相互支援及び協力の強化を図る。
  3. 貿易・投資等の経済関係を拡充し、互恵関係の構築を目指す。
  4. 教育、文化及び人道面における協力の拡大を図る。

モンゴルは中国とロシアに長い国境がある内陸国である。歴史的にこの両国と関係が深い。1992年にモンゴル国となる前はモンゴル人民共和国と称して、一党独裁の社会主義体制であった。ソビエトや東欧と社会主義体制の崩壊と連動している。中国との貿易が大きいが、中国に対する国民感情は微妙なところがあるという。一方で、ロシアとは友好的と言うが、モンゴルの地下資源を生かす相手はロシアは最適ではない。という程度の基礎知識を持って、上記の4項目をもう一度見てみる。
日本の中国との関係が悪化していることからすると、経済的な中国依存を低下させること、中国包囲網を構築することが意識されているだろう。最近、不穏な動きがある北朝鮮とモンゴルは国交があるから、北朝鮮の安定化 (適切な表現かどうか疑問だが) に連携して貰いたいと考えてはいるだろう。具体的には、経済面として、中国依存の高いレアアースやレアメタルの代替地を探す。更に加えて、原子力エネルギーの見通しが立たない状況を天然ガス一本で走るのは資源の高騰を招き、国内の電力が国際競争力を失い、結果として国内産業の衰退ないしは海外への移転がこれまで以上に進むことは避けたいと考える。よって、良質な石炭資源を持つモンゴルからの輸入を拡大したいという思惑はある。政治的側面では、中国の動きに反対する勢力の増加を目指し、北朝鮮との交渉を中国やロシア経由 (どちらも日本との関係で問題がある) 以外のルートを構築したい。ついては、モンゴルに人権意識を高めると日本の考えに近くなり、日本にとって好ましいものとなる。

そうなれば結構な話であるし、そうしなければならない事情も理解できる。政治的側面は置くとして、経済的な話を考える。モンゴルが内陸国であることから、資源の輸出には中国かロシアを経由しなければならない。チョイバルサンから鉄道を利用して、中国を抜けてロシアの港 (ボストーチヌイ港、ナホトカ港、ポシェット港のいずれかだろう) というのが一般的なルートになる。チョイバルサンはモンゴルの東に位置して、首都のウランバートルとは600km離れていて鉄道だは結ばれていないから、陸路となるが道路の整備が悪いという。レアメタルは東に多くあるようなので良いが、石炭となるとそうはいかない。モンゴルの石炭鉱山はウランバートル周辺とウムヌゴビ県 (名前の通りゴビ砂漠であるモンゴル南に位置する) に有力なものがある。ここだとチョイバルサンに運ぶのは効率が悪く、モンゴルの中央部を南北に走る鉄道を利用するのが合理的に見える。この鉄道は、中国にもロシアにも接続されている。中国では北京を経由して天津に向かうルート、ロシアではウラン・ウデに接続して、上にある港に向かうルートとなる。中国とは鉄道のゲージが異なり貨物輸送には最適ではない。(モンゴルの鉄道ゲージはソビエト仕様である) 中国との関係を回避したいという考えもあるのなら、ロシア経由を選択することとなる。この鉄道ルートは裏シベリア鉄道とも呼ばれるそうで、見事な風景が観賞できる一方で、かなりの不便を強いられるという。
モンゴルの鉄道のほとんどをウランバートル鉄道という。鉄道の設備は古くなっていることから、アメリカ政府の無償援助機関であるミレニアム挑戦公社による投資が決定されたが、直前になって中止された。内容は、2009年から2013年の間に、鉄道分野で1億8800万US$の援助を行うというもので、内容は線路の改修(ポイント・枕木の交換)、車両の購入(機関車30両・他車両150両)などであった。しかしウランバートル鉄道はモンゴル・ロシア政府の合弁会社であり、ロシア側がその援助を拒否して、替わりにロシア側から2億5000万ドルの援助を受けることになった。そして、またロシア政府の持っていたウランバートル鉄道の権利は、2008年ロシア国鉄に移譲されている。
石炭を移動させようとしても簡単ではない。実際にはロシアの港も石炭は手間が掛る割に安いので他の商品を動かしたいという思惑もある。日本を韓国にしても同じである。韓国とは1990年に国交が成立し、モンゴルの出稼ぎ国となり日本より多くの人が行き来している。そこで、鉄道の更新について韓国企業が受注すると言う話もある。多国が関係する事情が生じる貿易には複雑な思惑の絡み合いが生じるようである。


調べるたびに新しい疑問が生じる。

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