« 三菱自動車:駆動用バッテリーの不具合に関する調査経過を報告 | トップページ | 淡路地震「未知の活断層で発生」 »

2013年4月12日 (金)

インサイダー取引:容疑でイー・アクセス元役員秘書逮捕

携帯電話会社大手ソフトバンク(9984)が通信サービス会社イー・アクセス(9427)の買収を公表する直前に情報を入手してイ社の株式を購入したとして、東京地検特捜部は4月11日、イ社社員のS容疑者(27)を金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕した。逮捕容疑は2012年9月東証1部に上場していたイ社がソフトバンクの完全子会社になるとの情報を入手し、同10月1日に公表されるまでイ社の株式約690株を約1,000万円で買い付けたとしている。S容疑者は当時役員秘書であった。

インサイダー取引について考えてみる。

S容疑者は、調べに対して買収情報は知らなかったとして容疑を否認しているという。また購入した株は売却せず、その後株式交換によりソフトバンクの株を取得しているという。その結果、含み益は数千万円まで膨らんだという。
典型的なインサイダー取引の例である。状況を整理してみる。
 容疑者:    イー・アクセスの役員秘書
 株の購入者: 本人
 購入金額:   約1,000万円
 株の購入日: 情報公表日の一営業日前
 株の処理:   ソフトバンク株に交換 (売却はしていない模様)
一般社員ではなく、役員秘書であることを考慮すれば経営情報に触れる可能性が高く、自社や関係する会社の株を売買するのは控えるように指導されるのが普通のように思う。まだこんな会社があるのかというのが正直な感想である。若い企業は企業買収や増資といったことをする機会が伝統企業より多いだろう。世間の注目を集めることが最大の広告活動になると考えなければならないだろう。それらを考慮すれば一般投資家を嘲笑うインサイダー取引は 厳に慎まなければならない。李下で冠を正さずのレベルで求められる訳だから、自社株の取引は厳禁で良いだろうと思う。待遇がすれほど良くないのなら、財産形成の自由を制限される謂れはないというのももっともな話になる。会社の受けるダメージを考えれば持株会の奨励金を厚くするなど対策は考えられそうである。
購入が本人であるのも最近の例では珍しい。配偶者の名義を使うといった隠匿を計るのが普通である。この清々しい態度は後ろ暗いことは無いことを示しているのだろうか。購入日が営業日ベースで発表の前日というのも不思議である。そこで1,000万円を買うのが大胆というか、27歳の社員がこの金額を動かすのは大変だろうと心配してしまう。イー・アクセスと言う会社の年収は30歳で540万円という情報がウェブ上にあった。これが正しいか否かは別にして、自分の給与所得で1,000万円の投資は大変だろうと思う。以前より株式などの金融売買で財を成しているかもしれないから大きなお世話ではある。
素朴に考えると、株式を購入しただけで売っていないから罪には問われないと思っているのかもしれない。インサイダー情報で株式を売買することが問題で、利益が出たか否かを問わないのが法律の趣旨だから、これでは言い逃れはできない。利益を出そうとして、株式の売買をするのに相応しくない情報を元にして買ったのだから、これで犯罪は構成される。相応しくない情報にアクセスしていないと主張するにしても、役員秘書で役員の買収交渉に関わる情報、例えば打ち合わせの参加者や出張先などがあれば怪しいと思われて仕方ない。もちろんこれだけで犯罪になりはしないが、1,000万円を動かしていたことが日常的でないと思われればこれだけで状況証拠にはなる。日常的に億円の単位で動かしているなら、それは証拠になるから裁判では主張できるだろう。

株の潜在的な売買益を計算する。二社の合併により、イー・アクセスの普通株式1株は、ソフトバンク株の20.09株に交換されることが発表されている。購入したのが690株であったとすると、ソフトバンク株の13,863株に交換 (端数は切り上げ) されたことになる。4月11日の終値は4,765円であるから、昨日の時点での時価評価額は66,057,195円となる。ただし、この金額は最近の株価上昇の影響を受けているから、2月上旬の株価だとすると3,500円前後で、評価額は48,520,500円となる。株式交換は2013年の1月以降であるから、2月上旬につつがなく売れたのなら4カ月で3,800万円の利益を出したことになる。二十代の若者が短期に生み出したのなら立派な実績である。インサイダー取引でなかったことが示された暁にはファンドマネージャーとしてやっていけるだろう。
法律を確認する。金融取引法にあるインサイダー取引による刑事罰は、
  (1) 5年以下の懲役
  (2) 500万円以下の罰金
  (3) (1)と(2)の併料
が規定される。また、違反行為によって得た財産については、没収・追徴も規定されている。この没収・追徴の対象は、インサイダー取引によって得た利益ではなく、犯罪行為により得た財産そのものになる。今回の事例であれば、1,000万円を投資して株式を購入し、株価が4,852万円になった時点で株式を売却したとすれば、2,852万円ではなく売買金額である4,852万円全体が没収・追徴の対象となる。

イー・アクセスの株式の取引状況について確認した。発表のあった10月1日より前の株価は15,000円前後で、1日の平均出来高は3万株である。7-9月まで大きな変化はない。発表後に株価は急上昇して、出来高は発表月に3倍以上に、11月においても2倍以上の出来高になっている。

■ イー・アクセス株の取引状況
   終値の平均  出来高   営業日 1日平均出来高
 07月  15,019   709,739   21     33,797
 08月  14,307   463,968   23     20,173
 09月  14,654   604,927   19     31,838
 10月  39,555  2,163,702   22     98,350
 11月  55,524  1,297,276   21     61,775

発表のあった前後の株式の売買状況を営業日毎にまとめた結果を示す。

■ イー・アクセス株の発表日前後の取引状況
   日付    終値    出来高
 09月24日 14,990   23,027
 09月25日 15,040   22,571
 09月26日 15,270   39,305
 09月27日 15,160   29,106
 09月28日 15,070   23,010
 10月01日 19,000   48,906  [ 発表日 ]
 10月02日 23,000     7,547
 10月03日 28,000     2,395
 10月04日 33,000     1,475
 10月05日 47,000   14,885
 10月09日 49,350  568,228
 10月10日 47,700  139,616
 10月11日 46,600  138,137
 10月12日 39,600  202,086

発表のあった前の営業日の9月28日の出来高は特に大きくない。発表のあった時間は不明であるが、10月1日の取引終了後であろうと思う。10月1日の出来高が2倍近く大きくなっているのが気になる。報道によると9月28~29日とある。9月29日は土曜日なので、28日の時間外取引を行って、処理の都合で10月1日になっているのかもしれない。詳しくないので検討が付かない。取引単位は1株のようだが、たかだか5万株の買い手を調べるなど電子取引の時代であれば難しいことではない。まして、時間外取引で株式を買っていたら真っ先にマークされる。これで大丈夫と思う理由は見当たらない。
今回の容疑者が有罪か無罪かは分からないが、このような取り調べを受ければ会社に居辛くなる。無罪であって社内に残れたにしても良い思いは出来ないだろう。自社の株など市場で売買するものではない。売り切ってき逃げ切れるのなら、それも悪くないかもしれない。


楽して儲ける話は怪しいというのは真理のようだ。

« 三菱自動車:駆動用バッテリーの不具合に関する調査経過を報告 | トップページ | 淡路地震「未知の活断層で発生」 »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 三菱自動車:駆動用バッテリーの不具合に関する調査経過を報告 | トップページ | 淡路地震「未知の活断層で発生」 »

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ