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2013年3月15日 (金)

軽自動車とTPP

軽自動車を調べたついでに、TPP交渉との関係を考えていたのでそれを記す。


日本では自動車に対する関税を1978年に0にしていて、関税の上では最も自由な市場であると言える。例えば米国では2.5%、EUでは10%の関税が設定されている。EUになる前の欧州各国では日本車の総量規制があったが、EUになってなくなった。
しかし、この開かれた市場はそれほど自由ではなく、非関税障壁と指摘される規制がある。例えば、プロパンや天然ガスを燃料にした自動車を輸入しようとすると登録できないと考えて良い。自動車の構造基準に関する規制とは別に、燃料容器が高圧ガス保安法規制されることが影響している。
プロパンを使用するタクシーでは、車検と同時に容器検査を受ける。容器検査の間クルマを休ませるのは経済的でないから、燃料容器は毎年交換することになる。もちろん容器は検査後使用可能であるが、交換することに変わりはない。容器に対する規制は自動車関連の規制と別であるから、国際的な標準である必要を感じていない仕事として成立している。必要性を認識していない役所に何かを求めるのは、詮無い話になると決まっているから、輸入不可製品となる。見事な構成の非関税障壁である。ディーゼル車の排ガス規制も国際標準に比べ厳しい部分があるから、非関税障壁だと指摘される可能性はある。国民の健康を守る為に必要であるとする主張は、科学的な裏付けを規制の緩い国に対して求められるから説明は容易でない。ついでに言えば、遺伝子組み換え作物の表示義務を求めることも、非関税障壁になり得る。それは別にしてと政治家が主張しているが、例外を設ければ現状と同じになってしまうから、何もしないことに戻る。つまり交渉決裂である。条件付きで通るのが極限られた部分になると決まっていて、それさえ時間の経過で解除になると思わなければならない。そういうものだと思わずに交渉に参加する人の気がしれない。話を戻す。
自動車関税は途上国で高く設定される傾向がある。自国の産業を保護したい、または、自国での製造を促したい立場であるから当然ではある。近年、アジアのデトロイトと呼ばれるタイの自動車関税などの税金を示す。輸入時のクルマの価格が100万円の自動車をタイへ個人輸入する場合を想定する。輸入完了時の価格はクルマの種類によって下記のようになる。(タイの税金は良く変わるので正式なものは最新情報を確認のこと)

■ タイの関税
乗用車
  ~2,400cc           313.2 (輸入関税80%)
  2,400cc~3,000cc  350.8 (輸入関税80%)
  3,000cc以上         408.1 (輸入関税80%)
オフロード車            282.8 (輸入関税80%)
ピックアップ車         177.0 (輸入関税60%)

100万円のカムリは313万円(2Lとした)になり、ハイラックスは177万円で済むことになる。タイの年収は日本の1/10をイメージすれば良いから、余分に136万円払うのは容易なことではない。完成車の税金も同じように考えて良い。しかし、デトロイトであるには理由があって、自動車部品の輸入関税は0である。(無論、例外はある) ノックダウン生産をすれば関税が生じずに、安い労働力により消費国に輸出できるということになる。20年前は部品にも関税が掛り、車両の税率も高かったと記憶するから、税金の設定により産業を引き寄せることができるという成功事例になるだろう。
韓国は自動車関税を8%にしている。FTAで米国との関税がなくなるから自動車輸出に有利とことは運んだが、当然マイナスもある。農業品目のFTA実施による被害は限定的であると韓国政府は発表しているようだが、農業団体は甚大な被害があったと反発している。そんなものであろう。

日本の軽自動車制度が非関税障壁と指摘される可能性がある。排気量の小さい、燃費の良い小型車に税制上の優遇措置をするのは問題がないだろう。TPPで米国のGMが軽自動車が不当に扱われていると言ってきたなら、鈴木会長のように、「それなら造れば良い。日本の市場は歓迎する」と言えばよい。しかし、VWが同じことを言ってくると少し違う話になるだろう。環境基準にするなら燃費で計られるべきであり、車両寸法も今日の安全性能で規定されるべきだと主張することだろう。目的は、UP! を沢山売りたいのだから、軽自動車と1Lクラスの差を小さくするか、軽自動車の規定を見直せに至ることになる。小型車と日本の市場の両方に注目する会社が指摘することが問題で、米国メーカは前者が該当しないが、東欧に生産拠点を持つ欧州メーカは両方で該当する。日本の新車販売台数と、VWグループのVWとAudiの日本での販売台数を示す。参考の為に、海外メーカの輸入車台数(輸入数から日本メーカの輸入を除いた数)を示す。

     登録車   軽自動車  外国メーカ車  Audi   VW
2009  1,688,080  2,921,085   160,904   16,171  37,928
2010  1,726,315  3,229,716   182,082   16,854  46,707
2011  1,521,072  2,689,074   205,857   21,166  50,635
2012  1,979,347  3,390,274   241,563   24,163  56,191

軽自動車を含めた国内販売台数に対する輸入車の割合は近年増えたものの5%に届かないレベルである。VWとAudiの輸入車に占める割合は約1/3である。Audiは年々台数を伸ばしているが、VWは2001年に61,000台を超えたところまで届いていない。小型車の戦略車種になる UP! は東欧のスロバキア工場で最終組み立てをしている。排気量は1Lで、車両寸法は軽自動車より一回り大きいものとなっている。車重は1トンないので、軽自動車と同等レベルである。現在の車両価格は、150万円弱なので装備の充実した軽自動車と同等レベルである。東欧での生産部品の割合を増やしたモデルにすることと、量の拡大で価格競争力は上がると考えられる。これも税制上の扱いが軽自動車に近いことが必要だろう。都市部では軽自動車も車庫証明が必要だが、地方では不要である。そういったことも影響しよう。
安くなっても、VWの販売網を考えると急激に増やすのは難しいだろうが、伸ばす為にどうするかを考えることを仕事にしている人がいるのだから、ないと決めつけることはできない。軽自動車の販売店は、自動車修理をしている会社(家族経営規模が多い)に大きく依存している。個人的なつながりが重視されるから、登録車と違う部分があるという。こちらは店の都合だから非関税障壁と言われることはないが、こうした信頼関係を構築することを商いの基本にするのがこの国の商人のやり方だろう。他の国の事情は知らないのだが。そうはいっても税制は重要であるというのが、今回の結論である。


軽自動車の地域差を調べていたらまとまらなくなった。地域性は興味のあるテーマではある。

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