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2013年3月31日 (日)

TPP交渉:「聖域」守れなければ撤退も

林芳正農林水産相は3月31日午前のNHKの番組に出演して、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題に関して、「(国益を守れない場合は)席を立って帰ってくることを視野に入れればよい」と述べた。コメや砂糖などを「聖域」として関税撤廃の例外扱いとする目標を達成できない場合は、交渉からの撤退も検討すべきだとの考えを示した。 林農水相は「『最後はサインしなければいけない』ということはない」とも語り、日本が得る利益が小さければ、合意に加わらない選択肢もあると指摘した。

TPPの話を考える。

聖域と称しているのは、主に農産物である。これと保険制度が国民生活に直結すると話題になる。農産物から検討することにする。
米はいろいろなところで話題になるので、砂糖を扱ってみよう。砂糖の国内
砂糖は加工したもので、精製度合で呼び方が変わるが、同じグレードであれば産地がどこの国であっても品質差は同等に扱えるものである。その意味では塩に近いとも言える。よって、多くの加工食品に使われる砂糖は、輸入品であっても国産であっても違いは価格以外に違いを見いだせないことになる。これが野菜などの直接消費する農産物と大きく異なる。農林水産省が発表する食料自給率の数字を見てみる。

■ 食料自給率 (農林水産省資料より抜粋)
 [ % ]    1965年  1985年  2005年 2010年
砂糖類     31     33     34     26
米        95   107     95     97
小麦       28     14     14      9
大豆       11     5       5      6

砂糖の自給率は1/4くらいである。以前はもう少し高くて1/3だったが、ここまで低下している。比較の為に記した米はほぼ100%、小麦は10%以下、大豆は5%程度となっている。パンも醤油も味噌も輸入に頼っている。食料自給率が半分以下の国だから当然である。しかし、小麦なら、パンに最適とか、うどんに向くという種類が存在するが、砂糖にはそれがない。品質差を表に出せない製品では、最も大きな性能差が価格となる。
国内で砂糖のもとになる作物を栽培しているのは、テンサイとサトウキビである。テンサイが国内の砂糖の80%を占め、サトウキビが残りと言われる。世界でみると、サトウキビが2/3を占める。テンサイは砂糖大根とも呼ばれるが、大根の仲間ではなくホウレンソウの仲間である。種がアブラナ科の形ではなく、花も所謂、菜の花ではなく、ホウレンソウに似ている。テンサイは北海道以外では見ることはない。テンサイが砂糖用の他は、家畜の飼料用であるからで、砂糖用とするなら大規模でないといけないが、高緯度が適地であるので北海道に多いということになる。逆にサトウキビは熱帯や亜熱帯の地域を適地とするので、日本では奄美や沖縄が多くなる。
砂糖が自由貿易になることで奄美のサトウキビ農家が壊滅するという政治家の発言を聞いた。まあ、その通りだろう。しかし、北海道においてもテンサイは、ジャガイモや豆や麦を輪作する為に組み込まれている。テンサイが儲からないからといって止めてしまえば、小麦やジャガイモを作るのに影響することになれば、影響はテンサイに留まらない。
世界の砂糖の輸出国の状態を考えてみる。輸出量はUSDA「World Markets and Trade」(In selected countries)の国別の生産量から消費量を引いた数字を用いた。分蜜糖ベースとなっている。量の多い国から下に示す。参考の為に日本の消費量を記した。

■ 世界の砂糖輸出量 (国別生産量から国別消費量を引いて算出)
[単位:千トン]   2007/08    2008/09   2009/10   2010/11   2011/12
ブラジル      20,200     20,200    24,600    26,150     27,050
タイ          5,820      5,200     4,710     6,660       6,900
オーストラリア   3,689      3,568     3,450     2,550       2,750
インド        5,130      -8,250     -2,863    1,150      1,800
★日本       2,350      2,375      2,230    2,242      2,240

日本の量を現時点でカバー出来る国は、ブラジル、タイ、オーストラリアになる。しかし、ことは簡単ではなく、ブラジルは燃料用にエタノール利用することでサトウキビはエタノール用になっている。また、タイは作業負担が大きいサトウキビを嫌い、高価格で取引される米に転作する農家が増えているという。日本の米の関税率が下がれば日本を目指した米作がり増え、サトウキビも米作にシフトするきっかけになる可能性もあるだろう。オーストラリアは既に日本の輸入の1/4近くを占めている。オーストラリアに依存する食品が多いことに注意しなければならない。オーストラリアの国ではなく、天候などの問題である。念の為。

砂糖に付いてだけ考えたが、いろいろと将来的なリスクを考えなければならないことが分かる。そうはいっても輸出量を増やしたい製品も多くあり、悩ましい所ではある。

東シナ海での不穏な状況に対して、防衛力の強化を声高に言う政治家がいる。この海域で戦争状態になれば輸入に大きな影響が出る。海上輸送はもちろん、航空輸送も大きな制限が加わることだろう。防衛力強化を掲げるなら、TPPなど無制限に実施したら国防に関わるのは必然である。TPP反対を唱えるのが政治信条として必然だと思うのだが、そうでもないようである。TPPに制限を掛ければ良いと言う人がいるが、それでは経済協定にならない。こまごまとした制限を一切取っ払うから大きな経済効果があるのであって、各国の利害に合わせて制限を掛ければ協定がないのと同じになる。自由競争で何とかするのが基本であるが、不足した場合には高くても買えない状態が容易に生じる。感覚的には必需品の価格が二倍以上に上がれば手に入らないと思って良いようである。三倍出せば買えると、需給バランスによる価格決定がこの段階であるなどと努々思ってはならない。需要がらにも、供給側にも取引しないという選択肢が何時でも容易されている。高過ぎれば売らない (実態としては売れない) ことが発生する。結局ナショナリズムはある程度の孤立化とセットになっているから、経済協定とは馴染み難いと考えてよいようだ。武闘派の政治家は経済問題にどう答えるのだろうか。


野菜くらいなら自家栽培できても、牛や豚を食肉加工するのは個人では無理だろう。

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