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2013年4月11日 (木)

三菱自動車:駆動用バッテリーの不具合に関する調査経過を報告

三菱自動車は2013年4月10日、3月下旬に発生したアウトランダーPHEVの駆動用バッテリーの不具合について、調査の途中経過を発表。異物の混入を検出する検査工程に原因の可能性があると述べた。

事故の内容と対応について整理して、考えてみる。

三菱自動車は、今回の問題を3月27日に発表している。バッテリーの溶損は1件、短絡は2件報告があり、同社は外部充電およびチャージモードによる利用を控えるよう呼、アウトランダー PHEVについては出荷を停止している。 この中間報告が行われた理由は、問題発生時の記者会見で1~2週間以内に報告をしたいとしていた為である。しかし、不具合につながる可能性のある事象は見つかったが、最終的な結論を出すに至らずに3月27日の発表から2週間が経過て中間報告となった。
今回の不具合は、電池セルの異常発熱によりバッテリーパックの一部が溶ける(溶損)というもので、2013年3月21日に神奈川県の登録納車前の車両で発生している。その後、溶損にはいたらなかったものの、電池セルのショート(短絡)による不具合が2件、車両搭載前の検査で電気自動車用の16kWh仕様のバッテリーパックが発煙・発火するトラブルが1件発生していた。
問題があるのはバッテリーパックと判断されている。該当する車種の生産を一時中止している。バッテリーパックのサプライヤーであるリチウムエナジージャパン、GSユアサと三菱自動車が協同で調査している。
リチウムエナジー ジャパンは、GSユアサ(51%)と、三菱商事(34%)、三菱自動車(15%)の三社が2007年12月に設立した大型リチウムイオン電池の開発・製造・販売会社である。(カッコ内は出資比率) 生産中止したモデルとバッテリー容量を示す。
 ■ アウトランダーPHEV  12kWh
 ■ i-MiEV          16kWh
 ■ ミニキャブMiEV     16kWh
i-MiEVとミニキャブMiEVには、10.5kWh仕様の小容量モデルがある。このバッテリーパックは東芝のSCiB (TM) セルを採用している。

今回の三社共同の調査の結果、昨年12月に追加されたスクリーニングと呼ぶ検査工程で、想定以上の衝撃がバッテリーセルに加えられた場合に、不具合が発生する可能性があることが判明した。この検査はバッテリー内への異物の混入を検出する為のもので、電池セルにさまざまな角度から振動を加えて、電池セル製造の不具合があれば、不純物がセル内部の正極に析出し、電圧の低下したセルを除外するというものである。ここで、作業員が検査機器にセルを設置する際に過度な衝撃を加えると、正極の部品に、不具合が生じたバッテリーセルで見られたような変形が生じるケースがあることが確認された。ただし、電池セルの短絡やバッテリーパックの溶損までは至らない為、この前述の検査工程の他に複合的な要因が重なった可能性があると考え引き続き調査を続けて、4月中には原因を究明したいとしている。アウトランダーPHEVは4,300台の登録があり、セル数で言うと、約37万個の電池セルが生産されている。今回はその中の3つのセルで問題(1つは溶損、2つは短絡)が発生した。

スクリーニングは昨年12月に追加されたとされるが、アウトランダーPHEVの発表が2012年12月26日で販売開始が2013年1月24日であるから、アウトランダー向け品の量産開始とほぼ同時期に検査方法の変更を実施している。三菱自動車は3月にアウトランダーPHEVの受注台数が2012年11月末の予約開始から3月末で、計画の2倍となる8,000台になる見込みだと発表している。三菱自動車でお客の要求に応えられない台数のモデルは存在しない状況であり、何としてでもこのチャンスを生かそうとしたという想像は外れていないだろう。参考の為に、三菱自動車の国内乗用車生産台数と、乗用車(登録車のみ)の国内販売台数の年間台数の推移を下に示す。

■ 三菱自動車の国内生産台数、販売台数(登録車)の推移
        国内生産  国内販売
         乗用車    登録車
 2006年   758,478   65,502
 2007年   846,083   78,286
 2008年   853,943   61,277
 2009年   426,530   53,173
 2010年   660,104   65,454
 2011年   603,594   52,593
 2012年   515,168   58,591

国内の生産・販売ともにじり貧状態といえる。この様な中で、アウトランダーPHEVの絶対数としてはそう大きくはないものの、販売店に客が来てくれる状態をつくれる数少ないモデルであることは間違いない。なお、2006年以降は経営上の大きな変化はなく、現在の体制と同じと考えて良い。リコール隠しの問題や、大株主がダイムラー・クライスラーから三菱グループに代わったのはそれ以前の話である。

周囲の環境を考えるのはここまでとして、問題発生について想像してみる。想像であるので事実であるとは限らない。当方の勝手な憶測に過ぎないことを先に断わっておく。
スクリーニングで不具合品を排除するのは分かるが、人手によって振動を加えるということは、パックを揺らすというよりぶつけるに近い作業を行っていることだと思われる。リチウムイオンバッテリーが振動で不具合が発生するのは知られているから、検査して不良品を出すことになりかねない。しかも、検査することで不良品をつくってもその先には検査はない。つまり、不良品は流出する。車両の本格量産が始まる段階で部品検査に新たな方法を追加するというのは、この部品の流れが悪かったのが理由である。流れが悪いというのは、検査時間を要するとか、歩留まりが悪いとかである。製品に振動を加える手法を行ったのは、それまで長時間の検査を行っていたものを、短時間で済ませる為なのだと考えられる。本来であれば検査をなくすか、抜き取り検査に切り替えたいところだが、製品の信頼性も十分でない (数も歩留まりも足らない) 状況だし、実際に不良品が出ていた。ここに予約開始から受注が好調であるという情報が工場に入り、検査方法の見直しを行ったのだと想像する。
自動車用のバッテリーのレベルがこの程度であるというのは、自動車会社の品質管理手法からすると随分低いレベルで採用できない部品になりかねない。自動車の台数は会社単位で年間百万台という数量レベルであり、半導体や電子部品に比べると少ない。経済産業省機械統計によると、二次電池販売数量長期推移のリチウムイオン電池は、2012年に948百万個 (過去最高は2010年の1,317百万個) とある。スマートフォンやデジカメに使われる小型のものがほとんどである。自動車用には温度変化への対応や製品寿命の確保を考慮した専用仕様になっているだろう。それ故に、リチウムイオン電池の大量生産とはまだ違うステージにあると考えた方がよさそうである。自動車会社の品質管理とは月に1万個程度の同じ製品を扱うもので、月に100万個単位で動くものには対応しきれていないだろう。100万個流動させたいときに、1万個の手法では滞るばかりである。100万単位の流動は電子部品の限られた製品、それも多くは標準化されているものであろう。自動車会社が得意な領域ではないようだ。

三菱自動車が東芝のバッテリーを一部モデルで採用したのは、GSユアサに対する不満があり、リスク分散を考えたと想像する。まだ始まったばかりの技術で、重要部品を二社購買するのはセンスが悪い。本来、完成度と生産性の向上を計る時期である。GSユアサは例のボーイング787で話題になっている会社である。飛行機の件は、GSユアサではなくシステムないしはボーイング社が責任を負うべきところだと思うが、三菱自動車の件はGSユアサによるものだと考える。調査を進めることで、品質の向上が達成されることを祈るばかりである。

思いのほか長くなったので、また改めて書くこととする。


長いのは余分が多いからだが、余分を取ったら何も残らないことが悩ましい。

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コメント

メーカーさんのテスト期間が短いせいでしょ。工業製品はトラブルを乗り越えて一人前になっていきます。米国製航空機が電池トラブルで運航停止になったのと同じですわ。1人で16万km位乗れば次第に弱点が見えてきます。小生競技兼用でその距離使いましたからf(^^;テストしてる人間のセンサーが鈍いんでは無意味ですけどね。死にたく無いで、小さなトラブルも日常的に自分で整備しつつ使えんでは試験してる意味が無い。駆動用電池の異常も使用者が気付けません?充電にいつもより長くかかるとか電池の消耗がやたら早くなったとか携帯の電池と同じですわ。

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